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妄想は光の速さで。  作者: 大嶋コウジ
第4重力子 イロイロナ オニイチャン ト アソベタノ-不良少女やまい-
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研究室の跡地で見つけたものは?

何かを忘れたくて、救済活動に専念する池上。

今日はたまたま救済活動の場所が大学の跡地だった。

そこで見たのは懐かしい思い出だった。


朝を迎えた。

だが、遅い目覚めになってしまった。

疲れているのかな・・・。


もうほとんどの人はいなくなっていて、避難所はお年寄りや子供たちしかいない。

僕は今日もまた救助活動に向かった。

被災地では悲惨な死に方をする人たちもいるが、奇跡的に救助される人たちもいた。

力は使いたくはなかったが、救助できそうな人がいるときは分からないように使った。

そんな時は、少し心が安らいだような気がした。

そして夜になると、この小学校に戻り眠る日々が続いた。

一週間もこんな生活が続いたが、比較的元気に過ごせたのは救助した人たちから感謝の言葉をもらえていたからかもしれない。


「あ、、、あり、、、がとう。」

「助かったよ。」

「君のおかげだ。」


そんな言葉をもらうたび、嬉しくなっていった。


僕は、あの警官の指示で動くことが多かった。

そして、今日の救助活動は、自分の住んでいたアパートの近くだった。


「やっぱり・・・。」


自分のアパートも例外ではなかった。

地震で倒壊している。


「・・・。」


何も言葉が出ない。

壊れた部屋に、壊れた机に、壊れたタンス。

何が残っているというのだ。


「あっ!」


アルバムを見つけた。


「よく残っていたな・・・。」


研究室の仲間たちとのたわいのない写真。

僕は・・・、僕は・・・、笑っていた。


「はは・・・、ははは。」


涙を流しながら笑うなんて初めての経験だ。


「池上くん?」

「お、大家さん。」


大家さんは、自分の家の敷地内にアパートを建てて、生徒たちに部屋を貸していた。

僕はそのひと部屋を借りていたのだった。


いつでもアパートに住む学生を気にかけてくれていて、自分のお婆ちゃんのようだった。

大家さんの子供たちはすでに独立してしまっていたようだった。

食事も何度かごちそうになった。


「い、池上くん・・・、よかった・・・。生きていたのね・・・。」

「はい。大家さんこそ。助かっていてよかったです。」

「私は丁度買い物に出ていてね。他部屋のの人たちは・・・ううう・・・。」

「そうでしたか・・・。」

「池上くんもてっきり・・・。よかったわ・・・。」

「はい、何とか・・・。」


アパートの廊下で何度か顔を合わせた人たちがいたが、命を落としてしまっていたとは・・・。

いたたまれない気持ちになった。


「大家さん、元気を出してください。」

「そうね・・・。私は子どもの家に住んでいるの。大丈夫なんとかなるわ。」

「池上くんも頑張ってね。」

「はい。ありがとうございます。僕は大学を見てきます。」

「うん、分かったわ。それじゃあ、またね。困ったことがあったら、電話してね。」

「はい。」


こんな小さな優しさが身にしみる。

少し涙ぐんでしまった。

僕はアパート近くにある大学に向かった。


「これが大学・・・?」


倒壊した校舎、大学の入り口だけが何とか残っていて、そこにあったという証にしかなっていない。

あの警官の話では、震源地はこの近くとのことだった。


証拠隠滅・・・。


准教授、御岳先生の研究成果はすべて消し去られていたかのように、何もかも失われていた。

僕は研究室の跡地を見て回った。


「これがあの研究室なのか・・・。」


色々な思い出が蘇ってくる。

永原との議論。

雪谷をからかう大崎と荏原。

研究そっちのけのくだらない会話。

何とか大学に入るために勉強ばかりやっていた自分には拍子抜けだったが、楽しかった。


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