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妄想は光の速さで。  作者: 大嶋コウジ
第13重力子 ボクハ ミンナトトモニアル
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第七圏 第一の環

苦しみの世界から戻った戸越は、ヘッドギアを使い、池上に同様の苦しみを味合わせようとする・・・。

「まずは、君の幼かった頃の辛さを思い出すが良いっ!」


<<第七圏 第一の環!!!>>


戸越がヘッドギアを使うと、巨大な塔が現れ、その7層目にあたる入り口が開く。

その入り口が、僕の方に迫り、自然に塔の中に入ったようになった。

だが、中は暗闇が広がるだけだった。


「さあ、インフェルノで自分の罪を思い出せっ!」


戸越の声が響くと、次の瞬間、幼少期の自分の記憶が浮かんでくる・・・。

それと同時に僕は幼少時に住んでいた家にいた。


幼少時の嫌な思い出・・・。

母親は恐怖の存在でしかなく、僕は、いるべき場所が無かった。


僕は母親が連れてきた男に殴られていた。

そして、母親は一緒に僕を罵倒した。


「お前なんていなくなれば良いっ!」


僕の本当の父親は、賭博好きな人間だった。

競馬や競輪でお金を使い、金がなくなれば家に戻り、母親に暴力を振るっていた。

母親は、この暴力から逃げるためには、お金を父親に渡すしか無かった。

ついには、ローン会社で借金を作るようになっていった。

だが、父親は外で女性を作って、ここまで尽くした母親もを捨て、家にある金を全て持ち逃げした。


そこに見えたのは、暗い影を落とす母親の姿。

奴隷のようにこき使われ、最後には捨てられた哀れな女性だった・・・。


自分の寂しさ、苦しさ、絶望感を紛らわすために、男を捜すようになっていった。

例え、その男が自分の息子に暴力を振るおうとも、別れるという選択は取らなかった。


だけど、僕を罵倒している言葉の奥底で、母親の苦しみの声が聞こえてくる・・・。


(私は・・・、何を・・・、何をしている・・・?

自分の息子が殴られているのに、何をしている・・・?

この男の暴力を・・・、暴力を止められない・・・。

私は・・・、母親失格・・・。駄目な人間・・・。)


お母さん、あなたは、本当の気持ちに嘘をついていた・・・。

今なら分かるよ・・・、あなたの苦しみ・・・。


(私は自分の息子に何て酷いことを言っているの・・・?

違う、違う、違う、良信、違うのよ。)


お母さん、だから、あなたはホームレス達がやってきて、あなたから僕を引き剥がそうとした時に、

力を失ってしまったんですね・・・。

僕を育てる資格は無かったと、自分に言い聞かせたのですね・・・。


母親の苦しみを知ったとき、僕は母親を理解することが出来た。

とても可哀想なお母さん・・・、僕は全て受け入れるよ・・・。


すると思い出は消えて、光に包まれた。

僕を覆い尽くしていた塔は消えて、また元の場所にいた。

信じられないといった顔をした戸越は、僕に向かって言った。


「なぜ、なぜ・・・、そんなにすぐ戻ってくるんだ・・・。」

「戸越、お前のお陰で母親の苦しみが理解できたよ・・・。」

「何だって・・・?理解できた?

そんな・・・、お前を殴りつけていた母親を・・・理解できただって?バカなっ!」


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