III. 思考遊び
そもそも、重力は、宇宙を司る4つの力の内、相互作用因子が見つかっていない。
宇宙を司る4つの力、弱い力、強い力、電磁気力、重力。
弱い力は、陽子と中性子を結びつけて、原子核を作る力。
強い力は、中性子のβ崩壊を引き起こす力。
電磁気力は、電気や磁石を生み出す力。
重力は、質量をもったもの同士が結びつく力。
重力以外の力をそれぞれの相互作用因子をまとめるとこうだ。
弱い力は、ウィークボソン
強い力は、グルーオン
電磁気力は、フォトン(光子)
重力は、グラヴィトン(重力子)
重力子以外は、相互作用因子が見つかっている。
現在の科学では、重力について、あくまで、そういう因子(重力子)、があると予測しているだけだ。
そして、他の3つの力は、とてつもなく強力な力だというのに、重力だけはとても弱い。
飛び上がれば誰だって、一瞬だけなら浮き上がることができる。
つまり、ほんの少しだけだが誰でも重力に逆らうことができる。
また、重力子は電荷を帯びていない点でも不明な因子だし、
理論という意味では、重力だけは他の力と統一させる理論が確立していない。
重力はこの宇宙では、惑星、太陽系、銀河系、ブラックホールと、強力に働いている。
そして、重力レンズのように光すら屈折させること出来るのに、よく分かっていないとも言える。
俺は重力子は、他の3つの力から"余った力"だと考えていた。
その"余った力"が生まれる方法が分からないから観測できないのだと考えていたのだ。
質量が大きければ大きいほど、"余った力"が生まれる、だから、天体のように大きければ大きいほど、重力は大きくなる。
だが、思考と結びついているこいつ(重力子)は、一体何だというのだ?
発見した重力子を観測して時計を見てしまったために、時計が壁から落ちて壊れてしまった。
この時、仏教の用語を思い出した・・・。
諸行無常・・・。
すべては崩壊していく存在。
当たり前だ。
すべてのものはエントリピーが常に拡大している。
ただ・・・、そのエントロピーとは何だ?
「もの」が崩壊するのは「時間」が経過するから・・・。
「もの」は万有引力、つまり、「重力」を持つ。
地上では分からないが、宇宙空間のような何も抵抗力が働かない場所なら、物質同士は近づいていく。
すべての物質には「重力」がある。
そして「時間」を内包しているのではないか。
分かったんだ、俺は・・・。
重力は、こんな「か弱い力」なんかじゃなくて、強力に時間を結びつけているのだと。
つまり、重力子は「時間」を「物質」に結びつけていたのだ。
分かったなんて科学者らしくない・・・。
「想定されると考察した。」という言い方が合っているだろう。
しかも、これはとんでもなく突拍子もない・・・。
どうやったら物質から時間を外すことができるか?
相対性理論では、光の早さに近づくほど時間が遅くなるという。
実際、ジェット機や、ロケットで宇宙に出た人は数秒ほど時間が遅れる。
そして、光の早さだと時間がなくなる・・・。
もしかしたら時間が物質から外れやすい・・・?
大体、時間とは何なんだ。
いつから時間は流れたのだ。
ビッグバンからか?
ヒッグス粒子が生まれて、時間が流れ始めた?
いや・・・。
原子核が出来る最初の段階ですでに時間は流れ始めていた。
そう、だから重力も生まれたんだ。
時間とは何なんだ。
止まったらどうなるんだ?
止められたらどうなるんだ?
俺の結論は、時間が止まると、物質は崩壊するということだ。
全ての物質が重力を持つように、物質は時間をも持つ。
時間とは物質が物質であるために必要不可欠のもの。
重力によって結びつけられるもの。
重力が強ければ強いほど時間の流れは遅くなる。
ブラックホールの周りは恐ろしく時間の流れが遅い。
アインシュタインは、思考遊びが好きだったというじゃないか。
光の速さで動いている自分がいて、思考を巡らした場合、その思考はどれぐらいの速さなんだろう。
観測者の思考速度と比べたら、自分はの思考はどれぐらいの速度で"考えた"ことになるのだろうか。
光の速度で考える・・・?
高速で考える・・・?
そうだ。
そうなのだ。
重力子を移動させる際、俺は光の速さで考えていたのだ。
ブラックホールの強力な重力と自分自身の思考が結びついていた。
重力子の観測時、限りなく時間が止まった状態で思考することが出来る。
相対的に、観測者からは光の速度で思考していることになる。
生み出した光速の思考。
俺はこれを「光速思考」と呼んだ。
重力は物質と時間を結びつけ、そこに意思が加わると光速思考となる。
こう結論づけた。