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妄想は光の速さで。  作者: 大嶋コウジ
第12重力子 「アタラシイ イエ ハ ナニヲモタラシタ?」
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挨拶回り D宅

Zという名前で呼ばれるようになった良信は、ホームレス達の家を訪ねろとAに促される。

個性溢れるホームレス達とZとの新たな縁が生まれ始める・・・。


まずは、Dさんの家から行くことにした。


Dさんの家は、周りの家からすると家の高さが大きめだった。

"一般的な家"は座って上が若干空間が空くぐらいの高さしかない。


「お、おはようございます。」


ビニールで作られた扉の前で、恐る恐る挨拶をする。


「んん?あぁ、おはよう・・・、何だ昨日の子どもか。」


中から眠そうなDさんが現れた。


「き、昨日はどうも、ありがとうございました。

僕は、あ、あの・・・、ゼ、ゼットという、な、名前になりました・・・。」


恥ずかしい名前だなぁ・・・。


「ゼット?あはは、そうか。ゼットか。あははっ!ゼットッ!クククッ!こりゃ、傑作っ!」

「・・・。」

「ああ、すまん、すまん。笑いすぎたか。ゼット・・・ぷぷっ。」

「・・・。」


ここまで笑われるとは思わなかったので、ちょっとムスッとしてしまった。


「・・・いやぁ、すまん・・・。まぁ、そうだな。ちょっと入るか?」

「・・・はい。」


家に入ると、この家が高かった理由が分かった。

ものすごいの量の本が、四方に積み上がっている。

本棚が無いため、行き場のない本が積み上がれるだけ積み上がっていて、家の壁のようになっていた。


「あぁ、これかね。まあ、全て古本なんだけどね。

子どもには難しいかな。こんな身になってもビジネス書は欠かせられなくてね・・・、あはは・・・。」

「ビ、ビジネス書ですか?」

「そうだよ。仕事をする人達向けに書かれた本だよ。」

「へぇ~。」

「今度分かりやすくて、ためになりそうな本を貸してあげよう。」

「えっ、ビジネス書・・・、僕に、よ、読めるかな・・・。」

「な~に、大丈夫さ、ほとんどが啓蒙書だかね。」

「けいもうしょ?」

「そうだよ。何て言うか、自分を磨くための本って事かなあ。」


う~ん、よく分からない・・・。


「そうだ。君の対人恐怖症なところとか、改善の余地があるんじゃないかな?」

「えっ!?」


自分の弱点を突かれたようで、驚いてしまった。


「そんな感じで、自己の弱点を直しながら、長所も伸ばす方法なんかを啓蒙書で探すんだよ。」

「そ、そうなんですか・・・。な、何で僕が、対人恐怖症だと思ったのですか?」

「そりゃ、昨日の君を見ていればよく分かるさ。自分から積極的に話さないし、おどおどしているしね。

今日も自分からじゃなくて、Aさんに言われたから来たんだろう?」

「あ・・・、え・・・、いや・・・。」


何だか、怖い・・・、この人・・・。

でも、温かく性格を見てくれているような気もする。


「あはは、Z君、これからだよ、君は。大丈夫、大丈夫っ、これからしっかりとした目標を持って生きるんだ。」

「・・・目標ですか・・・?」

「そうさ、何か目標がなければ、不安になってしまうよ。」

「・・・えっ!?」


目標・・・?

考えたこともなかった。

僕は何を目標にすれば良いんだろう・・・。

目標があれば不安が消える・・・?

この時の僕はよく分からなかった。


「あれ、これは参考書ですか?」

「そうだ。これも仕事をしていたときの名残かな・・・、あはは。」


何故、仕事を失ったのか分からないが、名残惜しそうにするDさんだった。


「そうだっ!君の歳だと勉強が仕事だよ。これを上げようっ!」


そういって差し出したのは中学校の参考書だった。

勉強は嫌いではなかったが、しばらく見ていなかった"もの"だった。


「役に立つと嬉しいんだが。」

「ありがとうございますっ!」

「うん、そうだ。明日も来なさい。少しぐらいなら勉強を教えてあげよう。」

「はいっ!ありがとうございますっ!!」


お礼を言うと、僕は外に出て行った。

僕は参考書をもらってとても嬉しかった。

しかも勉強を教えてくれるなんてっ!

この本、ボロボロだな・・・。


"役に立つシリーズ カリスマ塾講師 大月剛が書く、珠玉の参考書!"


借りた本には、こんな帯が付いていた。

・・・あれ、も、もしかして、Dさん?


取りあえず、参考書は、Aさんの家に置いて、次の家に向かう。


ちなみに次の日、予習しないで行ったら、こっぴどく怒られた・・・。

先に言って欲しかった・・・。


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