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妄想は光の速さで。  作者: 大嶋コウジ
第5重力子 フタタビアイマミエル-図書委員 良子-
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束の間の休息にて

救助活動に明け暮れる池上だが、波多野の気遣いで休みをもらう。

池上は、もう一度大学に向かう。


朝になって目が覚めたが、今日の救助活動は、午前中お休みということになっていた。

波多野さんが、休ませてくれたのだ。

僕は休まなくても大丈夫ですと、言ったんだけど・・・。


避難所の生活も慣れてきて、お互いに顔見知りとなり、あいさつをするようになってきている。

そして、それぞれの生活域にはダンボールの壁が出来上がっている。

僕は、お隣さんとの親しみと段ボールの壁との矛盾にちょっと苦しんだりした。


僕は、自分の「段ボール部屋」で天井を見上げてまた寝転んでしまった。

研究室の准教授、戸越が犯人だ・・・。

しかし、今どこにいる?

何とか手がかりを得なければ・・・。


「さあ、頑張らないとっ!」

「池上くんは元気だな。」


お隣で顔見知りになったおじさんが話しかけてきた。


「えっ、そうですか?おじさんも元気そうじゃないですか。」

「そうかね・・・。ありがとう。でも家も妻もなくしてしまって、どうしたらいいのか・・・。」

「元気出してくださいっ!命があるじゃないですかっ!!」


そうだ。

生きているじゃないか。

可能性はいくらだってある。

励ますつもりが自分への励ましにもなっていた。


「そうだな。ありがとう。頑張ってみるよ。」

「僕は大学に行ってきます。」

「うん、いってらっしゃい。」


通学みたいだ・・・。

もう何もないのに、これから授業にでも行くみたいに・・・。


----------


研究室の跡地に向かう途中には図書館があった。

と言ったって、こっちも跡地だ・・・。


ここで色々調べ物をしたっけ・・・。

しらばく歩き回ってみるが、瓦礫しかない・・・。


「ま、また女の子がいたりしないよな・・・。」


「池上君っ!」


びっくりした。

一緒に救助活動をした波多野さんが現れた。

いつ見ても頼れるお兄さんみたいな人だけど、急に声をかけてくるなんてらしくないなぁ。


「こ、こんにちは。」

「こんにちは。何をしているんだい?」

「思い出の場所なので・・・来てみただけです。何か残っていないかと思って・・・。だけど・・・」

「うん、そうだね。酷い状態だね・・・。」

「波多野さんは何をしに?」

「避難所に君に会いに行ったら、学校に行くって聞いてね。追いかけてきたんだよ。」

「えっ、あっ、そうですか。」


ま、まさか、また僕を倒しに来たやつらの仲間じゃないだろうな・・・。

いやしかし今までは女性だけだったし・・・。

は、波多野さんが?!

いや、何が起こるか分からない・・・。


「ど、どんなご用ですか?」

「君と・・・やろうかな、とね。」

「や、やる?!な、何をですか?!やっぱり仲間ですかっ??」

「仲間?仲間とは何だい?君とはもちろん仲間だよ、あはははっ。」

「えっ?いや・・・。」

「はは、一杯やろうというのは冗談だよ。聞きたいことがあってね。」

「一杯・・・?はは・・・。」


一杯やろうって言ったのか・・・。


「聞きたいことというのは何ですか?」

「なぜ君の研究室が狙われたか、ということなんだ。」

「研究室が狙われた?」

「そう。僕の推察したところ、今回の殺人事件は何者かが研究室を狙った犯行に思えてね。」

「・・・そうですか。」


確かに客観的にはそう見えるかもしれない。

研究室のメンバーは僕以外が死亡で壊滅状態。

何か特殊な研究をしていて、それが邪魔な組織が所属しているメンバーを証拠もろともすべて殺してしまった、と。

いや、すべてではない。

僕が生き残ってしまった。


「波多野さんも僕をその犯行グループだと疑っているんですか?」

「いやあ、それはないと思うよ。私見だけどね。」

「で、では・・・何です?」

「だから、何で研究室が狙われたか、ということなんだ。思い当たることはないかね?」

「思い当たることですか・・・。」


正直に答えようとは思うが、何も分からないじゃないか。

・重力子

・不思議な女の子たち

・死んだはずの戸越先生が生きていた

・そして僕の力も?


肝心なことが全く分からない。

ただ分かっているのは、戸越達は、秘密を知ってしまった僕の命を狙っているということ。


「な、何も分からないです・・・。」

「う~ん。何か特別な研究をしていたということはないかね?もしくは特別な発見をしたとか?」

「特別な発見をすると、殺されてしまうのですか?」

「いやぁ、その発見が誰かの利益を阻害するもので、邪魔だと判断されたのなら・・・もしかして・・・とね。」

「・・・。」

「または、その発見を盗むために誰かが潜入して、見つかってしまったから、研究室の人達を殺してしまったとかね・・・。」


特別な発見・・・。

そうか・・・、重力子!

それを戸越は見つけたんだ・・・。


いや、まさか、それが本当ならノーベル賞ものだ。

なぜ殺人を犯す必要が・・・?

みんなが秘密を知ってしまったと言っていた・・・。

それで殺したというのか?!


「うん、いやしかし・・・。」

「しかし?」

「君のことも心配なんだよ。。」

「僕が心配?」

「そうだ、もしかしたら、犯人たちは次に君を狙っているのではないか・・・。ということなんだ。」

「・・・は、はい。」

「犯人は、君が何か秘密を知っているのではないかと考えているだろう。」

「・・・。」

「そして、全員殺したかったのにも関わらず、たまたま君は休みでいなかった・・・。」

「・・・。」

「でも、不思議じゃ無いか。」

「・・・何がですか?」

「何故、君以外は、土曜日に研究室にいたんだい?」

「分かりません。何も聞いていませんでした。」


何度も尋問されたことだ・・・。


確かに不思議だった。

集まるなら、僕にも声をかけてくれるはず。

そんな冷たい奴らじゃない。


「研究をするために土曜日に来る人もいますが、僕以外が全員いたというのは未だに理解できないです。」

「う~ん、そうか・・・。」


金曜日の夜は、永原の家で飲み会をした。

警察からしたら、その日に僕が殺したのかもしれない。

だが、僕は翌日、朝から大家さんの部屋を片付ける手伝いがあったから、早めに帰ってしまった。

そして、自分の部屋に戻る時、大家さんと顔を合わせている。

翌日は、予定通り大家さんの手伝いをする。

アリバイが成立していたのだ。


波多野さんは僕が話した内容は全て知っているはず・・・。

なのに何を聞こうというのか・・・。


「君は、何かを知って・・・。」


波多野さんは、言葉を止めた。


「いや、そうだな。誰かにつけられているとか、不審者に出会ったとか、そういったことはないかね?」

「いえ、今のところは・・・。」

「そうか、それはよかった。だが、これからは十分自分の身に気を付けるんだ。何かあれば私を頼ってくれ。」

「・・・はい。ありがとうございます。」


波多野さんの優しさに少し胸が熱くなる・・・。


「すまなかったね。変なことを聞いてしまって、じゃあ私は署に戻るとしよう。」

「はい。」

「それじゃ、また。」

「では、また午後から手伝ってくれると嬉しいな。」

「はいっ!もちろんですっ!」


だけど、何でドキドキしてしまうのだ。

何もやましいことはやっていないのに・・・。


僕は、あの人なら信頼できるのではないかと思い始めていた。

いや、すでに一緒に救済活動をする中で信頼できると分かっている。


だが、実際に狙われている事実をどうやって説明すればいいんだ?

・時子

・ユウ

・シャーレ

・やまい


彼女たちと力を使って戦い、存在を消してきたと・・・?

・・・無理だ。

残念だけど、理解など得られない・・・。


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