またあなたに会えたっ!
波多野が帰った後、再び現れる戸越。
そして新しい不思議な少女も現れる。
だが、池上はこの少女に少し懐かしさを感じる・・・。
「どうやら、刑事が嗅ぎつけてきたようだね。まあ、当たり前かな。」
「戸越っ!!」
「おっと、呼び捨てかい?全く近頃の若者は敬語を知らない・・・。ブツブツ・・・。」
以前と同じように突然現れた。
「お、おまえっ!いったい何が、、、何が目的なんだっ!」
「目的?前にも言ったじゃないか、未来を創造するのが目的だよ。」
「どんな未来だと言うんだっ!」
「この重力子を使った素晴らしい未来だよ。何だって思い通りになるんだ。」
「何でも思い通りに・・・?」
「そうさっ!見ただろう彼女たちを。生命体だよっ!!生きた人間を生み出したんだよっ!!」
「何故そんなことが・・・。」
「そうそう。前にも話したけど、よく分かっていなくてね・・・。ブツブツ・・・。」
「分かっていないなら制御なんて出来ないっ!危険な発明じゃないかっ!」
「う~ん、だけど、想像するだけで、生命や、物を生み出すことが出来るんだ。いや、もちろん限定的だけどね。そこはまだ研究中なんだ。ブツブツ・・・。」
「それに・・・、」
「それに?」
「何でみんなを殺したんだっ!」
「我々の計画は、慎重に進めなければ、な、ならないんだ・・・。しずくは、しずく達はじゃ、邪魔をした・・・。そ、そういうことだ・・・。ブツブツ・・・。」
戸越は殺人の話しになるとどもり始める。
話した後のつぶやきは相変わらずだ。
「全然回答になってない・・・、殺す必要なんてないじゃないかっ!!」
「き、君は我々の計画を説明しても、り、理解できないというのかね?間もなく世界は一変するんだ。魔法のような未来社会の到来だよ?」
「だからどんな計画なんだっ!」
「もう良いっ!、もう良いっ!理解できないなら、もういいよっ!!」
戸越は、昔から怒ると見境が無くなる・・・。
「あぁぁ、どいつもこいつもっ!イライラするっ!」
「・・・あ、あの・・・。」
戸越の後ろから一人の少女が現れた。
「あぁ、そ、そうだった。池上君、新しい女性を紹介しよう。」
「ご紹介に預かりました。わたくし良子と申します。」
十二単に、長い髪。
平安時代の姿?
だけど、裾がミニスカートぐらい短い。
そして、本が、本が周りを回っている・・・。
でも、何でネコのミミが付いてる?
「んっ?」
彼女がちらっとこっちを見た。
顔を真っ赤にして、すぐに下を向いてしまった。
猫耳も下を向いている。
「また、人間を作ってどうするつもりだっ!」
「い、池上君は・・・。我々に協力するつもりはないのかい?」
戸越は、冷静さを取り戻したようだ。
「知ったことかっ!殺人者に協力するつもりはないっ!」
「やれやれ、駄目か・・・。邪魔をするなら、消えてもらう・・・。ただ、私はもう、ひ、人殺しはこりごりだ・・・。ブツブツ・・・。」
「殺人者め・・・。」
「君は僕らの秘密を知ってしまった・・・。だからいなくなる・・・。そ、そういうことにしよう。ブツブツ・・・。」
「くっ・・・。」
「ほ、ほら、彼女がお待ちかねだぞ。何故か彼女は君の知り合いだそうだ。初のケースだよ。そう、初のケース。ブツブツ・・・。」
「・・・。」
「それじゃぁ、僕は帰るよ。」
「おいっ!逃げるなっ!!」
「こういうときは、こ、こう言うのかな・・・。あとは若い者たちで。ブツブツ・・・。」
そう言うと、戸越は消えてしまった。
「くっ・・・。」
「あの・・・。」
そうだ。
また新しい不思議な少女。
そして僕は、また「力」を使おうとした・・・のだが、彼女は下を向いたままだった。
「あ、あれ?何もしないの?」
彼女はこっちを見てすぐ下を向く。
「えっと、あの・・・、その・・・。」
「・・・?」
「良子は余り戦いたくないです・・・。」
「えっ?ああ、それはありがたいな・・・。」
変なことを言う子だ。
今までの子達と少し違うな。
だけど、それが一番だ。
「イ、イマージュ達は、元々は、生きた人間ではありません。死んで不浄霊になった人間です。」
「何だって?不浄霊?」
「はい、その不浄霊が先生達の思い出に引き寄せられてイマージュとして生まれるのです。」
「引き寄せられるって、重力子でか・・・。」
「よく分かりません。だけど先生達は不浄霊だったなんて言っても、分かってくれません。理解できないって・・・。」
「理解できないか・・・。」
「あ、、あああ、、、お、おやめください・・・。駄目です・・・。」
良子は急に体が反り返る。
何かに抵抗しているようだった。
「ど、どうしたっ?何があったんだっ??」
「い、池上さん、に、逃げてっ!!!」
「おい、大丈夫か?」
「ああ、面倒だ・・・。」
良子の声だが、明らかに別の人間だ・・・。
「お前は戸越かっ?!」
「そうだよ。イマージュ達はどうも勝手な子ばかりだ。この子は君との知り合いだって言うから、怪しいと思ったんだ・・・。ブツブツ・・・。」
「この子に何をしたんだ!」
「イマージュはね。作った者の言いなりなんだよ。さぁ、良子とやら、彼を殺すんだっ!!!」
「ユウの時も・・・最後にっ!」
「そうそう、あの子も。か、勝手な子だった・・・。ブツブツ・・・。」
「に、に、逃げて・・・。」
だが、次の瞬間、別の人間に変わる。
「私は図書委員 良子と申しますっ!と、宣言すれば良いのかな。ブツブツ・・・。」
彼女の目が本の形になっている・・・。
<<教養のある本を読んでくださいっ!」>>
周りを回る本が止まると、開いて中から文字が飛び出してくる。
長い文字が虹のように、そして鎖のようにくねる。
まるで活字を読めと言っているようだ。
これは触れるとまずい。
とっさに逃げたのだが、良子は僕の後ろに立ち、小さく囁いた。
「りょ、良子は本を読むのが好きなのです・・・。池上さんはお読みになりますか?」
「あ、ああ、よく読むよ。学校に行ってるから勉強しないとね。」
冷や汗が出る・・・。
こ、このままナイフとかで刺されたら・・・。
「そうですか!やはり、池上さんは素敵な方です・・・にゃ。」
「にゃ?」
顔を真っ赤にしてまた下を向いて、遠くに行ってしまった。
「ごめんなさい、近すぎました・・・。む、無理です・・・。」
「無理??何が??」
「ち、近いのは無理です・・・。」
「自分から近づいたと思ったけど・・・。」
「・・・。(カァ~~ッ。)」
また真っ赤になっている・・・。
本当に操られているのか??
「い、、いえ、その・・・。にゃ~っ!」
<<1ページの重みっ!!!>>
また本が開くと1ページ、1ページがちぎれて、連続してこちらに飛んでくる!
僕は避けようとしたが、転んでしまった。
「あ、危ないっ!」
束になった紙は僕が転ぶのを防いだ。
と、当時にミイラみたいに縛られて横になってしまった・・・。
「池上さん、教科書ばかりでは教養になりませんのよ。」
「で、でも、大学の勉強で手一杯なんだよ。」
「若いころに教養が、人生のベースになりますもの。もっといろいろ勉強なさって。」
「うん、そうしたいのは山々だけど、大学がなくなってしまったしね・・・。」
「・・・失礼いたしました。そうでしたね・・・。お許しくださいませ。」
「許してあげるから、こ、これを解いてもらえるとありがたいんだけど・・・。」
「で、でも、大学が無くても図書館でお勉強出来ますからっ!」
「い、いや、その図書館もこの有様なんだけど・・・。」
「(カァ~~ッ。)そ、その、あの、、、え、偉そうにして申し訳ございません・・・。」
また、下を向いてしまった。
「と、解いてもらえないのかなぁ・・・。」
<<文学少女の静けさ>>
こ、今度は何を?!
まずいっ!
う、動けないのに・・・。
「あれっ?」
彼女はひたすらに本を読み始めた。
「えっ?んっ?な、何もしてこないの?(というか、解いて・・・。)」
「君は、名前通り、とても良い子だね。勉強も好きみたいだし。」
「(カァ~~ッ。)い、、いえ、その、、、あ、ありがとうございます・・・にゃっ!!(あの時と同じ事を言ってくれるのね。嬉し~~っ!)」
時々、にゃって言うのは何なんだろうな・・・。
雪ヶ谷がそんなようなこと言ってたような気がするけど。
「君は、現在の人間じゃないような気がする。」
「い、、いえ、見ての通りの図書委員です・・・にゃ。(さすがです!鋭いわっ!かっこいいわっ!)」
「だけど、よく分からない・・・。」
「ふっ、不思議なことを、お、、おお、おっしゃいます・・・にゃ。」
「不思議・・・、そうだね・・・。」
「さ、、ささ、さあ、い、いいい、行きます・・・にゃっ!」
「にゃっ」
うつってしまった・・。
その時、例の光が差してきた。
(・・・・・。)
「あぁ、またピンチなんだ・・・。」
「あれ、ど、どなた?(きゃ~~っ!!誰か他の女の人が一緒にいるじゃないっ!!何てこと・・・。シクシク・・・。)」
(・・・・・。)
「あ、解けた・・・。あれ、怒ってるの?」
ミイラ状態が解かれた・・・。
良かった。
僕は光を彼女に向けた。
(・・・・・。)
「は、はい・・・。シクシク・・・。」
(・・・・・。)
「いっぱいお話ししたかったの・・・。」
(・・・・・。)
「本当ですかっ!ありがとうございますっ!」
(・・・・・。)
「池上さん、ご、ごめんなさい・・・。」
「ごめんなさい?」
「池上さんを試すよう命令されておりました。先生方は実験されていたのです。これからお気を付けくださいませ・・・。」
「僕を試していた・・・。データを集めていた・・・?」
「・・・はい。」
「・・・。」
「でも、今世もお会いできて・・・嬉しかった・・・にゃん。」
「今世・・・も・・・?」
涙を流しながら笑っている。
どこかで見たことがあるような気がした・・・。
とても懐かしい。
「お・・・お元気で・・・。」
「あっ・・・!」
「・・・にゃ・・・ん。」
(・・・・・。)
「???」