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妄想は光の速さで。  作者: 大嶋コウジ
第7重力子 モウソウシコウ
32/105

絶望の未来

戸越を追い詰めた池上であったが、最後は戸越が自らの命を落とす形で終わってしまう。

取り残された池上の前に現れた者とは・・・。

戸越が消え去った後は、ペンションが丸ごと消えてしまった。

僕はぽっかり空いた空洞に座っている状態になった。


僕は身体を起こそうと立ち上がろうとした。


「い、痛い・・・。」


水の銃で撃たれたところが痛む・・・。


<大丈夫ですが、池上君。>

<大丈夫?>

<痛そうだよ。お兄ちゃん・・・。>

<にゃ~~!!私が不甲斐ないばかりに、ごめんなさい、にゃ・・・。>


「う、うん。大丈夫、みんな・・・ありがとう。でも、歩けないかも・・・。」


見ているしか出来なかった彼女たちは、もどかしくて仕方が無かったのだろう。


<お空を飛んで帰るしかないよね・・・。>


「そうだね、とっきょ・・・。」


力を使って動こうとしたとき、懐かしく、だけど、別人のような、黒く染まった声が聞こえた・・・。


「あ~、戸越は死んだか・・・。」

「お、おまえは永原・・・!?」


紛れもなかった・・・。

その姿、一緒に研究し、一緒に遊び、一緒に飲みもした、あの永原・・・。


<ちょ、ちょ、えっ?彼は生きていたの・・・?>


<誰この人?研究室にいた人?>


「久しぶりだな。」

「お前、生きてたのか・・・?だ、だけど・・・。」


永原が生きていた。

すらっとした姿は、永原らしい白いシャツ、パンツも綺麗だ。

だけど、彼の方から見える光、いや、ブラックライトのようなものは・・・?

そうか・・・、これがオーラというものか。

黒いオーラ、それが示す意味は、異常、残虐、悪・・・。

そう直感してしまった・・・。


「喜んでくれるのはいいけど・・・困るんだよね。邪魔ばかりしてはさ。」

「・・・邪魔?」


ああ・・・。


「そうそう。ま、計画は一人でも出来るけどさ。仲間ってもんがいないとな。せっかく創ったのにさ。」

「・・・。」


やっぱり・・・。


「それにしてもおまえの重力子を操る能力には驚いたぜ。一般的にはエスパーって呼ぶんだろうな。」

「・・・。」


信じたくは無かった・・・。

信じ合える仲間だった・・・。

やっとそんな人達に出会えたのに・・・。


「お前のエスパー能力は研究させてもらったぜ。」

「僕を研究・・・?」

「そうさ、このヘッドギアなしで重力子を使えるんだからな。

どこからその能力が出てるか調べさせてもらったぜ。

額とか胸とかさ、いわゆるチャクラが出るところと同じなんだよね、驚きだぜ。

所謂、エスパーってやつか。

オカルトでもあるまいし、そんな能力があるなんてな。」

「お前・・・。」


ひさびさに会えたというのに・・・。

何て冷たい会話なんだよ・・・。


「ま、それはいいとしてさ、この重力子の発見をどう思う?」

「・・・。」


お前も重力子を発見して、人間が変わってしまったのか・・・。


「すごい発見だろ?創造するだけで何でも作れるんだぜ。我ながらすごいと思うぜ。」


何だろうこのもどかしさ・・・。

不安、悲しみ、苦しみ・・・。


「お前も戸越の仲間なのか・・・。」

「仲間というか、やつの知識を使おうとしてな。しょうがないから、仲間にしてやったんだ。」

「戸越を仲間に・・・?で、では・・・お前が計画したっていうのか・・・。」

「そうそう。そうだよ。しかし、戸越はいきなりみんなを殺しちゃうから困った奴だったぜ、あれには参った。」

「だ、だが、お前・・・。」


何を言っている・・・。

止めてくれ・・・。


「まあ、それでしょうがないからさ。」

「しょうがない・・・?!」


オウム返ししか出来ない・・・。


「計画変更になってしまったよ。だから、秘密裏に進めるために俺と戸越は死んだことにしたんだ。」

「・・・。」

「だけど、お前、死体を見つけるのが早すぎだよ。

それと、重力子を操ることができるってのは、計算外ってところだったぜ。」

「僕はたまたまノートを忘れたのを取りに行っただけだ・・・。」

「う~ん、そうだったのか。ノートには気づかなかったな。僕のミスか。」

「それで・・・、見つけるのが早かった・・・。」

「そうさ、死体を見つけてしまって、ついでにあのアホな時計女も見つかってしまったからな。

なかなか計画道理には行かないもんだな。」


<ア、アホな時計女ですとっ!私のことかぁ~~っ!ムカ~~ッ!>


とっきょが涙目で怒っている。


「・・・。」

「月曜日に俺らの死体を見つけてくれれば、俺と戸越は死んだってことになって万々歳なんだったのにさ。

子どもにあんな重要なこと任せるから駄目なんだ。戸越は使えないやつだ。」

「・・・。」

「しばらくお前を消すことに時間を取られてしまった。

しかも全部失敗で、その挙げ句、お前にここを嗅ぎつけられてしまった。

戸越はつくづく使えない奴だった。」

「僕を消す・・・だと・・・。」


止めろよ・・・。

そんなこと・・・。

信じたくない・・・。


「まあ、それもいいや。ここまで来られちゃ隠しようもないしな。」

「永原・・・、僕を殺すつもりだったって言うのかよ・・・。」

「そうだよ。お前はいい奴だったが、邪魔しすぎだぜ。」

「何でだよ・・・永原、そんなこと言うなよ・・・。」

「何・・・?」

「お前はいつもいい奴で、僕の初めての友達だったのに・・・。」

「初めて?そうだったのか、さみしいやつだな。」

「そんなことで、壊れちまうのかよ・・・僕らの関係は・・・。」

「関係?たかだか数ヶ月の付き合いだろ?この偉大な発見に比べたら些細なことだ。」

「確かにその発見は偉大だ・・・。だが、だが、なぜ友達まで殺す必要があったんだよっ!」

「だから、奴らを殺したのは戸越なんだって。」

「町は・・・、町はなぜ破壊したんだっ!多くの人間が死んでしまったんだぞっ!」

「まあ、証拠隠滅だな。僕らの発見が見つかると面倒なことになるからね。

大きな計画からみたら小さな犠牲なんだよ。」

「ふざけるなよ!何が大きな計画だよ!!」


もはや僕の知っている永原では無かった・・・。


「池上。こんな魔法みたいな力をさ、人類が知ったらどうなると思う?」

「みんな幸福になる。何でも生み出せるならすごいじゃないか。」


僕は力を使って何とか立ち上がった。


「それはいい面だけだな。俺はさ、第三次世界大戦が起こるじゃないかと思うぜ。

いや、もっとひどい戦争が起こる・・・。」

「・・・。」


確かにそうかもしれない・・・。

何でも生み出せる。

それは武器も生み出せると言うこと・・・。

紛争地域にこの技術が渡ったらどうなるだろう・・・。


「それに人類はかなり堕落するぜ。仕事も勉強もしなくても生活できるからな。もう欲望のまんまだぜ。」

「・・・。」

「そんな自分勝手な人類が増えたら、最低最悪な世界になっちまう。そう思うだろ?

今現在も、欲望のままに戦争をしているのが人類だぜ?」


だけど・・・。


「そんなことはないっ!」

「俺には分かる。

堕落した人間たちが思いつきのまま殺し合う世界、法律なんて何の役にも立たない世界が広がるぜ。」

「愛し合う人たちや、信じあえる人たちだっているはずだっ!

お前らが僕にそうしてくれたじゃないか!!」

「あんなお遊びをありがたがってくれるとは・・・。純粋だよ、お前は。」

「永原・・・、何をしようとしているんだ・・・。」


「お前は逃げろ。これから来る未来には、お前みたいな純粋なやつが必要だ。」

「逃げろ?」

「これから隕石を落とす。世界人口を一割ぐらいにするんだ。」

「隕石を・・・落とす?人類を・・・一割・・・?」

「そんなところだ。」

「ふ、ふざけるなっ!」


全てが・・・、全てが永原の計画だった・・・。

僕は絶望感にうちひしがれていた・・・。



<池上君・・・、し、知らなかったの・・・。わ、私は・・・、私は彼に作られたのね・・・。

彼に最後に操作されてあんな酷いことを・・・。>


ユウ姉さん・・・。


<私のもう一人のお兄ちゃん・・・。今日は何か怖いよ・・・。>


やまいちゃんは知っていたみたいだ。


<・・・いけ・・・がみ・・・くん、ご・・・めんな・・・さい。お話し・・・でき・・・なくて・・・。>


まだノイズ混じりの雪ヶ谷だった。


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