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妄想は光の速さで。  作者: 大嶋コウジ
第6重力子 ショウジョタチノイノリ -エセ創造主-
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夢覚めて聞こえる皆の声

池上は戸越を探さなければならないと焦りを感じていた。

だが、手がかりも無くどうしようも無い状態に絶望を感じしていた。

そんな中、疲れた彼が眠りの中で出会った人とは?


僕は今日も救助活動をして、夜になったので避難所に戻ってきた。

だが、戸越への手がかりも見つからず、どうすれば良いのか分からなくなっていた。


このままどうにも出来ない場合、どうすれば良いのだろうか・・・。

「この次」に何をすれば良いのだろうか・・・。

僕はいつまで、この場所にいれるのだろうか・・・。

しかし・・・、しかし、僕には帰る場所がない・・・。

僕には何も残っていない・・・。

大学を失い、先生を失い、友を失い、いったい僕はどうしたらいいんだ・・・。

様々な回答の無い不安が頭をよぎる。


とはいえ、身体の疲れは、こんな時はとてもありがたい。

僕はいつの間にか眠りに落ちていた。


・・・どうしたんだろう。

眠ったはずの僕は、気づいたらドーム状の廊下のようなところを猛スピードで進んでいる。

僕は、僕はどこに向かっているんだ・・・。


ドーム状の廊下を抜けると、綺麗な草原、青い空、透き通る空気、さわやかですがすがしい風景が待っていた。

心を落ち着かせるような花の香りも漂っている。


・・・ここは?

ここはどこなんだ?

後ろを振り返ったが、ドーム状の廊下は消えていた。


「池上さんっ!池上さんっ!」


草原の向こうから女の子がこちらに向かって来るのが分かった。


「きっ、君は?とっ、時子!?」

「そうだよ~。でも、とっきょでいいよぉ~。こんにちは~っ!!」


天に帰った時子が、ここにいる?

ここは・・・まさか・・・。


「と、とっきょ。な、何で君がいるんだ・・・僕は君を消してしまったのに・・・。」

「消した?違うよ~。あれれ、忘れちゃったの?」

「ぼ、僕は何かを忘れている・・・?」

「ぼけぼけだなぁ~。」


目覚まし時計と合体したようなとっきょだったが、頭に付けた鐘は無くなっている。


「とっきょはね~、生きている世界では消えちゃったのだぁ~っ!」

「生きている世界?」

「うん。だけど、本当の"私"は消えてないんだよ~。ここにいるでしょ~?ねっ?ねっ?ねっ?」

「だけど、ここは?」

「みんなが死んだら来る場所だよ。天国とか、あの世って言うのかなぁ~。綺麗な場所だよねっ!」


確かに綺麗な場所で、心も安心する・・・。

孤独感も消え去り、疲れも無い・・・。

あれ?


「んっ!?天国だって?そ、それなら、ぼ、僕は死んでしまったのか・・・。」

「違うよぉ~。眠ってるだけだよ~。魂だけこっちに来てるんだよぉ~っ。ほら、頭のところから銀色の線が出てるでしょ?」

「???」


そんなこと言われても自分の頭を見ることが出来ないんだけど・・・。


「誰でも眠ってるときにこっちに来てるんだけど。目が覚めると忘れちゃうだよっ。何でだろうねっ!ふっしぎ~~っ!」

「し、しかし、・・・天国だなんて・・・。」

「お化けでもいると思ったの?あははっ。生きてる世界で未練がなければ、こぉ~んなに幸せな世界に戻って来られるんだよ~っ!」


手を広げて、この世界をいっぱい喜んでいるとっきょを見ているとこっちも嬉しくなってくる。


「そ、そうなのか・・・。でも、と、とっきょ、元気そうで良かったよ。あれ死んでるんだっけ・・・?」

「やだやだやだ~っ!私たちはね~っ、先生達が作った身体に移っただけなのっ。池上さんとぷち女神さんに導かれてこっちに戻って来られたんだよ~っ!」


導かれて・・・?

あれ、何を忘れている・・・?


「そうか・・・。ご、ごめんね。」

「やだやだやだ~っ!何で謝るのぉ?」

「だって、君は元気に生きていたじゃないか。それを僕は・・・。」

「やだやだやだ~っ!今日はね、あれ、今日っていつだ?まぁ、いっか。う~んとね。ありがとうって言いたかったの。」

「お礼を言いたかったということ?」

「そう、とっきょが死んじゃった時は、未練があって、こっちに来られなかったんだよ。」

「未練?」

「だって、15歳で死んじゃったんだもん。交通事故だったの。もうひどい顔だったんだから。ぐにゃ~ってね。思い出したくないっ!やだやだやだぁ~っ!」


僕は雪ヶ谷が話していた顔が見えない少女の怪談話を思い出していた。

ま、まさかね・・・。


「もっと遊びたかったし、恋をしたかったし、お母さんになって子どもを育てたかったし、色々やりたかったのに・・・。」


とっきょは、下を向いて、儚い自分の人生と夢を語ってくれた。


「それが未練・・・?」

「うん。そして、先生達は思いをぎゅぅってしてね。目覚まし時計を分解していたときの思い出を集めていたの。そこに私が加わって"とっきょ"になったのよ。」

「それで時計みたいな姿だったのか。」


思いをぎゅぅっていうのは何だろう・・・。

何からの力を持った戸越が、物質と魂を結合させて「命」を持ったせたということなのか?

しかし、そんなことが可能なのだろうか。

これが、重力子の力・・・?


「そうっ!だから、また、生きることができるんだ~って、嬉しかったぁ~っ!」


顔面をひどく怪我をした交通事故・・・。

そして、また生命を持てた事への感謝?

それを僕は・・・。


「・・・でも、僕は・・・。」

「やだやだやだぁ~っ!違うのよ。さっきも話したけど池上さんのおかげで天国に来られたのっ!」

「う、うん。だけど、それは良いことなのかい?」

「そうだよぉ。こっちの世界が本当の世界だよっ!生きている世界は夢の中みたいかなぁ。あれ、生きているのに夢の世界・・・。何だ、あれれ・・・。」


「こっち」が、本当の世界?

魂の故郷・・・?


そう考えると、今生きている世界というのは一体何なのだろう・・・。

苦しみと悲しみが待つ世界・・・。

ここは悲しみも苦しみも無いように感じる・・・。

生きる意味って・・・。


「池上さん、とにかく~、ありがとっ!あのままだったら天国にこれなかったかも。」

「そ、そうか。おめでとう、なのかな?」

「そうよっ!ありがとうっ!!来世はね、池上さんの恋人になってあげるねっ!えへへっ。」

「え?来世・・・?」


来世、そうか・・・、転生輪廻というのは、本当のことなのかもしれない。


「じゃあ、またね。池上さん。もう起きる時間だよ~っ。ほらほら朝ですよぉ~っ!!またまた目覚まし時計みたいだぁ~っ!ジリジリジリジリィッ!!!」

「え、、ああ、、、また・・・。」

「池上さんの力を使えば、こちらの世界と交信できるはずだよっ。がんばってね~~っ!」

「・・・交信・・・?」


あ、あれ、何か急に引き戻されていく・・・。

わぁぁぁ~~~っ!


「はっ!」


・・・朝だ。

鳥たちのさえずり、いつもの体育館。

体育館の窓からこぼれる光は、僕を丁度照らしていた。


「ゆ、夢か・・・。」

<夢じゃないってば~っ!もうっ!>

「え?」


誰かの声が聞こえたような気がした。

聞こえたというか、胸のあたりで何かが響いているような感じだった。


<やっと聞こえるようになったのかなぁ~?>

「えっ?えっ?ダ、ダメだ。病気だ・・・。寝ていよう。」


疲れすぎて、頭がおかしくなったのかもしれない・・・。


<やだやだやだぁ~っ!起きて~っ!朝ですよぉ~っ!!ジリジリジリジリィ!!!>


ジリジリと声を発しているのだが、それがやけにうるさく感じる。

声?

声??

とっきょの声が聞こえるっ!


「ほ、本当にとっきょ・・・、なんだね・・・。」

<そうだよ~っ。やっと、私たちの声が聞こえるようになったねっ!>


私たち?

すると、別の声が聞こえてきた。


<とっきょ、がんばったねっ!>

<うん。ユウありがとう。>

「ユウさん?そうか。あはは・・・。」


ユウさんは、大田町の遙か空で出会った女性。


<ユウ姉さんと呼びなさいっ!>

「は、はい。ユウ姉さん。」

<そう!そう!>


相変わらず、お姉さんと呼ばれたいらしい・・・。


<あうっ!お兄ちゃんっ!>

「やまいもいるんだね。」

<あう~。だけど、やまいじゃなくて本当のお名前は「まい」って言うんだよぉ。>

「あ、あれ、そうだったんだね。お兄ちゃん間違えてたのかな。」

<あう。あう。いいんだよぉっ!>


あれだけ咳き込んでいた、やまい・・・、まいちゃんかな?

そのまいちゃんも元気な声になっている。


「病気も治ったみたいだねっ!」

<あうっ!だってこっちはみ~んな元気だもんっ!>


悲しみも苦しみ無い世界・・・。

そうか、よかった。


「ああ、みんな。みんながいるのが分かる・・・。」


<もう少ししたら見えるようになるかもね。>

「ダジャレじゃない・・・、シャーレだね。」

<もうっ!まだ言いますかっ!でも本当はパンっていうのよ。>

「ごめん。ごめん。パン?食パン?」

<もうっ!!>


みんなあだ名を使っていたのかな・・・?

本当の名前があるのか。


<池上様。わ、、わたくしもおります・・・。ごめんなさい。出しゃばって・・・にゃん。>

「良子さんだね。」

<良でいいのです・・・にゃ。>


おしとやかで、どこか懐かしい声だ。


「やっぱり君とはどこかで・・・?」

<さ、さすがですっ!池上様とは、前世でお目にかかったことが・・・、恥ずかしいにゃん・・・。>

「そうだったのか、覚えてないみたいだ・・・。ごめんね・・・。」

<いえ、そんな・・・。今世も生きた人間としてお目にかかりたかったのですが・・・。シクシク・・・。>

「そうだね。生きて会えたかもしれないね。」


<やだやだやだぁ~っ!なんで後から出てきたのに、そんな仲が良いのっ?!>

<す、すいません・・・。>

<とっきょ、止めろなさいって・・・。>

<んが~~っ!やだやだやだぁ~っ!>


そして、か細くさみしげな声が聞こえてくる。


<池上くん・・・。>

「雪ヶ谷・・・か・・・。」

<先生を助けて・・・。悪い人じゃないの・・・。優しい人なの・・・。>

「うん、だけど・・・。」


何故かノイズが混ざっているかのように、はっきりと聞き取れない。

雪ヶ谷は、どこにいるのだ・・・。


<雪ヶ谷さんは未練があってこっちに未だ来られないわ・・・。助けてあげて・・・。>

「・・・うん。ああ、そうですね。ユウさん。」

<ユウ姉さんでしょっ!>

「そ、そうですね。ユウ姉様>

<そうよぉ(うっとり)。(ただ、私も、もうすぐ、ここにいられなくなってしまう・・・。)>

「えっ?」


<池上さん研究室の人達も近くにいるけど、まだ死んだばっかりで混乱しているの。みんなで説明しているからもうちょっと待ってね。>

「そうか。よかった。ありがとう。」


ユウさ・・・、ユウ姉さんは、お姉様らしく、丁寧に説明してくれた。


そして、雪ヶ谷は最後に戸越の場所を話してくれた・・・。


「えっ?あ、うん。なるほど・・・。戸越はその場所にいるんだね。」


そして僕は、また「力」を使った・・・。



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