師匠
愛那が自殺した後、しばらく苦しみを何度も繰り返すことになる。
そんな時、師匠と呼ばれる女性が、愛那を訪れる・・・。
私は、自殺した当初、混乱状態だった。
「く、苦しい・・・。いや、いや、いや・・・。こ、怖い、怖いの・・・。周りのみんなが・・・。
もう生きているの嫌・・・。お兄ちゃん・・・、私・・・、私・・・。
変だわ・・・。私首を吊ったのに・・・?何で生きているの・・・?
も、もう一度」
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死んだことも分からず、苦しみ、絶望を繰り返し・・・
「く、苦しい・・・。いや、いや、いや・・・。こ、怖い、怖いの・・・。周りのみんなが・・・。
もう生きているの嫌・・・。お兄ちゃん・・・、私・・・、私・・・。
変だわ・・・。私首を吊ったのに・・・?何で生きているの・・・?
も、もう一度」
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・・・何度も、何度も、同じことを繰り返していた。
「く、苦しい・・・。いや、いや、いや・・・。こ、怖い、怖いの・・・。周りのみんなが・・・。
もう生きているの嫌・・・。お兄ちゃん・・・、私・・・、私・・・。
変だわ・・・。私首を吊ったのに・・・?何で生きているの・・・?
も、もう一度」
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だけど、そんな愚かな私を師匠が助けてくれた。
「く、苦しい・・・。いや、いや、いや・・・。こ、怖い、怖いの・・・。周りのみんなが・・・。
もう生きているの嫌・・・。お兄ちゃん・・・、私・・・、私・・・。
変だわ・・・。私首を吊ったのに・・・?何で生きているの・・・?
も、もう一度」
「たぁ~っ!もう止め~っ!」
「・・・えっ?」
私の部屋に誰かいる・・・?
誰なの・・・?
まぶしすぎてよく見えない・・・。
「愛那、何でそんなに苦しむのさ・・・。」
「だって、私、怖いの・・・。みんな友達だと思っていたのに・・・。」
「分かった、分かった。でも、もう苦しむ必要なんて無いんだって。」
「な、何で?で、でも、怖い、怖い・・・。怖いの・・・。逃げたい、私は逃げたい・・・。だから、こうやって首を吊って・・・。」
あ、あれ、少し見えてきた。
白い巫女の服を着た髪の短い、女の人。
とても綺麗・・・。
「そんなに苦しむこと無いんだよ・・・。それに、もう死んじゃってるよ・・・。」
「そ、そんなこと・・・。だって私ここにいます・・・。死んだら消えちゃうと思います・・・。」
「消えたりしないんだよ。身体は・・・、肉体は、無いけどね。」
「で、でも、手だってあるし、心臓だって動いています。」
「それは、魂が肉体と同じ構造だからだよ。もう、止めな、何度も死んで苦しむようなことは。」
「えっ?何度も?」
「そう、何度も何度も1ヶ月ぐらい同じ事をやってるの。」
「1ヶ月間も?そんな・・・変だわ・・・、あれ・・・。」
「怖さから逃げようとしても無理だよ。魂は永遠なんだから。苦しいまんまが、永遠に続くだけだよ。少し落ち着きな。」
「わ、私・・・。」
この綺麗な人は、一体誰なの?
「あ、あなたは・・・?」
「私は、あんたの師匠だよ。」
「し、師匠?」
「そうそう。忘れているだろうけどね。
もうね、自分の仕事を忘れて、死んじゃうなんて・・・。
まあ、辛かったよね。それは分かるんだけど・・・。
大事な命を捨てちゃうなんて・・・。」
そういうと、師匠と呼ぶ人は私を優しく抱いてくれた。
「大丈夫、大丈夫。」
「あ、あぁぁ・・・。うぅぅ・・・、うぅぅ・・・。」
「良いんだよ。偉いね。辛かったね。頑張ったね・・・。」
「うぅぅ・・・。ぐすっ、ぐすっ・・・。」
師匠と言う女性は私の頭をゆっくりとなでてくれた。
「あ、ありがとうございます・・・。で、でも・・・、わ、私の仕事って何ですか・・・?」
私は頭を上げると、さっきの言葉を聞いていた。
「あんたは、自分の兄貴の暴走を止める予定だったんだよ。」
「お、お兄ちゃんの、ぼ、暴走?」
「そうそう、暴走するのはもっと先なんだけどね・・・。
う~ん、なんだか、お前が自殺したことで、早くなってしまったかもねぇ・・・。」
「そ、そんな、お兄ちゃんが暴走だなんて・・・、で、でも、どんな事をしてしまうのですか?」
「いやぁ~、暴走するかもって、ことで具体的には分からないんだよねぇ。」
「???」
「何かやらかす可能性が高いってだけだから。あんたがうまく立ち回ってくれれば、何も悪さしないかもだったんだけど・・・。」
「わ、私は、お兄ちゃんを見守る役目があったという事・・・。」
「そうそう。さっすが、賢いね。」
「・・・お、お兄ちゃんが・・・。」
お兄ちゃんは何をしてしまうというのか・・・。
「ちょっとブラコン気味だったのは、あんたが潜在意識で仕事を忘れていなかったからってこと。」
「ブ、ブラコンって・・・。何てこと言うんですかっ!」
「あぁ、ごめん、ごめん。色々と計画が変わってしまったけど、さっ、一緒に帰ろう。」
「帰るってどこに?」
「決まってるだよ。天国さ。本当だったら自殺したら、すぐに帰れないんだよ。まったく・・・。」
「て、天国?」
私は天国に帰るの?
本当にあるのね・・・。
「別口であんたの兄貴を止める人も生まれているから、そっちを助けながら何とかするしかないかなぁ・・・。
でも、あっちは、あっちで問題あるからなぁ・・・。」
「えっ?」
「まあ、こっちの話。行こっ。」
「は、はい・・・。」