シルバーコード
師匠と愛那は、池上や永原を見守ることを決意する。
そして、永原が作り出したヘッドギアに二人が想定していない機能があることに気づく。
この想定外の機能に対して、二人が取った行動とは・・・。
そして、お兄ちゃんは、人類の生活を変えるような素晴らしい道具を発明しました。
やっぱり、お兄ちゃんは、すごいっ!かっこいいっ!
だけど・・・、それは暴走の始まりでもあるということを意味していました・・・。
驚いたことに、この発明品は、私たちが想定していた以上の機能を持っていました。
それは、生物を創造できるという機能。
最初は携帯電話とネズミが合体したような生物でした。
これは小さな動物でしたが、今後、どのような生物が生まれるか私たちも想定できず、師匠に相談しました。
「師匠・・・。お兄ちゃんの発明品は生物を生み出すが出来るみたいです。」
「えっ?!そんなこと出来るわけ無い・・・。」
「でも、携帯電話とネズミが合体した生物が生み出されていました。」
「そ、そんな・・・。」
「どうしたら良いのでしょうか。何でも出来てしまうあの道具を使えば、文明を破壊することも出来ますが、生物を生み出す事が出来るとなると・・・、何が起こるか想像も出来ません・・・。」
「う~ん・・・。何か危険な匂いがするねぇ・・・。」
そして、お兄ちゃんと戸越さんは、人間を作ることを目的にし始めたのも、これに拍車をかけました。
実際に人間が出来るかどうかも分からない上に、生み出された生物が何をするのか、誰も想定が出来ませんでした。
だから、私は、生み出される生物に人間のような知的な魂を宿らせることが出来れば、ある程度制御された生物、つまり"正常な人間"になるのではないかと考えました。
これは、お兄ちゃん達の望みでもありました。
ただし、正直なところ、人間の魂を宿らせた結果もどうなるかは分かりません。
それに、これは転生輪廻のシステムから逸脱した行為・・・。
「何が生まれるか分からない状態だから、人間の魂の方が良いということかぁ。う~ん。」
「はい、知的な魂の方が、欲望に流されて、暴力や、破壊行為に及ばないと思います。」
「でも、これは、どうなんだろうねぇ。私たちだけじゃ決められないわぁ・・・。」
そして、私たちの考えを相談すべく、かなり上の神様にお会いすることにしました。
その方達は、私たちの住んでいる場所より遙か上空にいる方々でした。
神様達は私では見ることが出来ないぐらい眩しくて、私は何もしゃべれず、黙っているしかありませんでした。
そのため、師匠が代わりに説明して下さいました。
「そ、それでですね・・・。知的な魂に宿ってもらって・・・」
それぐらいの威光を持っている方達でした。
その言葉は、声を発しているのではなく、威光で伝えてくださる感じでした。
「は、はい。ですから、転生輪廻のシステムから逸脱してしまうので、ご了承頂ければと・・・。」
もう二度と会えないかもしれないぐらい貴重な時間でした。
そして、ご検討いただいた結果、神様達は私たちの案をご承認して下さいました。
ただし、この事は決して他人に広めてはならないということ、私と師匠以外の人間は、この件に関わらせないことの二つが条件になりました。
ご承認頂いた際、シルバーコードを無制限に取り出せる"シルバーコードの筒"と呼ばれる道具を授けて頂きました。
魂と肉体を結びつけるヒモであるシルバーコード、そのシルバーコードを無限に取り出すことの出来る筒です。
取り出したシルバーコードを魂と肉体に結びつけることが出来れば、ちゃんとした人間に出来るはずです。
「いやぁ、すごい人達だったねぇ。日本の創世に関わった人達だったから。
ただ、あの人達でさえ、この件は決められなかったみたいだね。もっと上の人に相談していたわ。」
「そ、そうだったのですか・・・。私には全然何を話しているのか分かりませんでした。」
「まぁ、そりゃそうだろう。私もよく見えなかったし・・・。それにしても久々に緊張したわぁ・・・。」
「ありがとうございました。この道具で何とかなりそうですね。
「この道具も、すごいわぁ、人類創世で使われた道具かもしれない・・・。慎重に使わないとね。」
「えぇ、そんな貴重な道具なんですか。」
「うん、こいつをヘッドギアなるものにくっつけ、反対側を人間の魂に結びつければ、旨く人間が生まれるはず。」
「なるほど。」
「後は、誰にするかなんだよねぇ。何体生まれるか分からないから、候補を何人か用意しておかないとまずいね。」
「はい、すでに何人か決めていますので、ご相談させて下さい。」
「あいよ。うん、とてもイイネッ!」
「はい。予め調べておきました。」
「違うよ。」
「はい?」
「相談するところがさ。」
「???」
「一人で思い悩まないようになったってことさ。」
「は、はいっ!もう一人で悩まないようにしました。」
「イイネっ!」
師匠は優しく微笑んで、そして頭を撫でて下さいました。