VII. 生み出された人間についての考察:イマージュ
戸越と一緒に何体か創造してみたが、不思議なことに、この生み出した生命体は完成された人間であった。
矛盾なくきれいな人間が創造されている。
合成物と同じ現象ということか。
一体何が基準となって、正確なものを生み出すのか・・・。
これも理解出来なかった。
思考には矛盾もあり、混乱もする。
だが、こいつらは、混乱もなく矛盾もない。
なぜホラー映画のような変な生命体が出来ないのか不思議だった。
ただし、媒介物が必要という不明点・・・。
何かを見ながら、人間をイメージする必要があったのだ。
いずれにしても、生命体を作るには"媒介物"が必要であり、自分自身の思考、ここでは記憶になるのかもしれないが、が必要なる。
ただし、この記憶通りの生命体が出来る訳じゃ無い。
これも不可思議な現象だった。
媒体物は、無機質なものじゃないと生み出すことが出来ない。
つまり、動物や人間を媒介にして、別の生命体を作ることは出来ないということだ。
まあ、人間と動物、人間同士が合成された生命体など想像もしたくないが・・・。
今のところ媒介物で成功したものは以下の3つ。
・携帯電話
・目覚まし時計
・天気図
実験していないだけで、他に試そうと思えば何でも出来るだろう。
媒介物と生命体の合成生物。
これはキメラと呼ぶのかもしれない。
いやいや、キメラとはもっと不気味な生命体だが、こいつらは生きた人間だ。
俺はこいつらを"イマージュ"と呼んだ。
"創造主"がイメージして作りし生命体らしい、良い名前じゃないか。
無からは何も想像できない上に、合成の原理がいまいち分からないから、"欠けた神"ということかもしれないが。
イマージュたちは、生意気にも話したり、感情を持ったり、飯まで食べる。
本当に生きている人間そのものだ。
ただ俺はイマージュと会うのはやめておいた。
刷り込みで、自分を親と思われるのも嫌だし、面倒を見るのも嫌だった。