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吹き零れる程のI、愛、哀(仮)  作者: 詠ミ人知ラズ
7/11

魔王と王女で朝食を

今回は普段より長いですよ!

半分に分けたい気持ちを抑えましたよ!

ツィン


なるべく音を立てぬよう、ユータロスはカップをソーサーに戻した。

ロロが入れた紅茶がいつにも増して美味い。

普段は気にも止めない柑橘系の香りにが、より一層余の気持ちを愉快にさせる。


美しい。実に美しい。

左右完璧に均整のとれた顔、ツンととがった鼻先。少し赤みのあるピンクの唇。大きくカールした長い睫毛。煌めく薄いゴールドの髪と、それ以上に眩い白い肌。それらとコントラストを成す様なブルーのドレスが彼女のセンスの高さを感じさせる。まるで悪意のない幼き天使の様な寝顔に余は魅せられていた。



「んん…」

目の前で女が心地良さそうに寝返りを打った。

組んだ脚の上下を替えるときの衣擦れにの音にすら、注意を払う。


そのまま待つこと、いや、愛でること1時間。眠れる森の美女は、王子ではなく魔王が指一本触れることなく、自然に眠りから目覚めた。


見慣れないベッドカーテン。見慣れない壁。

視線を天井方向に移す。やはり見慣れない天井がそこにはあった。


-ここはどこ?!-


ギョッとした矢先、背中側からの視線に気づき、さらにハッとした。


「お目覚めですねお嬢さん。ご気分は如何かな?」


一気に覚醒した。上半身もすぐさま起こした。

状況が飲み込めない。この人は誰で、ここはどこ?っていうかこの人白くない?


「あ、あの、ありがとうございます。ここは一体どこですか?あなたは?」

「ここは、マイアーカルデロン城。余は城の主である、ユータロス王だ。」


どこだそれわ?!聞いたこともない城だ。

そもそも私は眠る前何をしていたの。そういえば昨日はミナビアに行って…そうだ!落ちたのだ!テラスから真っ逆さまに!


「そしてどうか混乱しないで聞いてほしい。ここは其方ら人間達が住んでいた世界とは違う。今我々がいるのは魔界と呼ばれる世界だ」


何を言っているんだこの人わ。だめだ思考がついていかない。


「良ければ、冷たい水でも如何かな」


そういって男はグラスに注がれた水を手渡してきた。


「あ、ありがとうございます。」


手渡された水を一口、口に含んだ。

ほんの少しだけ、落ち着いた気がした。


「あの、顔を洗ってきてもいいですか?」

「えぇ、勿論。ロロ!ご案内して差し上げろ」


そういって、これまた色白の男が部屋に入ってきた。


「こちらです。お嬢さん」

「ありがとうございます」


ロロと呼ばれる男の案内に続いて部屋を出た。




「ククククク」


立ち姿も素晴らしい。

慎重に触れなければ折れてしまいそうな華奢な手足。幼くも女を感じさせ始めた凹凸のあるカラダ。すらりと伸びた姿勢が育ちの良さすら感じさせる。

もう数年、熟すのを待つか?いや、敵わぬ。そう今夜だ!一度安心させて、あの凛々しくも可憐な表情を、恐怖に染め上げてから頂くとしよう。




おぉ!心の中で感嘆した。

化粧水等、アメニティと思われるものが各種用意されている。ボトルに書かれたテキストは全く読めない文字であったが、手に出した雰囲気でどれがどれかはおよそ判別がついた。すいません、お借りします。

顔を洗って少しさっぱりし、タオルで顔を拭きながら鏡を見ていると、違和感に気づいた。

顔どころか体にも擦り傷一つない。

私が落ちたミナビア城のテラスは3階か4階に位置していただろう。城の3階ともなると、普通の宿屋のそれと違って、倍程度の高さになる。どう運が良かったとしても、擦り傷やアザの一つもないのはおかしい。

窓から見える赤みのかかった空の色も、どこか不気味さや違和感があった。


魔界…。

ユータロスと名乗る男の言葉を思い出した。


洗面所を出ると、ロロと呼ばれていた男が待っていた。


「すいません、化粧水とかお借りしました。」

「ご自由にお使い下さい。朝食の準備が出来ておりますのでこちらへ」


そういって、また別の部屋に案内された。

朝食?頭蓋骨が浮いて、蛙の脚が飛び出たスープが出てくるんじゃないよね…。


部屋では、先程のユータロス王と別にもう1人、恰幅の良い非常に大きな男が、巨体に見合った大きな肉を豪快に食いちぎっていた。


ユータロスの向かい、巨体の男の左の席をロロさんが椅子を下げて案内してくれた。


白いシーツの円卓には、ポタージュの様な淡い黄色のスープや、彩り豊かなサラダ、贅沢に卵を使ったであろうスクランブルエッグなど、先の想像が申し訳なくなる程の美しい、トラディショナルな洋風の朝ごはんが並んでいた。


「何をお飲みになります?何でも言って下さい」


ロロさんが気を使ってくれる。何でも?何でもって何でもあるの?


「じゃあ…オレンジジュースを」

「かしこまりました」


そういって、オレンジ色の液体が入った水差しを取り、それをグラスに注いだ。


差し出されたグラスを手に取り、思わず一口口に含む。


「…美味しい。」


「お口に合って良かったです」

ロロが私に微笑みかける。


「まだ体調が優れない部分もあるだろう。好きなものを、好きなだけ食べるがよい」


「ありがとうございます」


お言葉に甘えて、魔女が混ぜてはいなさそうな、パステルイエローのスープを一口頂いた。


「…美味しい。」

魔界とかジョークだろう。


「して、お嬢さん。其方の名は何と申す。」


「あ、すいません。申し遅れました。私はユーカ、スミノフ、レヴェイエール。プラファ王国の…一応王女です、」


「なる程、王女様だったか!どうりで綺麗な身なりをしてると思ったぜ!」


巨体の男が大きな骨つき肉を食べながら、いや、喰らいながら私に話しかけた。この人だけは少々魔界っぽい。


「俺の名は、オーフレイム。偉大なるユータロス様の右腕だ。」


「王女と言っても、本当に小さな国なんです。暖かいベッドに美味しい食事をありがとうございます」


「良いのだ。人間が魔界を訪れる事など100年に一度あるかないか。其方は我々にとって滅多とない客人。何かあればロロに言うとよい」


「何でもお申し付け下さい」


本当にこの人なら何でも用意しそうだ。どこか完璧というものを彼は感じさせる。


「本当に、ここは魔界なんですか?」


「確かに魔界だ。其方は森の中で倒れているのを発見された。あぁ、そう言えば彼奴に何か褒美をやらんとな。オーフレイム、いつでも良いので奴を連れて参れ。」


「畏まりました」オーフレイムが食べる手を止め頷いた。


「あの?私は帰れるんですかね?その、人間界って言うんですか?おうちに」


「流石の余でも方法はわからん。そもそも人間が魔界に来た時に何が起きるかと言うと、地上と魔界の間にほんの小さな隙間が生じる事がある。出来てこぶし大程度のものだ。滅多とない事だが、それが人が通れる程の大きさにまで裂け、さらにそこを人が通らんと魔界にはこれん。次元の狭間が開いているのも、ほんの数秒間のことだ」


「あ!」


「何か思い当たる事があるようだな」


「えぇ、私、すり抜けたんです。テラスの手すりを。そっか〜。私魔界にきちゃったのか。」


ユータロスにとっては意外だった。泣いて恐怖し、絶望の淵に沈むものと思っていた。


「何処かに街や住む所、仕事が得られそうな所はありますか?」


またもや以外な台詞が浴びせられた。


「食事や寝床の心配は必要ない。其方は客人だ。余が丁重にもてなすので、安心するが良い」


「いや、でも、帰れないんでしょう?流石にずっと住むのは申し訳ないので、どこかに移り住もうと思います」


一同「…。」


-なんだこやつ、恐怖が微塵もないのか!?

-おやおや、風向きが変わってきましたねぇ。

-人間の分際で生意気な!!

-パンでも作ったら売れるかなー?でもこのパン美味しいから無理かなー。


「まぁ何も急く必要はない。一先ずはここで今後の身の振り方を考えるがよい」


「お心遣い感謝致します。早速ですがシャワーの様なものはございますか」


「うむ、案内してやれ」


「承知致しました。」


いつもよりご機嫌な表情でロロが返事をした。



お読み頂きまして有難うございます。

感想等、お聞かせ頂けますと幸いです。


やっとこさ主役とヒロインがかち合いましたね。

お待たせして申し訳ありません。


魔王風の言葉使いが難しいです。

大魔王バーンをイメージ(嫌に古いな!)しているんですが…。

まぁ多めに見てください。


一瞬、寝室を出た所で話を切ろうとしました。量的には普段、大体こんなもんだろうと。

ただ、いやいや寝室で寝顔見てウットリしてちょっと喋っただけやん!とあまりにも話が進んでいないことに気づき我慢しました。


書き溜めがあるので、明日も投稿出来そうです。

続きも読んで貰えたら嬉しいです。


でわでわ!

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