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妄想は光の速さで。  作者: 大嶋コウジ
第12重力子 「アタラシイ イエ ハ ナニヲモタラシタ?」
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駅前交番日誌

太田駅前の交番に勤務する波多野の日誌

駅前交番 日誌1


大田町駅前交番 波多野


今日一人の少年が、保護施設を教えて欲しいと交番を訪ねてきた。

その場所は先月、経営破綻して潰れたばかりの施設だった。


しかし、その少年の身なりがとても不思議だったので、気になった。

ただのTシャツにジーンズなのだが、腰が少しぶかぶかのようで、ベルトをしているのだが不自然だったのだ。

私は不覚にも案内してしまったため、あとから知らせようと追いかけたわけだが、彼は妙におどおどしていて、

逃げるようにして立ち去ってしまった。


しかし、どうにも、この少年が気になる。

もしかしたら、この施設のことを聞いて、お世話になりに来たのではないだろうか。

今は別の場所に移っていることを知らせなければならなかったのに、説明が出来なかった。

もし、身寄りの無い子どもだったら、どうすれば良いのか

私は責任を感じてしまっている。

ただの気のせいなら良いのだが、同僚にも話しておいて、見つけたら何とか保護してあげなければなるまい。


-----


駅前交番 日誌2


大田町駅前交番 波多野


長い間探していた、あの少年を見つけた。

驚いた事に浮浪者達と一緒にいる。

自分の先輩に相談したが、あの場所はほっとけと言われた。

何度も説得したが、あそこは管轄外だという一言。


それでも私は納得がいかず、ある日、浮浪者に話しかけた。

だが、そんな子どもはどこにもいないと言ってはばからなかった。


確かにいるはずだから、今度こそ先輩を説得して向かうことにしたがあいつらはあいつらの生活がある。

余り首を突っ込むと奴らはあそこに住めなくなる、と言われ、私は何も出来ずにいた。


だけど、あの少年に対して、私が出来ることは無いのだろうか。


-----


駅前交番 日誌3


大田町駅前交番 波多野


ある日、あの少年が浮浪者の生活している場所から、いなくなっていることに気づいた。

日々の業務に明け暮れて、気にしなくなっていた私が悪いのだが、どうしたものかと思っていたら、

中学校に通っていることが分かり、驚きと共に、何があったのかと思った。

どうやら、一人暮らしの老人が経営しているアパートにも住んでいるようだった。


一体何があったのか分からないが、先輩が話していたように、やぶ蛇のようなことはしなくて良かったのかもしれない。


彼は、数年後の震災の際、この少年と再会することになる。


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