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吹き零れる程のI、愛、哀(仮)  作者: 詠ミ人知ラズ
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バタフライ・エフェクト

「うわ!ユーカ様、めちゃくちゃ綺麗じゃないすか!?」


城を出るに際して、門番 ライトのケインが、王女に対する口振りにしてはいささか軽い口調で声をあげる。


「ありがとう。我ながら気に入っているの」


言葉遣いも含め、よく怒られている彼だが、裏表のない彼の言葉やキャラクターにユーカは好感を頂いていた。

ミナビア王国へは、残念ながらケインを含まない護衛の兵士4名と、馬車に乗る父ワグネイ・スミノフ、母ユキノ・スミノフ、執事であり御者として馬車に乗るセバスチャンとユーカの計8名。

道中通る二つの平原と森には街道の整備が整っており、獣といったクリーチャーが出る事も今では滅多にない。馬車であれば数時間と掛からない道のりとなっていた。


パッパカパッパカ、カラカラカラ

調子良く馬車が街道を走り続ける。

ユーカは曽祖父スミノフ1世が城を飛び出した気持ちがよくわかった。

このまま馬車で平原を抜け森を抜け、ミナビアを越えて海も越え、誰も知らない何処か遠くへ行ってしまいたかった。

道中何も問題なく、馬車の揺れからくる眠気に身を預けているうちに、一行はミナビア王国に到着した。


プラファの王室用の客間に案内され、ユーカ達一行はしばしの休憩となった。

ただ、大半の参加者は前日入りしており、父ワグネイは休憩もソコソコにすぐ会議に参加した。

会議で最も盛り上がったのが自分の話だったと父から聞かされたときには、目眩がした。

「ビスマン帝国のヴィットーリオ王子が…」と言いかけて所で、父が話すのを遮った。


パーティー会場では、なるべく目立たないように、いつもは恨めしい小さなカラダが少しでも目立たないようにと、私は母の陰や会話を楽しむ人の陰に潜む様に努めた。

頬が落ちる程美味しいはずである、色とりどりの宮廷料理が全く味気ないものに感じられる。


「ユーカ様」


牛フィレ肉とありがたい名前のソースがかかった一品をこっそり頬張っていると、いよいよ問題の瞬間がやってきた。


「とても美しくなられましたね。カリビアーナの海を想起させる様な素敵なドレスも大変お似合いです。あぁ失礼、ゆっくり召し上がって下さい。」


そう言って微笑みかけ、私が噛み終えるのを待つと彼は跪いた。私の手を掴み、甲に口付けをする。まず現れたのはミナビア王国、王国騎士団の若き団長、レビン・ストライクフェルト。世に言う『ミナビアの霧雨』だ。レイピアの名手だそうで、霧雨の様な彼の突きをかわしきることはできないそうな。


「レビン殿、抜け駆けは貴殿の騎士道に反するのでわ?」


競う様に現れたのが、西の帝国、ビスマンの髭王子こと、ヴィットリオ・ビスマン5世だ。同じ様に私の手を取って、甲に口づけをする。髭のふぁさっとした感触に鳥肌が立った。

西の海でクラーケンを撃退したといった、まるで興味のない武勇伝を今日も語ってくる。右から左へ受け流している私の両耳の対応に気づいてくれればいいのだが、まるで意に返さない所が『不屈の長槍』と言われる所以だろうか。


次第にヒートアップする彼らと私の温度差に疲れてきてしまい、少し夜風に当たってくるとテラスへ逃げ込むことにした。

いつも以上に夜風が心地良い。ミナビアの夜空を見上げようと、テラスの手すりに腰を掛けようとしたそのとき、自分のカラダが手すりには掛からず、仰向けに倒れていくのを感じた。


「キャッ!!!」


手すりが老朽化していたのか、悲鳴を発した自分のカラダが、仰向けから逆さまへと倒れていく。私は突然やってきた死の瞬間を悟った。


悲鳴で駆けつけた王族や護衛兵達であったが、そこには崩れた手すりも、人が争った痕跡も何もなく、むしろ微かな夜風が目立って感じられる程に静寂であった。




―ミナビア王国歴1181年、後に大きな波紋として広がりを見せることになる「ユーカ王女失踪」という一石が投じられた瞬間であった。




お読み頂きましてありがとうございます。

コメント等、頂けましたら幸いでございます。


やっと次回は主人公の魔王がふんだんに出てくる予定ですよ!

やっとですよ!第一話の『プラファの春』の最後にちょろっと喋ったあいつです!

ん~。あかんよなぁこれ。

でもまぁ主人公が初っ端からなかなか出てこないという斬新なスタイル!という事にしよう。


さて、また月曜日がやってきましたね。

多くの方にとって残念な曜日です。

でも、内の魔王と一緒で、ワールドトリガーもきっとあいつが活躍し始めるはずなので、

ジャンプでも読んで頑張りましょう。


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