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吹き零れる程のI、愛、哀(仮)  作者: 詠ミ人知ラズ
10/11

気高さと涙と躊躇いと

祝 第十話!!


残念ながらブックマーク5人到達ならず(´;ω;`)

なんやかんやここまで読んでくれてる人、ブックマークしてくれよツンデレか笑


これからもよろしくお願いします。

「ご馳走様でした。」


 相変わらず素敵で美味しい夕食ではあったが、先の殺し合いの凄まじさを打ち消す程の現実を突き詰けられて、ユーカは些か困窮していた。


―食事中


「そういえばべべさんが来ていたとき、人間とは話をした事があるって言ってませんでしたっけ?!私以外の人間と会ったことがあるって事ですよね?!」ユーカは藁にもすがる思いで質問した。


「いかにも。余は3度人間と関わりを持ったことがある。1人目は数千年前、その男はまだ其方らの様に文化が高まっていない様に見えた。互いの力量の違いにも気づけず、余に襲いかかろうとしたものだ。そのときは猿など興が湧かんとまるでどうでもよいものと思っておったわ。」


 どれだけ昔なんだと、ユーカは改めて彼らの寿命の長さを思い知らされた。


「2人目は女だったがすでに死んでおったな。」


「何かに襲われたりしていたんですか?」


「いや、魔界の瘴気に毒されたようだ。多くの人間が魔界の環境に適応出来ずに死体で発見されると言われておる。其方は稀有なケースだ。」


 生唾を飲み込んでユーカは話の続きをと目で訴えた。


「初めて話をしたのが最後の男だ。酷く怯えておってな。余に何かを訴えかけているのがわかった。だが当時は人間界の言葉がわからず、其奴が何を言っておるか興味を持ったのだ。」


 恐怖に染まるその顔で、人間は一体何を叫ぶのか、どんな命乞いをするのか一興であったのだ。そう当時を思い返し、其方はどうだろうなと邪悪な笑みが溢れそうになることを見せないようにユータロスは努めた。


「そこでロロ達に命じて、地上の言葉を理解するための魔法や書物、知識のある魔族等を片っ端から調べ、集めさせたのだ」


「あのときは大変でしたね〜。彼の言葉が理解できぬ内に彼が死ねば、我々も死ぬことになる。なんて命じるのですから…」


「それで…どうして言葉を交わせるようになったんですか?」


「過去に地上の言葉を理解出来るものがおったのだ。名はなんと言ったか…。」


 ロロも首を傾げた。


「その者は生きた人間の言葉や、その人間が持っていた書物から理解を深めたと申しておった。あとは思念だ。知能の高い魔族は、魔力や第六感を用いて、思考や言葉を相手に投げかけたりする事が出来る。当初に得た知識とこの思念による反応を感知することでだんだんと其方らの言葉を理解出来るようになって言ったのだ。」


「興味のない俺までやらされたんだからたまったもんじゃなかったぜ」


 オーフレイムは懲り懲りだと言わんばかりに肉を食いちぎった。


「その後、その人はどうなったんですか?!」


「(それはそれは絶望のうちに最後は死を懇願しながら)死におったよ。」


「ユータロス様の力でも人間界には行くことが出来ないのですか?」


「余に不可能はないが、現状方法はわからぬ。同じように此奴らに手掛かりを探らせたが、誰1人訪れたという奴はいなかった。」


 あんな異次元の闘いを見せる程の魔力を持つ人が、数千年生きて手掛かりすら掴めていないことに絶句した。


「あの…明日、城の近くにあるという街に行かせてもらっても良いですか?魔界各地から女の人が集まっているとさっきロロさんから聞きました。もしかしたらまた何か新しい情報があるかもしれません…」


―其方に明日はないが…希望を少しでも持たせた方が、その後の絶望がより一層深いものへと誘うか…


「好きにするがよい。ロロ、案内してやれ」


「畏まりました。」


「ありがとうございます。すいませんロロさんお疲れなのに」


 さっきまで怪我だらけだったロロを気遣いながらユーカは精一杯、明るい笑顔で2人に礼を言った。


―深夜


 心労で深く眠るユーカ姫の寝室に、ユータロス王は音もなく忍びこんだ。

 いよいよだ。自分の心臓が早くそして強く高鳴るのを感じる。両手を万歳気味に上げて眠る少し変わった寝相だったが、ここに噛ぶりつくんだと言わんばかりに首元が曝け出されていた。細く白い首に薄っすら浮かんだ血管に下品にも舌舐めずりをしてしまう。全く穢れのない聖者のような美しさに今夜も見惚れる。これをどうやって味わえば、最も興が唆られるのか。首を嬲って目を覚ますのを待ち、血肉を全て生きたままじっくり味わい尽くしてやることを、宣告してやろうか…。


「んん…」


 仰向けだった寝相が傾き、ユータロスの方へと向く格好となった。不意をつかれてユータロスは呆気にとられてしまった。何も考えずユーカの寝相を見つめていると、目尻から一雫の涙が零れ落ちていった。


「ふん。」


―気高いな。ユータロスは、実際は希望が全くないにも関わらずに絶望感をほとんど見せずに、明日へ挑もうとする姿勢と、うちに秘めた大きな恐怖や悲しみに苛まれている事を眠りの中に落ちるまではひた隠しにしていた気位の高さに感心した。


 興が削がれたとユータロスは部屋を後にし、静かな足取りで暗い廊下の闇へと消えていった。



いつもお読み頂きまして有難うございます。


はい、焦らすパターンでした~残念。

また明日( ´Д`)ノ

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