前夜
Zが母親に会う前夜、Hさんが優しい言葉をくれる・・・。
日曜日になるまでは憂鬱で仕方が無かった。
僕は前日の土曜日の夜、Zさんの家で、いつもの霊界講義を受けていた。
「Zさん?」
「・・・。」
「Zさん?聞いていますか?」
「・・・あっ、すいません。Hさん・・・。」
「・・・お母さんに会うのは不安ですか?」
相変わらず鋭い人だな・・・。
「・・・はい。」
「分かりますが、そんなに不安になっても仕方ありませんよ。」
「・・・だけど、とても怖いです。それに、また病院に連れて行かれてしまいそうで・・・。」
「それは、他の皆さんが守ってくれるでしょう。気にしないで下さい。」
「はい。」
「私たちは色々な事があって、こんなところに住んでいますが、大事なことは分かっているつもりです。
あなたは若い、とても若い。
これから出来ることがたくさんあるのです。
だけど、社会というのは、ある程度の基準というものを必要としています。
それは、若いときに学校に通ったと言うことも、その一つです。
学校を中退された人でも立派になった人もいますが、Zさんの場合はその最初の段階すら至っていない。
それを私たちは心配しているのです。」
「・・・。」
「私たちを信じなさい。私たちに大事な家族を思い出させてくれた、あなたのために出来るだけのことをさせて下さい。
これがあなたへの恩返しなのです。」
「恩返しだなんて・・・、それは僕の方がしなければならないのに・・・。」
「皆さんは、Zさんに感謝していますよ。とてもね。
だから、恩返しをさせてもらっているのです。
そして、社会に出たらは社会に対して恩返しして下さい。
それが回り回って私たちに返ってくるのですから。
人間社会とはそういったものですよ。」
いつもながらしんみりと話すHさん。
だけど、その説得力はいつも僕の心を動かしてくれる。
「分かりました。明日は堂々と母親に会います。」
「はい、それが良いでしょう。さぁ、今日はゆっくりと眠りなさい。」
ちょっと短め・・・。すぐ続きます。