新しいお兄ちゃんとの思い出
研究室の跡地で寝ていた女の子。
何でこんなところで寝ていたのか。
女の子を助けようとする池上だったが・・・。
「ん・・・?あれ・・・?」
倒壊した壁を回ったところに女の子が倒れている。
小学校の高学年ぐらいだろうか。
附属小学校の制服を着ている。
おさげがかわいい。
倒れているというより・・・。
「き、君っ?」
「Zzz」
ね、寝てる・・・?
「・・・お~いっ!」
「あうん。あれっ?ちょっと疲れちゃって寝ちゃったみたい。むにゃ~っ。」
「えっ?ははっ。」
何でこんなところで寝ていたんだ?
でも死んでいるわけじゃ無くて少しほっとした。
「ゴホッ、ゴホッ」
女の子は、急に咳き込んでいる。
「わわ、だ、大丈夫っ?」
「大丈夫ぅ。ゴホッ、ゴホッ。」
本当に大丈夫なんだろうか・・・。
「ほらっ、立って。」
「ありがとう。お兄ちゃん。むにゃ。」
お兄ちゃんか、照れくさい。
「こんなところにいちゃいけない。避難所にいる病院の先生に見てもらおう。」
「あうん。いいのいいの。」
「いいのって、、、身体に悪いよ。さ、背中に乗って。」
「うん。ゴホッ。」
僕は彼女を背中に乗せて避難所に向かった。
「お兄ちゃんの背中暖かいね。」
頭をも垂れかけていてかわいい。
「何であんなところにいたの?」
「お兄ちゃんを待っていたのよ。」
「え?」
僕は、この小さな子にぞっとした。
「ぼ、僕を待っていた?」」
冷汗が出てきた。
「あうん。」
「な、何で待っていたのかな・・・?僕を知っているのかい?」
「あうん、そう、知ってるの。先生に言われて来たの。」
「先生?また戸越か・・・。」
「そうそう!戸越おじちゃん。あ、戸越お兄ちゃんって呼ばないと怒られちゃうかぁ。」
「はは・・・。な、何をしに来たのかな・・・?」
聞きたくないなぁ・・・。
「う~んと、お兄ちゃんと遊んで、病気をうつしちゃいなさいって。」
「病気を、う、うつすの?」
「ゴホッ、分かな~い。でも、うつすと病気が治るって言ってたよ。」
「え、、いや、それは嘘だと思うよ。」
「あうん、そうなの?」
「そうだよ。そんなのデタラメだよ。」
小さな子を騙して、僕にけしかけてくるとは・・・。
「あうん、戸越お兄ちゃんの言ったとおり・・・。」
「えっ?」
「池上お兄ちゃんは嘘つきだって、嘘を言うから騙されないようにって。」
「いや、戸越の言うことが嘘だよ!」
「下ろしてっ!」
と言いながら無理矢理降りてしまった。
「ゴホッ、ゴホッ。」
「ほらほら、ね。まずは休もうよ。」
「それに・・・。」
「それに?」
「私は生まれたときから色んな病気を持っててね。あうん、病気というより病気をうつすのが仕事なの。」
「は・・・?」
「お兄ちゃん、遊ぼうよっ!」
女の子の目はウイルスのような形になっている。
この子に限らず、女の子たちは能力を発揮するときに目が変わるようだった。
「ゴホッ、ゴホッ。」
「元気になったら、遊ぼうよ?ねっ?」
「元気だよ~。ゴホッ、ゴホッ。」
「いや、顔色悪いし、咳しているし・・・。大人しく家に帰ろうよ・・・。」
「え~、イヤなのぉっ!遊びたいのぉっ!」
結構頑固だな・・・。
「へ~んし~んっ!」
女の子の後ろに大きな壁が現れる。
いや、、よく見ると巨大なアメーバ!?
その中に女の子は入ってしまった。
「えっ?何っ?」
アメーバの中で服が溶けてしまっている。
ちょっとエッチだ。
「あ、ごめん。」
とっさに目をつむる。
「え~っ、見てほしいのにぃ!」
「いや、だって・・・。」
片目を開けてみることにした。
アメーバは服を溶かして、だんだんと水着のようになっていた。
帽子と、靴と、手袋と、スカートにも変わる。
いや、何というか、アイドルというか、こ、これは・・・魔法少女?なんだろうか?
丁寧に可愛い杖まで持っている。
ただ、黒と紫色ががベースで子どもが着るような服じゃないような・・・。
「あうん、じゃ~~んっ!変身かんりょ~で~すっ!どうっどうっ??ゴホッ。」
「か、かわいいね・・・。」
「えへへっ、私は不良少女 やまいっ!それじゃ~、いっくよ~っ!」
「不良の意味が違うよね・・・?不健康って意味だよね・・・?」
<<ば~い菌イヤイヤッ!!>>
右手を前にすると、手のひらから何か出てくる。
ばい菌?菌?細菌!
しかも超巨大な細菌たちが襲ってきた。
そして僕は、また「力」を使った・・・。
「これは触ったら駄目がな気がする・・・。」
僕は力で風を起こして細菌たちを飛ばした。
しまった、女の子の方だ・・・。
と思ったら女の子はあの大きな細菌を飲み込んでしまった。
「あっ!だ、大丈夫?」
「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ。」
「ご、ごめん・・・。」
「病気の人に病気をうつすとは、ひどいよぉ~!」
意外にも大丈夫そうだ・・・。
というか、よく飲みこめたね・・・。
「やっぱり病気だよね・・・?も、もうやめようよ・・・。」
「あう~っ!やさしいな、お兄ちゃんは・・・。」
「病人とこんなことしたくないよ。帰ろう、ねっ?ねっ?」
「あうっ。咳は出るけど元気なんですっ!」
「いや、、熱があるんじゃない・・・?」
「だ、大丈夫だもんっ!!ごほっ、ごほっ。」
「う~ん・・・。」
<<バクテリオファージ!>>
「わっ、わっ・・・。」
生物の教科書に出ていたバクテリオファージなんだけど、これまた巨大・・・。
いや、これ大きくなっちゃ駄目でしょう・・・。
「き、気持ち悪い・・・」
「あうっ。ごほっ、ごほっ。」
ファージたちは女の子を心配して戻っていった。
気持ち悪い姿をしているけど、心配している。
君たちが原因だと思うんだけど・・・。
「あう~っ!もっと遊んでっ!」
どんどん青ざめているような・・・。
「ふぁ~じちゃん、やまいの病気をうつして~~っ!!」
わらわらとカニのような足で歩いてくる。
こ、この動き・・・かなり気持ち悪い・・・。
そして、彼ら(?)は、中心の柱をこちらに向けた。
「ま、まさか・・・。」
柱から大砲のように飛ばしてくるのは・・・螺旋物質。
「こんな巨大なRNAは無いってっ!」
と突っ込んでいる暇は無い。
僕はシャーレとの戦いで学んだ光の柱を使った剣を作った。
それでRNAを切り裂く。
RNAを出し切ったファージたちはしぼんで動かなくなっていた。
「もう、メチャクチャだな・・・。やまいちゃん、君はどんなイマージュなんだい?」
「うんとね。もう一人のお兄ちゃんのお友達だったの。」
「もう一人のお兄ちゃん?お友達・・・?」
「もう一人のお兄ちゃんの優しい気持ちから生まれたの。」
「優しい?でも君は辛そうだし・・・。」
「あう~っ!違うの元気なのっ!!もっと遊んで~っ!」
光に包まれていく。
(・・・・・。)
「うん。とても辛そうだ・・・。」
光を彼女に向けた。
(・・・・・。)
「あう~っ?」
(・・・・・。)
「やまいは、元気だもん。」
(・・・・・。)
「ゴホッ、ゴホッ。」
(・・・・・。)
「えっ?あれ、あったかい・・・お兄ちゃんの背中みたい・・・。」
そう言うと、やまいは光に包まれていった。
徐々に消えていく。
「あう~っ、もうちょっと遊びたかったかなぁ。」
(・・・・・。)
「うん、分かった~。お姉ちゃん。」
「良かった。」
「バイバイ。お兄ちゃんっ!遊んでくれてありがとう!」
気のせいが顔色も良くなっていた。
「うん、バイバイッ!」
「バイバ~イッ!」
帰るべき場所に帰った彼女を見守ると、僕はいつの間にか笑顔になっていた。