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妄想は光の速さで。  作者: 大嶋コウジ
第13重力子 ボクハ ミンナトトモニアル
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支えられていた存在

永原の身体を乗っ取った戸越は、自らの闇を語り始める・・・。

消えたペンションの空間の中で、戸越の作ったダークマターでみんな吹き飛ばされてしまっていた。

残っていた僕と、永原と、永原の身体を乗っ取った戸越しかいなかった。


戸越は、悪意に満ちた言葉で、僕の悲しみに満ちた過去を掘り起こす。


それにしても、戸越は何故、こんなにも僕のことを知っているのか・・・。

僕の過去については話したことは無いのに・・・。


「ククク・・・・。池上君、洗足香織を覚えているかな?」

「か、香織さん・・・?か、彼女がどうしたんだ・・・。なぜ彼女を知っているんだっ?!」

「彼女の、そ・の・後だよ。」

「その後・・・?」


僕と別れた後の香織さん・・・?

戸越のその冷たい「その後」という言葉にどんな意味があるのか、僕は直感的に聞きたくないと思ってしまった・・・。


「君を助けてくれた彼女だが・・・。」

「か、香織さんについて、何を知っているというんだ・・・。」

「彼女だが、君を逃がしたことによって、医者になる道を閉ざされてしまったよ。ククク・・・。」

「!!!」


・・・何てことだ。

医者に向かう道を歩んでいた香織さんの道が閉ざされてしまった・・・?


「君のせいだぁぁぁっ!!君を逃がした後、病院の先生達から怒られ、大学に報告されたそうだよ。

その後、せっかく医学試験に合格したというのに、どこの病院も受け入れてくれなかったそうだ。

あ~あ、可哀想にねぇ・・・。ククク・・・。」

「・・・。」


僕は愕然としてしまった・・・。


「今は、コンビニでバイトしているようだね。ククク・・・、医学部は高い授業料だったろうに。

ああ、酷い、酷いねぇ・・・、そうだろう?親不孝だねぇ・・・。えぇ?」

「そ、そんな・・・。」

「君のせいだ、君が原因だよ。不幸を全て呼び集めるのは君が得意とすることだろう?」

「・・・。」

「もう少し教えてあげよう・・・。あの浮浪者達についてだ。」

「えっ・・・?」

「池上って奴は、君の親になったんだったかな・・・。

コイツは、仕事がうまくいかず、すぐに辞めちまったみたいじゃないかぁ。

Dとかいう、勉強バカは三流塾で月数万で働いていて、

Jだかいう筋肉バカも、結局仕事に就けず、浮浪者を続けているし、

Kとかいうハッカーは警察に捕まってるらしいなぁ。

あのハゲ坊主は、どこにいるんだぁ?この前の震災で死んだんじゃ無いのかぁ?」

「・・・あぁ・・・。」

「君は不幸を呼ぶ奴なんだよ。それぐらい分かれよっ!」


ホームレス達とは、分かれてから会っていなかった。

お父さんから、来るなと言われてしまっていたからだ。

だけど、一度だけみんなに会いに行ったことがあった。

そこには誰もいなかったのだ・・・。

どこに行ったかも分からず、どうにも出来ないで立ち去るしか無かった。

それでも引き続き僕はお父さんから仕送りをもらっていたから、何とか生活できていたのだ。


みんなと会いたかった。

それが、こんな事になっていたなんて・・・。


・・・だけど、だけど、だけど・・・。


「違うっ!!!」

「はぁ?」

「違うっ!違うっ!みんなどんな境遇でも、強く生きている人達なんだっ!

毎日の小さな幸せを大事にしている人達なんだっ!」

「戸越っ!一体、お前は何なんだっ!」

「戸越?戸越、戸越、戸越っ!!!あぁ、まったくっ!!先生って呼べって言ってるだろっ!!!」

「先生というのは・・・。」

「はぁん・・・?」

「先生というのは、自己犠牲の精神を持った香織さんや、あのホームレス達のような、たくましく生きている人達・・・、

そんな尊敬できる人達のことを言うんだっ!!」


「あぁ、ムカつくなぁ・・・。

つまらない、つまらない、つまらない・・・。

ブツブツ・・・。

池上君、つまらない・・・。

君は不幸を呼ぶ人間だというのに、生きてる価値なんて無いというのに・・・。」


「昔は僕もそう思っていた・・・。

だけど・・・、だけど・・・、こんな僕を多くの人が支えてくれた。

辛くたって乗り越えるための勇気や知恵をもらったんだっ!

香織さんや、ホームレスのみんながいたから、ここまでこれたんだっ!!!」


「ふん・・・。

僕はね・・・。自分が嫌いなんだよ・・・。

嫌いで嫌いで仕方が無いんだ・・・。

だって、そうじゃないか・・・。

僕は取り返しが付かないことをしてしまったじゃないか・・・。

だけど、おかしいんだ・・・。

自ら命を絶って、この絶望感から逃れようとしただけなのに・・・。

落ちていったんだ・・・。

深い、深い闇にね・・・。

地獄って世界はあるんだ・・・。

そう、あるんだよ・・・。

そこで、くそみたいな悪魔共に僕の身体は切り刻まれて、何度も何度も・・・。

僕は何十年、苦しみを味わったのか・・・。」


自ら命を絶った戸越。

それは、何時間か前のこと・・・。

戸越は何を言っている・・・?


「いや、これもおかしい・・・。

何十年も経ったはずなのに、隙を見て逃げてきてみれば、数時間しか経っていないじゃないか・・・。

ああ・・・、ああ・・・、もう嫌だ、全てが・・・。

やっと逃げて来られたと思ったのに・・・。

また奴らは僕を追いかけて来る・・・。

あぁ、奴らは一体何なんだ・・・。

一体何なんだっ!!!!

奴らは言った。

僕を操って人を殺したんだって・・・。

僕は操り人形だったってことかい・・・?

・・・もう嫌なんだよっ!!!」


戸越は自分の罪から逃げ出したいだけだった。

その罪は永遠に彼から離れない・・・。

罪そのものが悪魔と同調して、戸越を追いかけているだけだった。


「それは・・・。」

「はぁん・・・?」

「それは、お前の心が呼び寄せているんだ・・・。」

「何だって?」

「お前の自己否定の考えが、そいつらを呼び寄せているんだ・・・。」

「・・・僕が、奴らを呼んだ?」

「マイナスの思念が、マイナスの悪魔を呼び寄せただけだ・・・。昔の僕のように・・・。」

「僕の思念が・・・ね・・・。

まったく、まったく、まったくっ!!

あぁっ!!!

あんなふざけた奴らを呼んだ?

苦しい世界を・・・僕が呼び寄せた?

ふざけないでもらいたいっ!

そうか・・・、そうか、そうか、そうか・・・!!!

君も味わえば分かるっ!!ククク・・・。

池上君、君の闇をもっと思い出したまえっ!

まずは幼少期の恐怖心としよう・・・。」

「な、何を・・・!」


戸越の目は赤い色になっていた。

それは人間の目では無い。

その目は、あの悪魔達との同調を意味していた・・・。


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