VI. 応用2:人間の誕生
戸越から、人間を考えたら"創造"できるのではないかと、提案があった。
ばからしいとも思ったが、合成ネズミが出来るぐらいだから、出来るのではないかと思った。
実験場所は、戸越の親が持っているというペンションで行った。
確かに大学では人が多すぎる。
何が生まれるか分からない状況では、それがベストだということらしい。
臆病だとは思ったが、慎重な戸越らしい。
実験は、ペンションの地下で始めた。
机上に加速器を置き、
まずは、戸越が光速思考をしながら、生命をイメージする。
だが、うまくいかない。
「あれ、うまくいかないね。」
単純な"イメージ"だけでは、生まれない。
俺は、媒体物を提案した。
「媒体物かい?」
「携帯電話の化け物の生まれた時みたいに、何かを仲介するのが良いんじゃないか?」
俺は目覚まし時計を見ながら、雪ヶ谷が話していた怪談を思い出してみた。
すると、思惑通り目覚まし時計が、異常なほど輝きだした。
すると人間が生み出された。
こいつは、携帯電話ネズミと同じように、合成生物であった。
頭に目覚まし時計のベルがあり、ご丁寧に長針と短針までそこにあった。
ただ、ベルは頭から少し離れて浮いている。
外そうと思ったが、移動させると、少し離れるが、頭が後からくっついてきて外れない。
長針と短針は、地面に落ちたままだったが、こいつも同様でどうやら胴体の真ん中あたりとくっついているような状態だった。
「おおっ!永原君、すごい、すごいよっ!だ、だが、は、裸だ・・・。」