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妄想は光の速さで。  作者: 大嶋コウジ
第11重力子 「コドクナソラヘノタビダチ」
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ダークマター

愛那を信じることが出来た永原だったが、彼の周りには暗闇がいつの間にか立ちこめていた・・・。

永原は、愛那を信じることが出来た。

二人が抱き合う姿を見ていた僕らは、優しい気持ちになっていた。


しかし・・・、何だろう・・・、僕は、何か恐ろしい予感がした。

そして急に寒気に襲われ、身震いした・・・。


「だ、駄目じゃないか、永原君・・・。何で良心に目覚めちゃったりするのさ・・・。

僕に散々、酷いことを言ったのに・・・。ブツブツ・・・。」


この声は・・・、戸越っ!

戸越の声は、永原の口を通して聞こえていた・・・。


「と、戸越、お、お前・・・。くっ、身体が動かない・・・。」


「絶望しきったお前なら操りやすかったが、愛那が原因で良心が芽生えやがってっ!!!

愛那ぁぁぁぁっ!お前、散々と邪魔をしやがったなぁぁぁぁ!」


べ、別の声・・・?

その新しい声は、どす黒く、全てを否定するような声だった。

僕には、永原の周りに、戸越の姿と、複数の人間の顔が見えていた・・・。

い、いや、あれは人間じゃない。

それは例えるなら・・・、まさに悪魔としか、言いようがない。

黒い顔に羊の顔つき、そして、丸く曲がった角・・・。

目が赤く鼻が酷く曲がった魔女のようなものもいる・・・。

血のような顔に鬼のような角が生えているものもいる・・・。


「愛那ぁ、自殺まで追い込んだのに、早々に戻ってきやがって、あげく、俺達の邪魔をするとはっ!」

「永原くぅ~ん、もう少し俺の操り人形になれってよぉ~。」

「役立たずのくそ人間がっ!」

「善人面すんじゃねぇっ!」


悪魔達は、罵詈雑言を言いまくっている・・・。

愛那は毅然とした態度で自分の兄を励ました。


「お、お兄ちゃんっ!!駄目よっ!負けちゃ駄目っ!」

「だ、だが・・・、あ、愛那・・・、に、逃げ・・・ろ・・・。」

「いやっ!私はお兄ちゃんを助けるのっ!!!」


戸越と悪魔達は、永原の身体を操っている。

永原がもがいているのが分かるが、うまく身体を動かすことが出来ない。

僕の力では永原の身体を傷つけてしまう・・・、どうすれば・・・。


「永原君、君の身体・・・、そうか、すでに君も、ヘッドギアの生け贄になっていたんだね。

どおりで操りやすいはずだ。いつ身体を失っていたんだい?・・・まぁ、どうでも良いことか。」

「戸越、止めろ・・・。」

「そう、それ・・・。年上の人を呼び捨てにするのが・・・、すごく・・・、すごくねぇ・・・、ムカつくんだよっ!!!」


<<DARK MATTER!!!>>


永原を通して発せられたヘッドギアの力によって、辺り一面暗黒に染まる。


「・・・!」

「とっきょ、ユウ、み、みんな・・・?」


みんなが闇に包まれて、遠くに消えて行ってしまう・・・。


「やだやだやだ~~~っ!」

「み、見えない壁があって、ここにいられない・・・。い、池上君、気をつけ・・・」

「なんだいこれは・・・く・・・」

「消えちゃうよぉ~、お兄ちゃ・・・」

「い、池上さん、池上さ・・・」


永原を中心にして、広がった闇は、徐々に消えていく。

そして、僕と永原だけしかいなかった。


「み、みんな消えてしまった・・・?ど、どこに・・・?」

「さぁね。みんな、どこに行ったのやら。ブツブツ・・・。」

「と、戸越っ!お前は飛ばされなかったのか。一体、何をしたんだ・・・。」

「悪魔達も邪魔でしょうがなかった。やっぱり、この物質は霊体に影響があると思ったんだ。

存在は証明できても、造ることの出来ない暗黒の物質、ダークマターってやつさ。知っているだろう?」

「ダッ、ダークマター・・・。」

「ダークマターは、僕の仮説だけど、霊体と霊体達が作る空間をまとる事が出来る"膜"みたいな

ものなんじゃないかと考えたんだよ。数百億もある銀河系が分散されないようにしていて、さら

に太陽系のような空間もまとめる。そして、惑星にある霊界もまとめている物体ということ。

だから、霊体である彼らと波長の合わないダークマターであれば、ここにいられなくなる。

うん、仮説通りだった。ヘッドギアはすごいね、そうだろ?池上君。」

「お、お前・・・。」

「このダークマターが宇宙中に張り巡らされているということは、我々のような知的生命体が、

この宇宙空間に数え切れないぐらい存在するってことだよ。あぁ、ロマン溢れるじゃないか。」


「戸越、お前がみんなを吹き飛ばしてどうするつもりなんだっ!」

「・・・君もそう・・・。」

「・・・?」

「君も・・・、君も私のことを呼び捨てにするのがねぇ・・・、許せないんだよっ!!!」


「か、身体から、出ろ・・・よ・・・。」

「永原君は飛ばなかったようだね・・・。仕方ないか、うっすらとつながっているとはいえ、身体があったから。」

「く、くそ・・・。」

「大体、君では池上君を殺すこと何て出来やしなかったのさ。僕みたいに"実績"がないからね・・・。ククク・・・。」

「い、池上何とかしろよ・・・。」

「そうそう、池上君、君についてだが、あの悪魔達の立ち振る舞いで若い頃は苦労したみたいだね。」

「・・・。」

「気づいていなかったのかい?」

「・・・気づいていたよ。だけど、僕ではどうしようもなかった・・・。」

「まあ、子どもでは、何も出来ないものね。」

「思い出したくない・・・、止めてくれ・・・。」

「君は幼少時に親から酷く虐待を受けていた。そうだね?」

「・・・。」

「止めろ・・・。」

「君は、それが原因で、解離性同一性障害になってしまったね。」

「や、止めろ・・・。」

「解離性同一性障害とは良い名前だ。クククッ、昔の私だったら、ただの精神疾患だと思っただろう。

だが、死んでみて分かったよ。」

「・・・。」

「この世界にいる人間が分かりやすいように名前を付けた病気だ。実態は、そうさ。憑依さ。死んだ霊達のね。」

「・・・・。」

「死んだ霊が多数取り憑いて、入れ替わり、立ち替わりで、話しをする。これはまさに多重人格症状じゃないか。

笑えるよ。これは、君には何体付いていたんだい?ククク・・・・。」

「そ、そんなの・・・分からない・・・。」

「本体である魂が周りから精神的な攻撃を受けて、耐えられなくなり、内側にこもる。そして、その身体を他の霊達が使う。

実に分かりやすい。だけど、魂を証明できない精神学者達は、本人が知らないようなことを話す"人達"から目をそらして、

本人が人物を作り上げたとする。もう少し魂って奴を勉強する必要があるね。科学者達は。私もかつてはそうだったから、

同じようなものかもしれないがね。」

「・・・。」

「君は元々、憑依体質って言えば良いのかな、とにかく憑かれやすいってことだ。簡単に精神崩壊しちゃったみたいじゃ

ないか。」

「・・・はぁ、はぁ・・・。」

「しかし、どうやって他の霊体を追い出したのやら。それに、どうやって大学まで入ったのか。君は大したもんだよ。」


ぼ、僕は意識を失いそうになった。

断片的な記憶から、恐ろしさに震えた過去を思い出した・・・。


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