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吹き零れる程のI、愛、哀(仮)  作者: 詠ミ人知ラズ
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ブルー・スカイ・ブルー

「っんん~。」

寝起き特有のくぐもった声が無意識にこぼれる。

肌寒い空気に反して、暖かいベッドが何とも心地良い。

何処からともなく香る、アールグレイの香りが居心地の良さに拍車をかける。


―心地いい、もう一眠りしよう。


ユーカは心の中でそう決めて寝返りを打つと、再びスヤスヤと寝息を立て始めた。




―1日前、プラファ王国にて―


「はぁ~…」

「いったい何回目ですか?そろそろ観念してください。」


そういってドレスのファスナーを上げるリコッタさんに、鏡を通じてユーカは物言いたげな視線を送り続けるのをやめなかった。


「もう、何て顔しているんです?せっかくお化粧して綺麗になったんですから。」

むくれた顔をする絶世の美少女の両肩に、リコッタさんは励ますようにポンと手を置いた。


「私、一回もいいって言ってないもん!」

「ご結婚は、でしょう?まずは一度顔見せをするだけじゃありませんか」

「そんなの屁理屈よ!私のいない所でどんどん話を進めちゃって!」


何度もやりとりしたセリフだが、話し相手が変わるたびに文句を言わずにはいられなかった。自分の中で余程納得いっていないのだろう。

今日はミナビア王国で、大陸の国王や周辺領主が一同に集まる会議があり、その後に控えるパーティーにユーカも参加する事となっている。

そもそもこういった政治や社交の場自体が嫌いな事は、ユーカにとっては祖父にあたる、初代国王のスミノフ1世譲りなのだろうか。さらには、父がミナビアの騎士長を気に入っている様子であることと、何より一番億劫なのは、西の新興国ビスマン帝国の髭王子に言い寄られることが目に見えているからである。


全ての準備が整ってしまったが、なお足取りは重い。なけなしの使命感で歩みを進めようとしたとき、不意に鏡に映った自分の姿が気になった。


―けっこういい感じ?かも…。


ミナビアの小さな店で、コバルトブルーに染め上げられたドレスを見たとき、ユーカは一目で気に入ったが、なんともサイズが大き過ぎた。諦めて店を出たはずだが、帯同していた執事が気を利かせてくれたのだろう。作り直したというよりも、同じかそれ以上の品質の似た生地で、最高の職人が同じデザインのものを一から織りなおしたという様相だ。以前見たものより、ディティールが洗練されているような印象を受ける。


恐縮にも、異性から頂くお褒めの言葉に敵対するかの様に、私は自分の容姿をあまり好きにはなれなかった。

ついこの間も「大きくなったね~何年生になったの?」と尋ねられた。151センチしかない身長と田舎町に釣り合いのとれるナチュラルメイクは、城下町の呑気な小ボケおじいちゃんには10年近く若く私を映してしまうようだ。

同世代の女の子と同じ様に、私はオシャレをすることは好きだったが、年相応の洋服は必ずと言っていい程サイズの問題が立ちはだかった。

そして何よりこの華奢なカラダだ。「また太った。痩せたい」という人が羨ましかった。ケーキとポテトフライを頑張って食べた時期もあったが、お肌の調子に悪影響が出ただけだ。

女の子は「ふわっ」とか、多少は「ぷよっ」とした手触りの方が可愛いはずだ!

そんな劣等感を忘れさせてくれる程素敵なドレスを身に纏うことができていることに気づき、どうやら少しだけ足取りが軽くなった気がした。


全然話進んでませんが、なんやかんや5話です。

ここまでお読み頂いている方、本当に有難うございます。

感想、駄目だし等ございましたら、コメント頂けますと幸いです。


どの程度ディティールに踏み込んで行けばいいかが全然わかりません。

今回、長さがいつもの倍くらいになってしまったので、次の話と分けたのですが、

ん~微妙。


さすがに主要な2人が全然出てこないのも駄目だなと、

プロローグとかで帳尻合わせられないかなと思っております。


それでは皆さん、良い週末を!


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