おじいさんとおばあさんの夫婦喧嘩
むかしむかし、ある王国に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんとおばあさんは、夫婦二人で王国最強の魔法使いと呼ばれていました。
ある日、自宅で朝食を摂っているときにおじいさんが言いました。
「ばあさんや。今日の朝飯は妙に冷めてないか」
「おじいさんが起きてくるのが遅いからですよ」
「何だ、その言いぐさは」
「あんたこそ、人のつくった料理にケチつけてるんじゃないわよ」
「もう勘弁ならん。表へ出ろ」
「望むところよ」
二人は戦うことになりました。
二人は、王国のはずれにある大平原で戦いを始めました。
二人の魔法は、嵐を呼び、大地を割り、巨大なうねりとなって荒れ狂いました。
その戦いの影響で、遠く離れた街にまで被害が及ぶほどでした。
「ここでは周囲への被害が大きすぎる。海に出よう」
二人の戦いは、広い海原の真ん中へと移りました。
二人の魔法は、天を切り裂き、海の流れを変動させ、その現象は陸地にまで影響を及ぼすほどでした。
「このままではいけない。上に行こう」
二人ははるか遠い空の高みへと駆け上り、やがて月へと到達しました。
月面で繰り広げられる二人の戦いは、巨大なクレーターをいくつも作っただけではなく、月全体を揺るがし、やがて星の軌道にも影響を及ぼしかねないものにまで発展しました。
二人は戦いの中で、お互いの力を高めあい、その力は以前よりもはるかに強大なものになっていたのです。
「もっともっと広いところへ行こう」
二人は元いた星から遠く離れ、銀河の彼方へと飛び去りました。
漆黒の宇宙空間でぶつかり合う二人の強大な力は、やがて時空を超えるほどのエネルギーとなり、時をさかのぼっていきました。
そして、そのエネルギーは、はるか遠い過去で巨大な爆発となって、新たな宇宙を生み出しました。
そう。宇宙の始まりであるビッグバンは、おじいさんとおばあさんの戦いから生まれたものだったのです。