縁結び
Zの次の恩返しは、料理をすることだった。
一緒に食事をすることが多くなった彼らが気づいたこととは・・・。
あの母親のお陰かもしれないが、僕は簡単な食事ぐらいは作ることが出来た。
中古の炊飯器も買ってきてもらって、ご飯を炊いた。
さすがにレンジは電力が足りないのか、動かなかった。
「おい、Kさん、これ壊れているんじゃね?」
「いや、中古品だけど、確かに動くはずだよ。電力が足りないのかなぁ・・・。」
Kさんは、例の電源を延長してくれたのだが、電源が足りていないようだった。
「おかしいなぁ、抵抗を付けすぎたかな。あとで直しておくよ。」
Kさんは、何とか直してくれたようで、レンジも使えるようになった。
そして、ガスボンベを使って火を使った料理も作れるようになった。
その甲斐あって、夜7時は、五人のホームレスが、集まって食事する時間になった。
「リフォームで金がかかったが、食事代が大分浮くようになったなっ!」
「Aさん、リフォームって言ったって、Zがやってくれたから、タダだったじゃないかっ!」
「ありゃ、そうかっ!リフォームじゃなくて、お風呂に行くようになったから貯金が減っちゃったのかなぁ。」
「そいや、Kさんも大分身なりが綺麗になったよなっ!」
「ええ、まぁ、Zのお陰ですね。」
「そうだ、そうだっ!Zにお礼をしないとなっ!」
こんな会話が連日繰り返される。
それを僕は楽しく聞いていた。
「いえ、僕はもうたくさんもらっていますよ。」
「はぁ、なんだ?何をもらっているんだ?」
「勉強を教えてもらっていますし、身体も鍛えてもらっています。」
「はぁっ!言うようになったなっ!確かに身体もしっかりしてきたし、俺のお陰かなっ!」
「Dさんの言うとおりですね。良かった良かった。」
「Hさんもみんなと食べるようになったし、何か家族みたいだな。」
「家族か・・・。」
「・・・。」
Aさんの家族って言葉で、みんな黙り込んでしまった。
家族を失った彼らは、僕を迎えることで、小さな家族になっていった。
彼らは、それをしみじみとと感じていた。
「Zが、みんなを結んだのかもしれないなっ!」
「あはは、そうだなっ!」
「よしっ!お前は俺らの子どもって事にしよう。」
「お、良いねっ!」
「僕が、皆さんの、こ、子どもですかっ!?」
「いや、僕はまだ結婚していませんが・・・。」
「Kさん、結婚していなかったのか。まあ、良いじゃないかっ!」
「はぁ・・・。」
「Zさんが、みんなをつないだのです。縁結びの神様ですね。それに、子は鎹って言いますからね。」
「Hさん、さすがお坊さんは言うことが違うねぇ。でも縁結びって言うと、結婚相手を見つけてくれるみたいだな。」
「あはは、次は結婚相手も見つけてくれそうだなっ!!良かったな、Kさんっ!」
「はぁ・・・。」
みんなは自分達のことを人生の落伍者って、言ってるけど、そんなこと無いと僕は思っていた。
かっこよくて、
強くて、
頭も良くって、
色々教えてくれて、
僕のことを考えてくれて・・・。
僕はこの人達をだんだん好きになっていった。
ちょっと臭いのが玉にきずだけど・・・。
「さぁ、食べて下さいっ!」
「おうよっ!」
「食べましょう、食べましょうっ!」
「いただきますっ!」
「今日のもおいしそうですねっ!」
「いただきます。」