色欲の都ハーレムクイーン
俺はディオゴ・オーフレイム・オーフェルマルス。偉大なるユータロス様の右腕。
鬼人族の血を色濃く受け継いだ屈強なバンパイアだ。
俺にだって血や肉の美味い不味いくらいはわかるが、雌の美しさや可愛さってはちっとも理解出来ねぇ。マーメイド族の女を連れて帰ったときは、ロロには出来ない選択だったと大層お褒めを頂いた。ヒントを得たと思った俺は、その次にケンタウロス族を連れて帰るも二人に笑われ、天馬の雌を選んで帰ったときは、鋼の様な肉体と、高い自然治癒力をもつこの俺でさえ1ヶ月近く両腕が動かせなくなる程、王から猛連撃をくらうはめになった。
街にその馬を入れたクソ野郎は、玉座の間で王に首を刎ねられた。切られた本人にとっては自分に指を刺された程度の何気ない動作に映ったはずだが、その動作が生んだ露草の花びらの様に薄い斬撃は、俺でさえやっと目に捉えられるのがやっと速さで奴の首を通過していった。
奴はそのまま扉から玉座の真ん前まで自らの足に歩き、生きたまま謝罪を述べ、土下座で頭を下げた際、ようやく首が落ちて絶命した。
王と同様、闘う事にあまり無関心なロロの野郎でさえ、達人の一振りに色めき立つ表情を見せた、それほどの一刀だった。
今の俺なら十分出せる速度だが、何で何も消し飛んでねぇんだ。そんな事を思いながら、筋肉の隆起で今にも衣服が破れそうになる自分の右腕を覗き込んだ。
女でないと駄目で雌はNGだとロロの野郎は言ってやがった。意味のわからなかった俺は街の連中にも尋ねたが、結局最後まで納得出来なかった。自分の中で4本脚は避けるべきだろうと結論付ける事で、それ以上考える事をやめた。
さて、今回はどうするか…手堅く魔人族の女の中から選ぶか、それとも…。
あまり回転しない思考を巡らせながらオーフレイムは街を歩く。
「オーフレイム様ぁぁぁ♡♡♡」
街のあちこちからハーピィレディや魔女、サキュバスに蜘蛛女と次々に愛想を振りまいてくる。
オーフレイムは非常にモテる。2mを越えようかという巨体に、衣服の上からでもわかる総合格闘家の様な逆三角形の肉体。乱暴にカールした金髪のミディアムショートヘアとやや堀の深い眼の端正な容姿。主へ献上するための女を自らの魔力で消し炭にしてしまわない様に力を抑えつけるも、それでも迸る彼の闘気は、雌の本能を直接刺激した。街にいる他の多くのバンパイアの色目と違い、美しい自分に一切の興味を抱いていないところもまた良いのであろう。
科をつくる女の中には、オーフレイムではなく、ユータロス王に向けられたものもあった。城から街へ戻った女はなく、城で何が行われているかは知る由もなかった。数々の王に纏わる伝説への恐怖はあるが、王の色欲に対しての噂の信憑性も高い。実際、街に住まう女のレベルは本当に高いのだ。それでも選ばれたいと思うのは、もし自分が王の子を孕む事が出来れば、次の魔界の覇権を握れるのは自分やその一族になるからだ。
メドューサの美女と肩を組んで歩く酔ったバンパイア。当然女の血を吸う事、女と寝る事、口づけする事は許されない。
あの野郎、あと一歩線を越えると地獄を見るぞ。
もちろん二人に興味はなかったが、例の伝説の光景が今もオーフレイムの目と耳にもはっきりと残っている。
ハーレムクイーンの街はさながら24時間営業のネオン街だ。
女はホステスになり、バンパイアに酒を振る舞ったりして生活をしている。
バンパイアはその手伝いや、女がする以外の一切の仕事、例えば街の外からの食材の調達なんかを請け負っている様だ。
代わり映えしない街の風景だが、オーフレイムは勤勉にも一通り街を歩いて見て回り、いったん酒場に戻った。
「無難に魔人族の女にするか、メデューサの女で勝負をかけるか…」
血の最後の一滴がオーフレイムの喉を通る。樽の様に大きいオーフレイム専用グラスをぶっきらぼうにテーブルへと叩きつけた。悩んだその結論が出た頃、1人の年老いたバンパイアがオーフレイムに話しかけた。
「オーフレイム様、私はベベと申します。どうか私の見つけた女をお連れ下さい。人間です。それも生きたままで健康な、若く美しい女です。」
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