愛那
巫女の姿をした少女。
池上は彼女と一緒に不思議な少女達を導いたことを思い出す・・・。
白い巫女のような服を着た綺麗な女性が、倒れている僕の目の前に立っている。
少し眩しい・・・。
この子は・・・?
そして、彼女は、懇願するように僕に話してきた。
「少しお話しさせて・・・。」
僕は身体が勝手に動いて、彼女から受けた光を永原に向けていた。
「お兄ちゃん・・・。」
「お、お前は・・・?」
「・・・愛那だよ。」
「あ、愛那?!愛那だと・・?お、お前は小さいときに死んだはず・・・。それに・・・大きくなって・・・。」
「お兄ちゃんを助けたかったの・・・。もう止めてお兄ちゃんっ!そんな計画ダメだよっ!!」
永原は愕然としていた。
「何でだ・・・、何でだ・・・、何で・・・いるんだ・・・。」
「私は死んじゃったけど、池上さんの力をちょっと借りて存在しているだけ・・・。
お兄ちゃん、こんな計画、もう止めて、ね?」
「存在してる・・・?そんなこと・・・信じられるか・・・よ・・・。」
「お兄ちゃん・・・。信じて・・・。お願い・・・。」
愛那という女の子の澄み切った声は、静かにそして確実に永原に届いていたように思われた。
「そうか・・・、イマージュか・・・。池上、お前なら出来るよなぁっ!?」
「イマージュじゃない。彼女は存在している・・・。その目で見てるだろ?」
「そんなこと・・・信じられるかっ!!!」
「お兄ちゃん・・・。信じて・・・。お願い・・・。」
アイナは、愛那という名前。
永原の妹。
あれ、だけど、僕は何故、愛那を知っているんだ?
その優しい光と共に、僕は愛那と不思議な女の子たちとの会話を思い出した。
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第1重力子
(初めまして池上さん。)
「き、君は?」
(アイナと申します。)
「君は・・・その・・・光の強い子だね。とてもまぶしいよ。」
(自分で言うのは何ですが、女神への修行をしている者です。お力添えをいたします。)
「えっ?助けてくれるのかい?何故・・・?」
(少し事情があって・・・。後でお話しします。さあ、彼女を導きましょう。)
「導くって、どうやって?それに彼女は殺人犯だ。」
(いいえ、彼女は殺人犯ではありません。)
「何故分かるんだい?」
(ごめんなさい。余り多くのことを教えることは出来なくて・・・。それにご一緒できる時間は余りないのです。)
「うん、分かった。どうすれば良いの?」
(まだ池上さんの光は弱いわ・・・。私の光を貸してあげます。彼女に向けて下さい。)
(こんにちは、時子さん。)
「えっ??誰?あなた?」
(私の名前はアイナ。さあ、天に帰りましょう。)
「やだっ、やだやだやだぁ~っ!消えちゃうのやだ~っ!」
(消えるのではなくて、安らぎのある元の世界に帰るだけです。消えたりはしませんよ。)
「えっ?そうなの。う~ん・・・。」
(大丈夫、私と池上さんが導いてあげます。)
「ふにゃ、あれ、すごい落ち着くなあ。」
(もっとも潜在意識の池上さんだから、本人は覚えていないかもしれません。ふふっ。)
第2重力子
(池上さんっ!)
「ま、また、君か・・・。)
(はい、アイナですっ!)
「あはは。ちょっとピンチなんだ。」
(ええ、分かっています。またお助けしますっ!一緒に導きましょう!)
「うん、そうだね。ありがとう。」
僕はまた光をユウという女性に向けた。
「な、何?光?あ、暖かい・・・。」
(ユウさん、天に帰りましょう。とっきょさんもそこにいますよ。)
「えっ?そうなの?」
(はいっ!本当はみんな一人なんかじゃありません。寂しくないのですよ。)
「・・・。」
(泣かないでください。さあ、帰りましょう。)
「うん・・・。ありがとう。」
彼女の姿が薄くなっているのが分かる。
「えっ??何を・・・先生、止めてくださいっ!!いや、駄目です!!!私を操らないでっ!!!」
「何を言っている? あっ!」
(池上さん、駄目です。ユウさんが、操られてしまっています・・・。)
第3重力子
「ハァ・・・。ハァ・・・。」
(池上君、怒り過ぎちゃ駄目よ。波長が合わなくて協力できなくなっちゃう・・・。)
「そ、そうだね。すまない。」
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(シャーレさん、あなたは本当に悪い人なのかしら。)
「私は悪くないわ。ただ、また生きたいだけよ。大体誰よ、あなた。」
(私はアイナ。女神の修行をしている者です。)
「女神?ふふふっ、そんな人いるわけがない。あの時だって神様は助けてくれなかった。」
(いいえ、シャーレさん、いえ、パンさん、あなたの声は聞こえていました。だから、この時代、肉体を持つことが出来たのです。)
「そ、そんな・・・。バカな・・・。そ、それに私の名前まで知って・・・。」
(お分かりですよね。戸越さんと縁がありましたよね。)
「・・・そうよ。」
(生まれ変わりのシステムの例外措置となりましたが、恨む心を捨てる良い機会だったのです。)
「・・・。」
(もうお許しになって下さい。)
「ふふふっ、私が実験材料にされちゃったみたい・・・。」
シャーレは泣いていた。
「バカね、私は・・・。何百年も恨んでしまって・・・。良いわ。フローラ、許すわ・・・。とても弱い子・・・。」
彼女は消えてしまった。
「ありがとう。」
(ううん。またね。池上さん。)
「シャーレ・・・。」
第4重力子
(池上さん、彼女を助けましょう。)
「うん。とても辛そうだ・・・。」
光を彼女に向けた。
(まいちゃん、さあ、優しい世界に帰りましょう。)
「あう~っ?」
(もっと元気になれますよ。)
「やまいは、元気だもん。」
(ふふっ、大丈夫ですよ。不安にならないでください。)
「ゴホッ、ゴホッ。」
(さあ、手を。)
「えっ?あれ、あったかい・・・お兄ちゃんの背中みたい・・・。」
そう言うと、やまいは光に包まれていった。
徐々に消えていく。
「あう~っ、もうちょっと遊びたかったかなぁ。」
(お空で私と遊びましょう。)
「うん、分かった~。お姉ちゃん。バイバイ。お兄ちゃんっ!遊んでくれてありがとう!」
「うん、バイバイッ!」
「バイバ~イッ!」
第5重力子
(も~~っ、何をしているのっ?)
「あぁ、またピンチなんだ・・・。」
「あれ、ど、どなた?(きゃ~~っ!!誰か他の女の人が一緒にいるじゃないっ!!何てこと・・・。シクシク・・・。)」
(解いてあげます・・・。もうっ!)
「あ、解けた・・・。あれ、怒ってるの?」
ミイラ状態が解かれた・・・。
良かった。
僕は光を彼女に向けた。
(さぁ、天国に帰りましょう。)
「は、はい・・・。シクシク・・・。」
(そんなに泣かないで。また会えますから。)
「いっぱいお話ししたかったの・・・。」
(はい、後でお話しできるように調整しますよ。)
「えっ!本当ですかっ!ありがとうございますっ!」
(はいっ!)
「池上さん、ご、ごめんなさい・・・。」
「ごめんなさい?」
「池上さんを試すよう命令されておりました。先生方は実験されていたのです。これからお気を付けくださいませ・・・。」
「僕を試していた・・・。データを集めていた・・・?」
「・・・はい。」
「・・・。」
「でも、今世もお会いできて・・・嬉しかった・・・にゃん。」
「えっ!?」
涙を流しながら笑っている。
どこかで見たことがあるような気がした・・・。
とても懐かしい。
「お・・・お元気で・・・。」
「あっ・・・!」
「・・・にゃ・・・ん。」
(池上さん、もてるのねっ!プンプン!)
「???」
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「愛那、そうか。今まで助けてくれていたんだね。ありがとう。」
「いいえ、思い出せました?忘れんぼさんなんだもの。ふふふっ。」
「ご、ごめん。」
「ごめんなさい。冗談です。あなたの潜在意識と話していたから覚えていないと思います。表面意識のあなたは、自然に身体が動いていました。」
「う、うん。確かに、光に包まれた後は、良く覚えていなかったかも・・・。な、永原は!?」
下を向きながら、永原は何を独り言を話している。
「愛那・・・、愛那・・・。何で・・・、何で・・・、ここにいる・・・。嘘だろ・・・。
無力だった俺をバカにするために戻ってきたというのか・・・。
恨み、怒りでもぶつけにきたというのか・・・。」
最後のところ、少し追加しました。