イマジュニア コスモピア プラン
永原は、ヘッドギアを開発した後、この研究結果の方向性を模索し始めていた。
彼が見つけた一つの結論とは・・・。
ヘッドギア開発が完了してからしばらくして、この研究の方向を考え始めていた。
研究結果が研究者の思いもよらぬ方向に進んだ例は、いくらでもあるからだ。
最初は論文発表を考えた。
論文を発表して情報をオープン化するのだ。
この場合、研究が世界各国で始まるのは間違いなかった。
目的は、自国の繁栄、防衛、そして、他国侵略・・・。
そんな動物の縄張り争いのように、他国の利益をむさぼり始める。
自分達が楽に生きようとする本能のままに。
各国の研究機関は、他国よりも先にヘッドギアを作る方法を研究し始める。
ヘッドギアを作れたら、ミサイルを創造して他国に打ち込む。
打ち返されたら、防衛するようにミサイルを作れば良いし、巨大な壁を作っても良い。
スパイ行為や、ハッキングなんてする必要は無い。
この縄張り争いで恐ろしいのは、ヘッドギアがテロリストに渡った場合だ。
収拾の付かない小さな戦争が各地で起こり、誰もが恐怖におののく世界になる。
その結果、勝てば潤うのかもしれないが、負けた方は、貧困、悲しみ、恨みに、怒り、苦しみ、虐待、自由と平等は奪われる。
さらに、ヘッドギアを"持つ者"と、"持たぬ者"との隔たりも考えられる。
貧富の差どころじゃない、一部の持つ者が、持たぬ者を虐げ、奴隷のように扱う。
ホロコーストなんてレベルじゃないだろう。
良い人間もいるかもしれないが、このヘッドギアで狂うことだってあり得る。
どんなに優秀でもお金や権力を持ってしまったため、暴君になる場合だってある。
これが、オープン化した結果だ。
俺は自分の研究を疑問視せざるを得なくなっていた。
こんな闇しか見えてこない研究に意味があるのだろうか。
俺は・・・、俺は・・・、本当に素晴らしい研究をしているのだろうか?
人類が明るい未来を迎えるような研究をしているのだろうか?
これではただのマッドサイエンティストではないのか?
何のために生きて、何のために勉強して、何のために努力してきたのか。
かつて、俺はお前を守れなかったように何も出来ないのだろうか・・・。
俺は戦争と差別を繰り返す愚かな人類に対して、イラついてきたのかもしれない。
戦争して、平和を勝ち取っても、また戦争してしまう。
たとえ、平和が続いたとしても、落ちぶれた人間があふれ出す。
いっそう・・・、そうだ、いっそう・・・、こんな愚かな人類は消してしまいたい・・・。
ああ・・・、ああ・・・、そうだ、そうだ・・・、俺は・・・、俺は・・・、生命を作り出す事が出来るじゃないか・・・。
人類を消してしまって、新たにを俺が人類を作れば良いじゃないか・・・。
そう・・・、つまり・・・、俺が・・・、新たな創造主になれば良いじゃないか・・・。
これは、何てシンプルで素晴らしい考えなのだろか。
叡智を持つ俺なら素晴らしい人類史を作れるに違いない。
俺自身は身体を入れ替えて永遠に生きれば良い。
永遠に生きる創造主の元で、永遠に秩序を保つ人類。
もう汚れた歴史なんて生まれるわけが無い。
そう考えると心が躍ると共に、全てが落ち着いて考えられた。
大量に人類を減らす方法は簡単だ。
恐竜が絶滅した方法をとれば良い。
もしくは、ウイルスを世界中にばらまくというのも良いかもしれない。
全滅させる前に、俺はイマージュを大量に創造する。
そして、宇宙ステーションを生み出して、そこに住むわけだ。
月に住めるようにしても良いし、火星をテラフォーミングしても良い。
俺の思い通りに動くイマージュ達の世界。
俺そのものが「法」になる。
これはそう、新しいユートピアなんだ。
だが、俺が生み出すのは、ユートピア(どこにもしない場所)では無い。
確実に生み出す事の出来る"存在する場所"なのだ。
俺と新しい人類であるイマージュ達は、地球を離れて、宇宙空間で生活する。
そこは新しい場所となる。
俺は、この計画を「イマジュニア コスモピア プラン(ICP)」と名付けた。