何てことの無い飲み会
その場所は、懐かしいメンバーと共に現れた。
池上と永原は最後の晩餐を楽しむ・・・。
いつもの永原の家だった。
週末は、大学で一通り勉強や研究を終えると、みんなで集まって飲み会をする場所だった。
永原の家に集まるのは、それなりに部屋が大きいからだ。
「~~~っていう、話なんだけど、どうっどうっ!?」
雪ヶ谷しずくが話をしてきた。
「何がだよ、どうっ、どうっ、だよ・・・。相変わらず猫耳か、好きだなぁ。」
荏原 真一は、あきれ顔だ。
「雪ヶ谷、止めろよ~~。もう昔の話じゃないか~~。」
大崎 孝治は、この話にうんざりしていた顔をしていた。
「まあ、色々あったけどさぁ、前を見て歩こうぜ?」
永原 秀人は、相変わらずクールだ。
だけど、お前が言うなよって顔で荏原がにらんでいる。
「君たちには、悪いことをしたよね・・・。」
戸越 准教授が気まずそうに話した。
「先生っ、忘れましょうよっ!!」
「しずく・・・。」
「おい、池上。お前はどうなんだよ。」
「うん?荏原・・・、どうって、みんな大変だったよね・・・。」
「ぷっ!何をまとめているんだよ。」
荏原は吹き出してしまったようだった。
「しかし、なんだ?この場所は・・・?」
永原が、この場所を客観的に見つめて話した。
「さあ?よく分からない・・・。お前の家だろ・・・、多分・・・。」
「どうでも良いじゃんか。最後だろ?飲もうぜっ!」
荏原は、暗い話が嫌いだったから、話を遮ってしまった。
「そうだっ、そうだっ!飲んじゃおっ!かんぱ~~いっ!」
しずくは、相変わらず明るい口調で、その遮断した会話に乗っかってきた。。
「あはは、乾杯・・・かな・・・。」
戸越先生も合わせるしかないな、という口調だった。
「そうだねっ!乾杯っ!」
僕もこれに乗っかった。
「まあ、みんな死んじゃったけど、面白かったよな?」
荏原が自分の人生を振り返って話し始めた。
「で、でも、僕たちの人生って、短すぎだったよ~。(出番もないし・・・。)」
大崎は、やはり早すぎた人生の終わりを嘆いている。
「まぁな、でも仕方ないさ。」
荏原の性格はさっぱりしているな・・・。
「ううん、私は幸せだったよ~~っ!」
しずくが大崎を否定するように話した。
「そりゃ、お前はリア充だったもんなっ!」
荏原がすかさず、突っ込みをいれた。
「えぇ・・・、いや・・・、ブツブツ・・・。」
戸越先生は照れるしか無いようだった。
「みんなお疲れ様ってことか?」
永原がまとめたように話した。
「だけどさぁ~、お前が変な発明するからこんな事になったんだろ?自覚しているのかぁ?」
さっぱりしていた荏原だと思ったけど、永原には突っ込みを入れたかったのかもしれない。
「まぁな・・・、やり過ぎた・・・かな。」
「そうだよ。やり過ぎだよ。」
「そうだよ~。」
「そうだ、そうだ~っ!先生が一番の被害者なんだからっ!」
「えっ、いや・・・、僕は・・・、す、すまなかった・・・。ブツブツ・・・。」
みんなで永原に突っ込み始めた。
「う、ううん・・・。も、もう良いだろ・・・。終わったことじゃないか・・・。」
珍しく永原が言い負かされていた。
「二人はどこに行くのぉ?」
唐突にしずくが僕らに聞いた。
「それが分からないんだ。本当に分からない。」
永原が言うように、どこに行くのかさっぱり分からなかった。
「なんだ、そりゃ~。どこに行くか分からないって、そんなことってあるのかぁ?」
荏原は、笑いながらそう話した。
「まあ、良いんじゃないか?お前らこそ、どこに行くんだよ。」
そうだ、みんな突然の死で何も事情が分からないまま彷徨っていたはず。
「俺達は天国ってやつに決まっているだろっ!」
荏原は自信満々に話した。
「そ、そうだね。」
大崎が少し自身がなさげなのは何でだろ。
「ぼ、僕も池上君のお陰でかなり反省できたよ・・・。あ、ありがとう・・・。」
戸越先生は、すっかり元の性格に戻っていた。
「そうですか・・・、みんな良かった。」
僕はほっと胸をなで下ろした。
「さっ、名残惜しいけど、行くか、池上。」
「そうだね。」
「そっか、みんなバイバイだね・・・。」
しずくは、少し寂しげに話した。
「ああ、またな。」
「来世で会うのかな。」
「どうだろな。」
「また会いたいね。」
「じゃあ、また・・・。」
「また・・・。」
僕と永原は、誰が与えてくれたのか分からない、この飲み会を後にした。
そして、僕は、また行く当ての無い旅に出かけた・・・。