Z(ゼット)
ホームレス達と共に住むことになった良信。
アルファベットで呼び合う彼らは、それぞれ通常の普通の生活が出来ないような境遇にいた。
彼らが良信に付けた名前とは・・・。
彼らはホームレスとはいえ、月に数回は日雇いや、アルバイトで仕事をしていた。
そのため、食事に困ることも無く暮らしている。
家はもちろん無いため、ビニールや段ボールで作った手製の建物に住んでいた。
「都会だと、すぐに立ち退きのために役所の奴ら来るんだけど、ここは田舎だし、管轄が丁度分かれている場所で、
いわゆるグレーゾーンって場所なんだ。」
だから、立ち退きを迫るような人達は誰もここには来ないらしい。
何でちゃんとした家に住まないのかと聞いたが、住居代とか電気、水道代がもったいないんだとか言っていた。
「おい、ボウズ、自分の家を作るまでは、俺んちに来いや。」
「あ、はい・・・。」
家を作るって・・・。
取りあえず、僕はAさんの"家"に住まわせてもらった。
「せ、狭い・・・。」
どころか、暗くて、そして、とても臭い・・・。
「文句言うなよっ!まあ、飯はこれしかないけど、大丈夫だろう。」
そう言って、出してきたのは、食パンだった。
「こ、これ、大丈夫でしょうか・・・。」
「な~に、今時のパンは防腐剤がたっぷり入っているから大丈夫だっ!」
「・・・。」
グゥ~ッ。
食パンの匂いでお腹がなってしまった。
「な、お腹が欲しいってよっ!」
「は、はい・・・。」
あぁ・・・。
「とてもおいしいです・・・。」
「そうかっ!わははっ!」
「おいしい・・・です・・・。」
「何だ、泣くほどおいしいのかよ。」
何だろ・・・。
確かに食パンはおいしいけど・・・。
この汚くて臭い家でも、大事な帰るための家には違いない。
そんな家が出来たことが嬉しかったのかもしれない・・・。
「まあ、未だあるから食っていいぞ。」
「・・・は、はい・・・。」
僕は涙を堪えてひたすら食パンを食べ続けた・・・。
「あっ!」
「はい・・・?」
「そうだっ!蜂蜜もあるぞっ!蜂蜜は保存に適しているんだぜっ!」
「そ、そうでしたか・・・。あ、ありがとうございます。」
「何だ、やっと笑ったなっ!」
「あはは・・・、そうですか・・・。」
「そうだよっ!これから、ヨロシクなっ!」
「は、はい。」
こんな感じで、僕の脱出一日目は終わった。
だけど、これからどうしたら・・・。
そんな不安が頭をよぎる・・・。
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次の日、家の臭さで目が覚める・・・。
「・・・臭い・・・。」
「起きたか。」
「お、おはようございます。」
「おい、お前・・・。そいえば、名前は何て言うんだ・・・、あ、いいや。お前は子どもだから、Zってことにする。」
「ぜ、ゼット?」
「そうだ、Z だ。」
「はぁ~。」
もう訳が分からない・・・。
「おい、Z、最初が肝心だ。近所の奴らに挨拶しに行けよ。」
「あ、挨拶ですか?」
「そうだよ。えっと、場所は、こことあそこと・・・。」
仕方なく、"ご近所"の場所を教えてもらい、僕は、挨拶して回ることにした。
「き、緊張する・・・。」
本章、ちょっと短めです。