II. 4つの発見
永原が見つけた4つの偉大な発見とは。
俺は集中力には自信がある。何かしていると2,3日経っている事もあった。
そして、ついに俺は机の上に乗るような小さな加速器を発明した。
この加速器だけでも、ノーベル賞級の発明だった。
加速器があれば、素粒子の観測は楽だったのだが、それよりもすごいことの出来る加速器だった。
こいつは、原子同士をぶつけ合うことで小さなブラックホールを作り出すことに成功したのだ。
ブラックホールも加速器なら発生させられると言われていたが、実際に作ることは出来るとは。
これは2つ目のノーベル賞だな。
そして、余剰次元は、やはりあるのだと証明されたわけだ。
ブラックホールを生み出すようなエネルギーが、余剰次元から来るってこと。
このブラックホールは一瞬で消えてしまうような弱いものだが、消える際に観測されたことの無い素粒子を見つけることが出来た。
ブラックホールのような強力に空間を曲げるような重力、そして、そこから現れた素粒子。
これが重力子と分かったときは柄にも無く歓喜してしまった。
これが3つ目のノーベル賞だ。
イオン同士がぶつかり合い、多数のブラックホールが出来る。
このブラックホールは、泡のように消える。
重力子は、その"泡"が破裂する際に、はじかれて出てくるような粒子だった。
この重力子を観察していると理解できないようなことが起こった。
それは自分の思考と連動しているということだった。
つまり、自分の意思で移動させることが出来るのだ。
場を司るゲージ粒子である重力子だから、何かと何かを仲介しているはずだ。
まさかそれが"意思"だったとは。
人間の思考=重力子ということか?
どおりで今まで見つからなかった訳だ。
何にしても重力子は荷電を持たない中性子だから、無制限に飛んでいく。
この移動方向に意思を加えるとそちらの方向に飛んでいくのだ。
そして驚いたことに、移動させた方向の"もの"が移動することが分かった。
最初は加速器の横にあったボールペンだった。
重力子が発生した際に、目を外して、そのボールペンを見たことから始まった。
重力子を左に移動させて、ボールペンを見ると、そちらに移動してしまったのだ。
こんな嘘のようなことが起こるなんて想定外だった。
重力子=思考
という冗談のような公式が成り立つのか?
意思で重力子が動かせるとしても、実際には、"重すぎて"動かせないだけってことか。
椅子とか机とかが何でも思い通りに動かせたら便利だろうが、そんな夢のようなことは出来ないというわけだ。
ともかく俺は4つ目のノーベル賞に気持ちが抑えられなかった。