生意気男子へ贈る美味しいチョコ
【作者より】
※ 拙作は結城 からくさま主催の「殺戮企画」に参加させていただいた作品です。
また、「婚約破棄」ネタははじめて書いたので、これが正しいかどうかは分からないところで、グダグダ感があるかもしれませんが、ご覧にいただけると幸いです。
本日は2月13日――。
多くの女性達が大型量販店の一角に置いてあるバレンタインデーに向けて準備されている売り場に集っている。
その売場には事前に作られている義理チョコ、手作りチョコを作る用として板チョコやアザラン、カラーチョコスプレー、ラッピングセットなどが準備されている。
そこに1人の高校生くらいの少女も紛れていた。
「さて、明日はバレンタインデーですので、手作りチョコくらいは作らなければなりませんわね……」
少女の名はリリアーヌ。
彼女は学校の制服らしきものを着用している。
長い金髪を下ろし、カチューシャをつけており、碧眼を持つ年齢の割には童顔だ。
「いつもはお食事はもちろんのこと、おやつも調理人に作っていただいていますので、何かお礼に作りたいですわ。あとは……許婚にも」
リリアーヌは貴族育ちであり、彼女の住む屋敷にはたくさんの使用人がいる。
彼女にはジョージという名の許婚がいる。
ただ、彼は生意気な性格の持ち主でリリアーヌはジョージのその性格が殺してしまうくらい大嫌いなのである。
「ふふっ……いいことを思いつきましたわ……」
彼女は悪どい笑みを浮かべ、その売り場に置いてある板チョコ何枚かの他にアーモンドやナッツの他になぜかトリカブトを購入し、屋敷に戻った。
*
大型量販店から屋敷に戻ってきたリリアーヌはいそいそと厨房へ向かった。
「さて、早速、チョコでも作りましょうか」
「リリアーヌ様、本日はどうされたのですか?」
「あら、明日はバレンタインデーですので、チョコを作ろうかと……」
「許婚のジョージ様にもあげるのですか?」
「ええ……一応は作らせていただきますわ」
「偉いですね! 一応、リリアーヌ様のためにトリュフの作り方を書きましたので、参考になさってくださいませ」
「ありがとう」
彼女は調理人に話しかけられたので、淡々とその質問に答えていく。
しかし、トリカブトに関しては触れなかったので、リリアーヌは安堵の表情を浮かべた。
*
彼女はまず、手を洗い、必要な調理器具を準備し始めた。
リリアーヌはあらかじめに板チョコを包丁で慣れた手つきで刻む。
鍋に生クリームを入れて火にかけ、沸騰したら火を止めた。
そして、そのチョコにそれを加え、スプーンでゆっくりと湯せんにかける。
「むむっ、難しいですわね……」
リリアーヌはチョコを湯せんで溶かしながら呟く。
彼女は趣味で調理人と一緒に料理を作ることはあったが、お菓子は作ったことがなかったため、その工程は手作りチョコの難関に過ぎなかったのだ。
「あぁ……疲れましたわ……」
今度は湯せんで溶かしたチョコをバットに移し、冷蔵庫で固める。
「確か、30分くらい冷蔵庫で冷やし固めると書いてありましたので、少し猶予がありますわね……それまで何かして待っていましょう」
リリアーヌはジョージの婚約破棄及び、「トリカブト入りトリュフ」で殺そうと目論み始めていた。
*
約30分後……。
彼女は冷蔵庫から冷やし固めたチョコを取り出す。
そのチョコをラップの上にのせ、あからじめ準備しておいたアーモンドやナッツ、トリカブトをのせて包み――。
「また、冷蔵庫で30分〜1時間以上冷やし固めるんですの!? いくらなんでも日が暮れますわ!」
リリアーヌはなかなか完成しないという苛立ちを覚え始める。
しかし、彼女が調理人からもらったレシピではそのように書いてあるため、素直に従った。
*
あれから1時間後……。
リリアーヌは再度冷蔵庫から冷やし固めたチョコを取り出した。
そのチョコのラップをはずし、すべてきれいに丸め直す。
「この工程は楽しいですわね……」
最後にココアパウダーでまぶし……。
「ジョージの分だけですが、できましたわ!」
彼女は誰の手を借りずに1人でトリュフを完成させた。
あとはきれいにラッピングを施し、ジョージに贈るバレンタインチョコが完成した。
「ジョージを婚約破棄及び、死の淵に追い込んでみせますわ……!」
リリアーヌは使った調理器具などを片付け厨房から出ていく――。
*
翌日。
「リリアーヌ様、ジョージ様がみえました」
「通して」
「畏まりました」
彼女の執事が彼女と同じく、金髪碧眼の持ち主で純白のスーツを着用している少年を屋敷に招き入れる。
彼こそが彼女が嫌う許婚のジョージだ。
彼女らは向かい合うようにしてソファに腰をかける。
執事が暖かい紅茶を差し出すと、リリアーヌはニヤリと笑い、計画を実行した。
「やぁ、リリアーヌ。久しぶりだな!」
「ええ。ジョージも元気そうで何よりですわ。まずは私からあなたへ渡したいものがございますの」
「えっ!? 俺に!?」
「あなたにバレンタインのチョコ作らせていただきました」
「嬉しいな! 1つ食べていい?」
「どうぞ」
彼女がジョージにトリュフを差し出すと、「上手い!」と答える。
そして、ジョージはトリュフを2つ目3つ目と手がのびる。
「トリュフを召し上がりながらで構いませんので、私からあなたに伝えたいことがございます。重要ですので、よく聞いていただけると幸いです」
「何?」
「私はあなたとの婚約を破棄させていただきますわ!」
「う、嘘だろ!? なんで婚約破棄するんだよ!?」
「私とあなたの性格が一致しません。それに私はあなたの顔をもう2度とご覧になりたくはありませんの」
リリアーヌがこう言った途端、ジョージは5個目のトリュフを口に入れ、咀嚼している時だった――。
彼は「そんな……うっ……」と言い、ソファの上に横たわり、命を落とした。
「ごめんなさいね。私の許婚だった生意気男子くん?」
彼女は高笑いをしながら、どこかから出てきたか分からない鞭で元許婚のジョージの亡骸をピシンっと打った。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。