あなたに出会えるのが楽しみ!
病気から回復した良が、自分の父親にお願いしたことは、自分を直してくれた陰陽師の顔を見たいということだった。
その話を聞いて、父親が思いついた妙案とは?
今日は晴れていてとても気分が良い。
自分の娘と食事をするのは久々だ。
娘が病気になり、長らく一緒に食事は出来なかったのだ。
「ひと目だけでも見ることが出来れば幸せでございます。」
「そ、それだけでいいのかい?」
娘の快気祝い何かをしてあげようと言ったら、病気を治した陰陽師が来るという朝廷の占筮報告会に出たいという。
「ええ・・・、お父様。良はそれだけで嬉しゅうございます。」
「権力闘争に明け暮れる安倍家の中で、彼は本当に陰陽師としての力を持っているようだ。」
「はい、わたくしの他にも数々の病気を治されたとお聞きしました。」
「本当に感謝している。彼はすばらしい。」
「わたしくが病気の際に目が覚めたらあの方がいらっしゃいました・・・。」
「あの時はどうなることかと思ったが、あの方が悪霊を退散させてくれたのだろう。」
「お父様ありがとうございました。」
「お礼を言うのは私ではなく彼の方だろう。」
もっとこの子を喜ばしてあげる方法は無いのだろうか。
「そうだっ!彼を家にお呼びしようっ!」
「えっ・・・!で、でも・・・、ご、ご迷惑では・・・?」
「まあ、いいじゃないか。明日直接、聞いてみるよ。」
「はいっ!」
あの陰陽師様の話をすると、娘がとても元気になる。
父親としてこんなに嬉しいことはない・・・。
「明後日の午の刻にお呼びしたよっ!盛大な宴の準備をしなくてはなっ!」
「良もお手伝い致しますっ!お父様っ!」
「あぁ、ありがとう。」
だが、少し複雑な気分だな・・・。
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「本日はお招きいただきありがとうございます。」
「いやはや、こちらこそ娘を助けていただきありがとうございました。さあ、こちらへ。」
「はい、お邪魔いたします。」
い、、いらっしゃる・・・。
あ、足音、お足、お、音が・・・。
「こんにちは。お良さん。」
「こ、こ、こ、こんにちは・・・。」
「お身体の調子は如何ですか?」
「は、ははは、はい。大丈夫でごにゃりまする・・・。(カァ~~ッ。)」
な、何て変な言葉をっ!
「それはよかった。」
「ははは。娘はいささか緊張しているようです。」
「そうですか、緊張などしなくて良いのですよ。私の方が緊張しているぐらいです。さあ、力を抜いてください。」
「はっはっはっ!これは、これは!」
「は、は、、はい・・・。」
お、おやさしい・・・にゃ。
にゃ?
にゃって何かしら・・・。
「食事の準備は出来ております。さ、お座りになって。」
「はい。」
お父様ったら何でこんな狭いお部屋に・・・。
ち、、近い、、。お近くにいらっしゃる・・・にゃ・・・。
クンクン・・・、良い匂いがする。
はっ!
私ったら、はしたない・・・。
「うん。とてもおいしい食事をありがとうございました。」
「そうでしたか、それはよかった。」
「それでは、私はそろそろお暇致します。」
え、え、え・・・。
「いや、もう少しいてください。娘もそう思っているはずです。なっ?そうだろう?」
「は、はい・・・。」
「そうですか?・・・まあ、じゃあ、もう少しだけ・・・。」
お父様っ!
う、うれしい・・・にゃあっ!
「今、落雁を準備しています。」
「そうですか。」
「しかし、申し訳ございません・・・。急な仕事が出来まして・・・、お呼びしているのに本当申し訳ございませんが、しばらく失礼致します。」
えぇぇぇぇっ!
な、、、にゃ、、にゃ、にゃにを、何をおっしゃってるのっ!お父様っ!!
ふ、、ふふ、二人だけ・・・だにゃんてっ!
「行ってしまわれた。」
「は、はい。お父様が、し、失礼を・・・。」
「いやいや、いいのですよ。お忙しいのですね。」
お顔を見ることができない・・・。
でも、ちょっとだけにゃら・・・。
ちらっ。
「にゃっ!」
「にゃ??」
す、素敵。
優しい笑顔でこちらを見ていらっしゃる・・・。
でも、わたくし何て変な声を・・・。
「えぇ、、あ、あの、、声がおかしくて・・・。」
「う~ん。病気が治ってないのかなあ。」
あれ、、お立ちになって・・・。
え、え、え・・・、か、、顔、お顔が近くにっ!!
て、手で、あ、あ、あ、顎をお触りになって、、喉にもっ、ててて、手が・・・ふにゃあ。
「大丈夫そうですよ。」
「ああ、ああ、あああ、ありがとう・・・ございます。」
「それにしても綺麗で素敵な十二単ですね。お似合いですよ。」
にゃんですってっ!
き、綺麗ですってっ!
お、お似合いですってっ!
「にゃ、にゃ・・・。」
「にゃ??」
「にゃりがとうございます・・・。」
きゃあぁぁぁぁぁ。
にゃにを言ってるの・・・わたくし・・・。
緊張すると、にゃ、にゃあって、わたしく子猫みたい・・・恥ずかしいっ!
「勉学がお好きなようですね?あなたのお父様が話しておりましたよ。」
「は、、はい。」
「私も見習わなくては。」
「で、でも、多くの方のお病気を治していらして、、す、す、、すばらしいと思っております・・・にゃ。」
「ははは、まだまだですよ。それにしても、綺麗な和歌もお作りになるし。お良さんは本当にすてきな女性だ。」
そんなに、お褒め下さって・・・、ももも、、、もうだめ、身体が溶けてしまいそうだにゃぁぁぁぁぁん。
「あれ少し熱がありますか?顔が少し赤いようだ・・・。」
ま、またまた、、お顔をおお・・・っ!!
にゃにゃにゃあっ!
ひ、、ひひひ、額をわたくしの、、ひ、ひひひ、額にく、、くくくくっつけててて・・・。
「にゃ、、、にゃ、、、にゃあ、、もうダメにゃ・・・。」
「ああ、、あれ、お良さん?お良さん?大変だ!誰か!誰か!」
う、嬉しゅうございました・・・お父様・・・にゃん・・・。
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「え、子供が出来た?すごいじゃないか!」
「ええ、ありがとう、あなたっ!すごく嬉しいわ!二人の子どもよっ!」
やったぁ!
今世もお父様とお母様の子どもとして生まれることが出来るわ。
そして、あの方に会えるっ!!
そう、あの人も今世に生まれるって聞いたんだからっ!
こ、今世こそ、積極的にアプローチするんだから、、、で、でも、出来るかしら・・・。
だ、だめよっ!
頑張るのっ!!
そして、手をつないでいただいたり、だ、抱きしめて、も、も、も、もらったり、
キ、、、キスして、も、も、も、ももらったり・・・。
にゃぁ~~~何考えているの私っ!
早くお会いしたいにゃっ!!
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「おおっ!大きくなってきたな、お腹っ!」
「ええ、恥ずかしいわ。」
「そんなことないよ。元気に育っているってことじゃないかっ!」
「あなた。ほら、今お腹をけったわ。」
「はは!元気な子になるな!!」
ふにゃにゃ、、、赤ん坊になっちゃうんだにゃ。
あれれ、何か色々忘れていっちゃう。
あの人のことは忘れないようにしなくちゃ。
生まれるの楽しみだにゃ。
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「お、、おい!お前大丈夫か!!!」
「あ、あなたごめんなさい・・・。こんな体になってしまって・・・。」
「いや、いいんだ。ほら、こっち向いてごらん。」
「ええ、ありがとう。でも、、で、、でも、赤ちゃんが・・・、ううう・・・。」
「気にするな、君が無事でよかった、な。」
「はい、でも・・・。うう・・・。」
あれ!?
お母様、事故にあったのね・・・。
私・・・、生まれることが出来なかった・・・。
うにゃあ、寂しいにゃ・・・、悔しいにゃ・・・。
シクシク・・・。
仕方ないわ・・・、今世は諦めるしかないのね・・・。
にゃん・・・。