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妄想は光の速さで。  作者: 大嶋コウジ
第6重力子 ショウジョタチノイノリ -エセ創造主-
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ホーンテッドハウス

不思議な少女達から聞いて、いよいよ戸越のいる場所に行くことを決意した池上。

池上の願いと少女達の思いとともに、その場所に向かうのだが・・・。


戸越がいるという場所は、避暑地と呼ばれるような落ち着いた場所だった。

僕は力を使って空から行くことにした。


空から見る避暑地は、なだらかな森林に包まれている。

空気も綺麗だった。

これから残虐な殺人犯に会うというのに、この静寂さとのギャップに少し戸惑った。


不思議な少女達を生み出した重力子の研究。

何故重力子で生命体が生まれるのか。

しかも、不浄物になった霊達から生まれてしまうのか。

謎だらけの研究ではあったが、直接本人に聞くしかない。


いや、それ以前に、戸越は研究室の生徒達を殺害してしまった真犯人だ。


ただ・・・、僕は戸越に会って何をしようとしているのか・・・。


今までのことを洗いざらい警察に話して、謝罪して欲しい?

戸越が殺した研究室のメンバー達に謝罪して欲しい?


いや、そんな説得に応じるようなやつじゃなかった・・・。


研究室のメンバーと一緒に飲んだりしていた時とは、別人のようだった・・・。

何でも相談できる、兄貴分のような戸越准教授はどこに行ってしまったのか・・・。

重力子の発見によって人が変わってしまったのか・・・。


説得はしてみるつもりだ。

だが、駄目だった場合は・・・。


<池上君、落ち着いてっ!>


「はっ!・・・あ、ありがと・・・。ユウさん・・・じゃなくて、ユウ姉さん。」


<緊張しているのね・・・。みんないるから大丈夫よ。>


ユウ姉さんの大人の落ち着いた優しさがありがたい。


「う、うん・・・。」


ユウ姉さんの他にも、とっきょ、パン、まいちゃん、良子さんがいるのが分かる。


「み、みんな、一緒に来てくれてありがとう。

だけど、良いのかい?

僕がこれからやることは、戸越に自首してもらうように説得すること。

だけど、正直、自信がない・・・。

もしかしたら、争いになるかもしれない・・・。」


戸越は生きている人間だ。

この子達のようにあの世に帰ってもらう、という話ではない・・・。


「それに、みんなはむしろ戸越を守る立場だったわけだし・・・。それを僕は・・・。」


<まぁ~~~たぁ~~~、そういうことを言うっ!>


「とっきょ・・・。」


<そうですよ。池上君、確かに私たちは戸越さんから身体をもらった身です。

だけど、池上君には、ちゃんとした世界に帰してもらえたんです。

そのことにみんな感謝しているんですよ。>


「ユウ姉さん・・・。」


パンが話を始めた。


<私は少し違うかな。戸越とは前世から縁があって、前世でやつに殺された恨みを何百年も持っててさ。

だけど、あんたとの戦いでそんなこと無駄だって分かった。

あの子は本当に駄目な子なんだ・・・。

だから、最後まで見届けてあげようかなって、思ってる。>


「そうだったのか・・・。」


<お兄ちゃん、私は戸越お兄ちゃんも大好きだけど、池上お兄ちゃんも大好き。もう少し一緒に遊びたいの。>


「ははは・・・。」


やまいちゃんは、複雑な事情ってのはなくて、純粋に僕と一緒にいたいということか。

あれ、それって、成仏していないってことなのか・・・?


<池上さん、私は・・・、その・・・、今世、ご一緒になりた・・・、ち、違います、にゃ・・・。

ご、ご一緒の時代に生まれる予定でしたが、かなわなかったので戸越さんにお願いして、身体を持たせてもらったんです。

わ、私は、さ、最後までご一緒したい・・・で・・・す、にゃ。(カァ~~ッ。)>


<なぁ~っ!なになにぃ?告白ぅ?それっ!ちょ、ちょっと、後から来てなんなのさ~~っ!>


<いえっ、そ、その・・・。う、うん?か、関係ないじゃないですかっ!私と池上さんとのお話しなんですっ!はっ!しまった・・・にゃ。>


<む~~っ!後から来たって事は、とっきょの後輩なのだぁ!生意気だぞぉっ!!>


何だか、良子さんととっきょの言い合いになってきた。

僕は少しモテている?

二人とも生きていないんだけどなぁ・・・


<二人とも、止めなさいっ!!!>


<は~い・・・。むぅ~・・・。>


<はい・・・。申し訳ございません・・・。>


「みんな分かったよ。これからどうなるか分からないけど、最後まで見届けて下さい。」


<はい、みんなそのつもりですよ。>


見えないが、みんながうなずいているように感じた。


その避暑地の一角、人がいない地域にそのペンションはあった。

外から見るとそのペンションは、2階建てでとても大きい。

ユウ姉さんの話では、地下には研究室があるのだという。

こんな場所でいつから研究をしていたというのだろうか。

しかも研究室があると言っても、本格的な研究施設のある太田大学から離れた場所に作るなんて理解しがたい。


僕は空からゆっくりと降りた。


<ここは、私たちが生まれた場所でもあるんだよ。>


とっきょが補足するように話してくれた。


<私たちが生まれて、生活していた場所。>


パンが話した。


「ここで暮らしていたんだね。」


僕は扉のチャイムを鳴らした。


<も~っ、壊しちゃえばいいのにさ~。>


<いえいえ、とても丁寧で素敵ですっ!>


<な、何を~っ!先輩の意見に口を出すのかぁ~、君はっ!!>


<とっきょさんは、乱暴すぎなのですっ!>


<もうっ!二人とも、止めなさいっ!!!>


<は~い・・・。むぅ~・・・。>


<はい・・・。申し訳ございません・・・。>


とっきょと良子さんの会話に、ユウ姉さんが、突っ込みを入れる。

また、このパターン・・・。

だけど、ちょっと楽しい。


チャイムからの応答はない・・・。

誰もいないのか?


僕は扉のノブを回してみた・・・。

あれ、普通に開いてしまった。


「開いてる・・・。」


<不用心だなぁ・・・。>


<おかしいわね。鍵が開いているなんて・・・。>


「・・・。」


僕らは、中に入り、色々と調べることにした。


1階は特に何もない。

綺麗なキッチンとリビングがある。

キッチンは、使い古されたフライパンに鍋、食器類、確かに生活感が漂っていた。


<みんなでご飯を食べたよね~。>


<でも、とっきょさんの作ったご飯のまずいことっ!>


<むき~っ!!!ま、まだ、修行中なんだからしょうがないよぅ!!>


<ま、また・・・。止めなさいっ!>


また、3人の会話・・・。


僕は2階に上がり、一つ一つの部屋を確認することにした。


<だっ!駄目~~~っ!!!>


「えっ?」


とっきょに言われたのだが、僕は部屋を開けてしまった後だった・・・。

あぁ、2階は彼女たちの部屋だったのか・・・。


「あ、ごめん。とっきょの部屋だったのか・・・。しっかし、き、汚い・・・。」


制服は壁に掛かっているけど、ゴミが散乱、服も散乱、ブラや、下着まで落ちている・・・。


<ぎゃぁ!やだやだやだ~~~っ!何しているのぉ!ちょ、ちょ、ちょ、ああ、も~~~っ、バカぁ!!>


涙目のとっきょが暴れている。


「ん、あれ、みんなが見える!」


<あら、見えるようにもなったのね。>


「うん、そうみたいだ。」


実際にみんなそこに「いる」ように見えるが、不思議なことに壁にめり込んだり、飛んでいたりする。

どうも肩が重いと思ったら、やまいちゃんは、僕の上で肩車していたのか・・・。


<ふにゃ。おにいちゃん、見えたぁ?>


「やまいちゃん、肩が重いよ・・・。」


<え~~、ここがいいのぉ!>


<そ~んなぁ~~ことよりぃっ!!早く扉を閉めてよぉっ!!!!>


「あぁ、そうだ・・・。ごめん、ごめん。」


<だから、あれ程、部屋を綺麗にしなさいって言ったのに。>


<むぎゅぅ・・・。>


お母さんのように怒るユウ姉さんに対して、ムスッとするとっきょ。


「ぷっ、あははははっ!」


僕は思わず笑ってしまった。

何か久々に笑ったような気がする。

それを見てみんなはきょとんとしているようだった。


<あははは・・・。>


<ふふふ・・・。>


<ははは・・・。>


みんなで笑った。

確かにみんなの声は聞こえるし、みんなの笑顔も見える。

ムスッとしてたとっきょも笑い始めていた。

途中から嬉し涙も出てきたが、みんなには、ばれなかったようだった。


緊迫した状況だったが、少しリラックスできた。


「こ、これ以上は調べられないから、みんな確認してきて。(少し見たい気もするけど・・・。)」


<はい。>


<は~い。>


<分かりました。わ、私の部屋なら、み、見ていただいても、だ、大丈夫です・・・にゃ。>


<な~~っ!どさくさに紛れて何言ってるのぉ!この良子ちゃんわぁ!」


<こ、こら・・・。またっ!>


「あはは・・・。」


全員に確認してもらったが、2階には誰もいなかった。


「後は、地下か。」


地下は、倉庫のような部屋だったようだが、それを改造して研究室にしたようだった。

そこには、作りかけのヘッドギアや、すでに生命体になってしまったような動物たちが檻の中にいた。

何故か動物たちは殺されもせずその場所にいた。

彼女たちはこの動物たちの世話もしていたようだった。


<ねぇねぇ、お兄ちゃん見て見て。>


頭の上のまよいちゃんが、小さな檻の中のネズミを指さした。


「うん?」


<チュー帯電話だよぉ!元気だぁ!よかったぁ!>


「チュー帯電話?」


<うん、ネズミさんとけいたいでんわがくっついたから、チュー帯電話って言うの。>


確かによく見ると、ネズミなんだけど、背中に携帯電話のモニターとボタンが付いている・・・。

所謂ガラケーとネズミの合成生物か・・・。


<これを使ってみんなとお話ししたんだよ。>


「あ、そうなんだ・・・。僕と会ったときに確かにみんな誰かと話していた・・・。これを使っていたのか。」


<うん、そうだよぉ~。可愛いよねっ!>


とっきょやユウ姉さんも、誰かと(今となっては戸越とだと分かるが)、と会話していたはず。


しかし、肝心の戸越はどこにもいない。

どこかに出かけてしまったのかもしれない。

鍵をかけずに出かけてしまった点が、戸越の性格からして理解できない。


「やぁ、池上君。おはようっ!」

「戸越っ!!」


その声はどこからともなく聞こえてきた。


「すまないね。少し寝ていたところだったのだ。しかし、勝手に家に入ってこられては困るよ。ブツブツ・・・。」

「ど、どこにいる?」

「池上君・・・。どうしてここが分かったんだい・・・。ブツブツ・・・。」

「と、とっきょ達に聞いたんだ。」

「はっ?そ、存在が消えた者に何が話せると言うのだ。訳が分からない。ブツブツ・・・。」

「みんなは消えてはいない。」

「で、では、ど、どこにいるというのだね・・・。ブツブツ・・・。」

「彼女たちは、あの世と呼ばれる世界に一度帰った。そして、今は僕のそばにいる。」

「くっくくく、あはははははっ!何を言うのかと思ったらっ!あの世?今ここにいるだって?くっくっくっ・・・。」


戸越は僕の話に苦笑しかしない。

しかし、どこにいる?

声が聞こえるのに、姿が見えない・・・。


「まあ、そんなことはどうでも良い。ところで、このペンションはどうだい?

ほら、周りは林だし、近くに小川が流れていて、綺麗な場所だろう?」

「・・・。」

「私が永住するには、こんな場所が良いかと思っていたんだ。別に身体なんて何でも良いって分かったからね。」

「何を言っている・・・。」

「家の周りは彼女たちが掃除してくれたよ。とても綺麗になった。私の中に住まわせてあげて、生活もさせてあげた。」

「私の中・・・?」

「研究する時は、身体を作れば何とかなったよ。いやぁ、我ながらこれはすごい。身体を作るなんて。

身体を使わないときは、瞬間移動も出来たんだよ。すごいだろっ!!!」

「ま、まさか・・・。」


<そんな池上さん・・・。私たちが見ていた。戸越先生は・・・。>


「さすが、池上君、分かったのかい?そうだ、君は"私の中"にいる。私自身が、この"家"なんだよっ!どうだい?すごいだろっ!!!」


急に戸越の声が太くなり、僕の心に直接話しかけているような錯覚を受けた・・・。


「そんな、バカな・・・。」


----------


僕たちは敵の真っ只中にいた・・・。

というか、敵の"中"にいたのだ・・・。


戸越は話を続けた。


「実験の最中、ほんの些細なミスがあってね。

手違いで、私は自分の身体から"外れて"しまったんだ。

鏡を見たからだと思っているのだが・・・。

ヘッドギアは、怖い道具なんだ。


驚いたことに私は、雪ヶ谷君が研究室に置いていたフィギュアというのかな、それに移ってしまった。

しかし、今時のフィギュアは可動式ですごくよくできているね、人間みたいに動けたよ。

台座に飾られていたのには困ってしまったが・・・、なかなか外れなかったからね。


しかし何とか台座から外れて、ヘッドギアを使って、私は自分の肉体に戻ろうとしたんだ。

これはとても難題だったよ。

ヘッドギアは大きすぎるから、改造しなくてはならないし、鏡を見ても一向に本体に移動できないんだからね。


仕方ないから、新たに身体を作ることにしたんだ。

これは良かった。

後で研究室のメンバー達を作る練習にもなったよ。


身体を作って何とか定着させることが出来たのだが、何故か安定しなくて困ったよ。

たまに意識がずれるというか、身体が思うように動かないこともあったし、自分で考えているようで考えていないような感じにもなった。

何だか自分でも何を言っているか分からないな・・・。


まあ、そんな感じで、身体に精神が安定しないから、もっと安定させる方法を考えたんだよ。

ここは、自分の幼少時代に使っていたペンションなんだ。

自分で言うのも何だが、実家は裕福だったから、こんな贅沢な"家"があったということだ。


まあ、このペンションと自分の意識との"定着"は、簡単なもんだったよ。

女の子達を想像したときと同じような感じだったからね。

後は、この"家"と自分で作った"人形"との間で意識を入れ替えて生活していたということさ。」


「そ、そんな・・・。」

「み・・・見た前、こ、こ・・・こっちの身体も・・・、つ、使える・・・ということ・・・だ。」

「・・・!」


いつもの戸越で現れた"それ"は、戸越の身体ではあったが、腐りかけたゾンビのような姿だった。

ひどい異臭と、紫色の皮膚、そして、髪は落ちかけていて、両目もあらぬ方向を向いている・・・。


「そ、その身体は・・・。」

「そ・・・そうな・・・んだよ・・・。こま・・・困ったことに、ゆ・・・有機体である、か・・ら・・・身体は数ヶ月もすると腐りはじめ・・・始めてしまう・・・んだ。

に、にん・・・人間・・・というのは偉大な・・・偉大な生き物だ・・・ね。

いし・・・きが抜けると、せ・い・・めい・・・生命として成り立たなく、な・・・なるんだ・・・ろうね。」


戸越は、まともに話もできない。

女の子達も、驚きの表情で見つめている。


「か・・・科学に、こう・・・貢献したのに、これ・・・はないよね。

まあ・・・、な、なん・・・何とか生活は出来・・・るし、研・・・究は進め・・・られた・・・から、ど、どう・・・どうでも良い・・・こと・・・だ。」

「戸越、そんな身体になってまで・・・。」

「あ・・・あ・・・、す、すま・・・ん。こ・・・の身体で・・・は、しつ・・・失礼だ。少・・・し・・・待ち・・・たまえ。」


というと、戸越の身体は、バタリと倒れてしまった。

その瞬間非常にまぶしい光があふれ、消えてしまう。

僕は目を細めながらそれを眺めていた。


「そして創造の時間だっ!!!」


家に"戻った"戸越の声が再び聞こえた。

次の光では光が集まり、人の形になり、よく知っている人間が作られた・・・。


僕は戸越の新しい身体が作られた事への驚きと同時に、別のことも考えていた・・・。

この命の無い身体を僕は知っている・・・。


研究室のメンバー達・・・。

まさに、その命を持たない身体が今目の前で作られたのだ・・・。


その生命体は、白目をむいていたが、やがてこちらをすごい形相でにらみ始めた・・・。

静かに呼吸を初めて、 "それ"は、戸越と一体となり、話を始めた。


「さぁ、池上君っ!私の"中"へ、ようこそっ!何をしに来たのか話してくれたまえっ!私の可愛い子達を消してくれた理由も聞かせてもらえるかい?」


僕はそれをじっと見つめるしかなかった・・・。


名前の間違い修正。

2017/08/27

後半部分が抜けていました。ごめんなさい。


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