挨拶回り J宅、K宅
次々とご近所を回るZ。
その個性はZにどんな影響を与えることになるのか・・・。
挨拶回りって緊張する・・・まずは深呼吸っと・・・。
「ふ~っ」
よしっ!
「お、おはようございます。」
Jさんは、ジャージ姿でこちらを向くと、気持ちよく挨拶してくれた。
「おはよっ!。あ~、君かっ!」
「ぜ、ゼットという・・・。」
「Zという名前になったのかっ!あぁ、Aさんらしいなっ!」
「は、はい。」
この家は他の家とは大きさは変わらないが、部屋は余り臭くなかった。
「余り匂いませんね・・・。」
「はぁっ!いっきなり失礼な事を言うなぁ。」
「あ、すいません。」
僕はどうも率直に聞いてしまうらしい・・・。
「いやぁ、私も臭いのはちょっとねぇ。Aさんの家は酷い匂いだよねっ!」
「は、はい・・・、その匂いで目が覚めました・・・。」
「ふははっ、そりゃ、大変だったっ!」
「は、はい・・・。」
何だか話しやすくて、とっても気さくな人だなぁ。
「まあ、立ち話もなんだっ!さ、朝の運動だっ!Zも来いよっ!」
「えっ!?う、運動っ!?」
僕は、いきなり運動することになってしまった・・・。
「何だぁ、全然体力が無いじゃないかっ!まだ、5Kmだぞっ!!」
「ハァ、ハァ、ゼェ、ゼェ・・・、は、はい・・・。」
「そうか、入院していたんだっけ?まあ、しばらくリハビリが必要かもなっ!この辺にしておくかっ!」
「は、はい・・・、ハァ、ハァ・・・。」
筋肉質でもないのに、ものすごい体力を持っているようだ・・・。
それにしても、Jさんは、全然、息を切らしていない・・・。
「よしっ!僕はこれからヨガをやるよっ!君もどうだい?」
「えっ!?ヨガですかっ?いや、む、無理です・・・。」
「う~ん、なんだぁ~っ!若いのに仕方ないなっ!でも明日から、一緒に運動するぞっ!この時間にここに来るようにっ!」
「えっ!?あ、あ、えぇ・・・。」
「待ってるぞっ!」
「は、はい・・・。」
返事してしまった・・・。
前言撤回・・・、運動好きで、困った人だった・・・。
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Kさんは、昨日いなかった人だ。
「あ、あの、お、おはようございます。」
「ああん?新入りか?な、なんだ、すごい若いじゃないか・・・。」
Kさんは、みすぼらしい、穴だらけの服を着ている・・・。
ひげも髪もぼうぼうに伸びていた。
「あ、あの・・・、Aさんのところに、す、住んでいる Z と申します。」
「ゼット?そうかっ!かっこいい名前だなぁ。よろしくなっ!」
「は、はい。」
またも恥ずかしい名前を口にせざるを得なかったのだが、格好いいと言ってくれて、少し嬉しかった。
Kさんも家に入れてくれたのだが、この家もかなり臭い・・・。
僕はKさんの横に置いてあるものに気づいた。
「スマートフォンですか・・・?」
「そうだよ。良いだろう?」
Kさんは驚いた事にスマートフォンを持っていて、ニュースなどを読んでいるようだった。
「いやぁ~、便利な世の中になったな。俺みたいなのがニュースを読めるんだからさ~。」
さらに横を見るとパソコンが置いてある。
「こ、これはパソコンですか?」
「そうだよ。こいつで色んなところに繋げて、業者からお金をもらってメールを代理で送付しているんだ。」
「・・・それって、スパムメールですか?」
「なっ!お、お前、よく知ってるな・・・。い、今話したことは全て忘れるんだっ!いいなっ!」
「は、はい・・・。」
し、しかし電源はどこから・・・。
「ありがとうございました。」
「あいよ。そうだ。君もパソコンに触りたかったら、明日でも良いから、おいで。」
「はいっ!」
パソコンには興味があったから、とても嬉しかった。
でも、あの臭さ・・・、Aさんの家よりも酷いかも・・・。
「それでは失礼します。」
Kさんの家から出て気づいた。
家から伸びている電源の線・・・、電車の動いている高架上に続いている・・・。
えっと、インターネット用のケーブルも・・・?
ものすごい違法現場を見たような気がした・・・。