科学バカ達は最後に笑う
インフェルノの塔を目の前にして池上は、最後の奇策を実行に移す・・・。
全てを吸い込み始めた塔は、空気を動かしているため、ますます風が強くなっている。
そんな中、僕は、この巨大な塔を消す方法を考えていた。
僕と愛那の力でイマージュ達を消すことは出来た。
だが、この塔は大きすぎて無理だ・・・。
「永原・・・、永原っ!!!」
僕は、永原に問いかけた。
「永原はいねえよぉぉぉっ!!」
「いや、永原は、そこにいるっ!」
「・・・あぁ・・・、いるぜ・・・。」
「勝手にしゃべりやがってぇぇぇっ!黙れぇぇぇっ!」
「・・・は、はやく・・・や・・・れ・・・。」
永原は全て分かっているようだった。
「す、すまない・・・。」
「・・・い、いいんだ・・・、お、俺が・・・蒔いた・・・種・・・だ・・・。」
「勝手にしゃべるんじゃねぇって言ってるだろうがぁぁぁっ!!!」
永原は、全てを理解して、僕のこれからすることを容認してくれた。
「良子さん、力を借りるよ。」
「えっ、えっ、えっ?!は、はいっ!!!(うれしい、にゃっ!!!)」
<<1ページの重みっ!!!>>
僕は良子さんの力で、紙を大量に放出して、永原の身体を覆い、自由を奪う。
「や、やめろぉぉぉっ!!!」
霊体では動けなくすることは困難だった。
だが、悪魔が永原の身体を乗っ取ったために、動けないようにすることが出来た。
「とっきょも頼むよ。」
「おうっ!」
<<零時零分!>>
僕はとっきょの長針、短針で永原の身体をつかむ、永原の身体を無理矢理インフェルノの入り口、
つまりブラックホールの中に運ぶ。
「な、何をするんだぁぁぁ、や、やめろぉぉぉっ!!!!やめろぉぉぉっ!!!!」
一つ・・・、一つだけヒントがあったのだ。
戸越先生がペンションで死んだ時、彼の創造物でもあり、彼の身体でもあったペンションは消えたのだ。
恐らく、創造した者の"死"で、創造したものは消えてしまう。
"死"、つまり、生きている人間と肉体とを結ぶシルバーコード、これを切るのだ。
永原は身体を乗っ取られたとはいえ、まだシルバーコードで身体と結ばれている。
だから、創造物は消えないのだ。
この計画の弱点は、悪魔にヘッドギアを奪われてしまっている点だった。
肉体を傷つけただけでは、別の肉体を作り、永原ごと、そちらに移ってしまう。
だから・・・。
「池上・・・、ブラックホールに・・・入る科学者ってのは・・・貴重・・・だぜ?」
「そうだな。おまけもいるが。」
「やめろぉぉぉ、何をするぅぅぅっ!!!」
この悪の元凶を消し去ることの出来る唯一の方法は・・・。
「ふっ・・・、違い・・・ない・・・。」
「・・・俺達、どうなるのかな。」
「分からない・・・な・・・。ホワイトホールが・・・あって、そこに・・・出るのか・・・、いや・・・、その前に・・・。」
「身体が、摩擦に絶えられなくて燃え尽きるだけか・・・。」
「そう・・・だな。魂って・・・やつは・・・どうなるのか・・・。」
「分からないね・・・。」
「たださ・・・、楽しみ・・・でも・・・あるぜ・・・?」
「・・・?」
「科学者が・・・実験体となって、ブラックホールに・・・吸い込まれる・・・んだ。
自分で・・・検証が・・・出来るって・・・こと・・・だ。」
「あははっ、科学バカな奴だ。」
「そう・・・だぜ・・・、俺は・・・マッドサイエンティスト・・・だからな。」
「違いないっ!」
「ふっ・・・。」
「あははっ!」
互いにどうなるかを楽しみにしている。
これも科学への探究心なのだろうか。
そんな科学者の笑う声も、ブラックホールに吸い込まれていく。
「お前には・・・迷惑を・・・かけ・・・たな。」
「いいや、大丈夫だよ。この国を守るのが使命だった。本当はお前と一緒に文明を進化させる役割だったんだぜ?」
「そう・・・だった・・・のか。」
「だけど、お前が無茶するからさ。愛那と協力してお前を止める方向に変わってしまったんだ。」
「そりゃ、悪かったな・・・。・・・愛那か・・・、最後に会えて・・・良かった・・・。」
「そうか・・・。」
「そ、そうだ・・・。」
「うん?」
「俺の・・・妹を・・・呼び捨てに・・・する・・・なよ。」
「そ、そうか・・・、な、馴れ馴れしかったかな・・・?」
「そう・・・だぜ・・・。ふふっ・・・。」
「あははっ・・・。」
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こうして、池上さんと、お兄ちゃんは、インフェルノの塔に吸い込まれていきました。
私たちを苦しめていた、元凶である悪魔も、この力には抗えなかったようでした。
程なく、塔は消えて、何も無かったように辺りは静まり返りました。
・・・池上さん・・・。
・・・お兄ちゃん・・・。
・・・ううぅぅぅ・・・。