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吹き零れる程のI、愛、哀(仮)  作者: 詠ミ人知ラズ
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プラファの春

お手柔らかにお願いします。


設定のブレや、意図としていない口調の変化等、

至らない部分が多々あるかと存じますが、なるべく頑張ります('ω')


宜しくお願い申し上げます。

「ふぁ~あぁあ」


大きなあくびが平和を物語っている。

仕事は朝夕、門の前にある橋の上げ下げと、隣の門番との世間話だ。門を守ろうとしたなんて事は一度もないし、破ろうとする輩が現れたなんて事はもっとない。

ここはプラファ王国。大国、ミナビア王国の西の外れに位置する、国というには申し訳ない程の小国だ。そして俺は一度も剣を抜いた事のない、門番右ライトである。


我が国、プラファの初代国王スミノフは、500年続くミナビアの正統王位継承者であったが、もっと気楽に生きたいと継承権を弟に押し付け、王位をあっさり退いた。

スミノフがミナビアを出て2週間、平原2つと森1つを抜けた片田舎のこの地で、作物でも作ってのんびり生きようと、いよいよ場所が決まり、焚き火の煙が上がった所でミナビアからの捜索隊に発見された。

当然スミノフはミナビアに戻る事を拒否。ただ、厚すぎる彼への人望がこの時ばかりは彼に味方しなかった。


「ではせめて寝床の準備だけでも!」


捜索隊隊長のこの進言に始まり、その翌日には小屋ができ、さらにその翌日には小屋の横が耕作地として耕され、1週間が経つ頃には耕作地と小屋の周りを囲う柵が出来上がった。所帯を持たない兵士に至ってはそのままそこに移り住み、結局1年も経たないうちに集落と呼べるものが出来上がったそうだ。


家ができ、地面を耕し始めたあたりでスミノフも、


「家出来たんだし、お前らもう帰れよ」と命じたが、

「スミノフ様はもう我々に命令する権限はございません」と返したそうな。


このときのスミノフの悔しそうな表情と、捜索隊員達の満面の笑みの対比は絵画にもなっており、今となっては最初に出来上がった小屋の10倍は大きくなったが、それでも城と呼ぶにはこじんまりした3階建てのお城の広間に飾られている。


プラファの北に位置する山々から金や銀が採掘される事はなかったが、温暖な気候と運良く農耕に適した肥沃な土壌から収穫される作物は毎年安定しており、豊かとは言えずとも緩やかに確実に繁栄していった。


7年ほど経った頃に一度野盗が現れ、プラファが周辺野盗のターゲットになりそうになったこともあったが、噂を聞きつけたミナビアからの討伐団が当時最大派閥であった野盗の一団を一瞬で壊滅させた。結局この事がきっかけで両国の繋がりが明らかとなり、プラファはアンタッチャブルな存在となった。


プラファの地でスミノフはまたも王となってしまい、当初の本人の意図とはかなりかけ離れたものとなってしまったが、皆で村を作り上げる事が楽しかったようで、その人生を謳歌されたと語られている。


そんなこんなで100年も続いている平和なプラファ王国の最も暇な仕事である門番右(業務上門番左レフトは必要ないが、1人じゃあまりにも暇だろうという配慮)の俺に最大の事件が降りかかってきた。


「ふん。死してなお、余を笑わせおる。」


黒衣を纏う見知らぬ男は、俺が守る小さな門を見上げながら、どこか優しくそう呟いた。



最後までお読み頂きまして、本当に有難うございます。

また、期待に添えないものでしたら、申し訳ございませんでした。


誤字脱字のご指摘、感想、ご要望、なるべく暖かめな忌憚のない意見等、

ございましたら、コメント頂けますと励みになります。


繰り返し、お読み頂きましてありがとうございました。


m(__)m

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