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妄想は光の速さで。  作者: 大嶋コウジ
第3重力子 モエサカル アナタヘノウラミハ ダレガケス?-実験材料シャーレ-
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懐かしい顔、偽りの顔

救助活動に疲れた池上。

誰かに起こされて目が覚める。

そこにあったのは懐かしい顔、だけど、何か違和感を感じる・・・。

「池上くん。池上くん。」

「ん・・・?ああ・・・??」

「お~い、起きてよぉ~っ!」

「あ、雪ヶ谷か、どうしたっ?ん、あれっ?あれっ?雪ヶ谷が何でこんなところに・・・?」

「ふふふ、元気かなっ?」

「はっ!」


目が覚めた。

そこに立っているのは、雪ヶ谷しずく?

似てるけど少し違う・・・。

髪が金髪で、実験の白衣を着て、巨大な試験管を手に持っている。

白衣の下は、胸が大きく開いたシャツに短いスカート。

雪ヶ谷とは似ても似つかないセクシーな姿・・・。

いや、雪ヶ谷に失礼かな・・・。

よく見ると、その試験管は・・・、空中に浮いている・・・。


「だ、誰だっ?」

「し~つ!静かにしないと人が起きちゃうよ。」

「・・・。」

「ふふ、外に来て。」


まだ疲れているのか?

頭がすっきりしないのか?

嫌な予感がする・・・。

この胸騒ぎ・・・。


外に出ると、とても静かだった。

夜空は、街灯が消えてしまったためか、星がはっきりと見えた。

その光景は、ひどい有様の街とは逆に、とても綺麗だった。


「ふふ、元気だったかな?」

「いや、雪ヶ谷こそ・・・。」


言いながら誰だろうと思っている。


「な~んて、嘘だよ~っ。初めて会うもんねっ!」


月夜に照らされた彼女は笑顔に答える。


「・・・き、君は誰だ?誰なんだ?奴らの仲間か?」

「ふふ、どんな子かと思ったら、君は随分かっこいいね~っ!私はシャーレって言うのよっ!」

「しゃ、シャーレ?シャレ?ダジャレ?」

「むか~っ!!何それっ!!!それはかなり失言ですからっ!!!初対面であり得ないっ!!!君、合コンとか行ったことないでしょっ!」

「えっ、いや・・・。」


そんな明るいテンションで来られても・・・。


「ん、もう。調子狂ってきちゃったな~。」

「そうだよね。そ、そうだ。明日にしない?」

「ダメ~っ!ほらほら、目を覚まさないと、すぐやられちゃうんだから~っ!ねっ!」


この子は明るく話しているけど、その実、恐ろしさを感じる・・・。


「やはり奴らの仲間か・・・。」

「まだ、眠そうだなぁっ。おはようのキスでもしようか?」

「な、、何を!」

「ふふ、照れちゃって、か~わいいっ!」


一体彼女は誰なんだ?

どこの組織なんだ?


「ここは駄目だ。もっと遠くへ行こう。」


この場にいる人達は避難するだけで疲れている。

まして、僕の力を見せるわけにも行かない・・・。


「ふふ、イイよ~っ、デートのお誘いかな?」


そして僕は、また「力」を使った・・・。


「む~~、無視したなぁ。」


彼女は巨大な試験管を魔法使いの箒のように乗り、空を飛んでいる。

さながら実験用白衣は魔法使いのマントだろうか・・・。


「おまえ何で雪ヶ谷に似ているんだ・・・。」

「ふふふ、自分に似た人は世界中に3人はいるんだってね~っ。だから、同じ顔でもいいじゃな~い?」

「しかし、何か変だ、説明できないが何か変なんだ。」

「また、名前のこと言ってるのねっ!信じられないっ!!」

「いや、違う・・・。雰囲気から、体つきまで一緒なんだ。」

「体つきってっ!!えっちっ!変態っ!かっこいいって言ったのは取り消しっ!!」

「いや、そういう意味じゃ無くて・・・。」

「もうここで良いよねっ!」


彼女は、そう言うと急に止まった。


「いっくよ~っ!」


<<試験管の思い出っ!!!>>


また必殺技か・・・。


巨大な試験管が何本も空から落ちてくる。

それを間一髪で交わす。


「ふふふっ、いいわ、少しだけ教えてあげる。私たちはイマージュ。先生達の思い出から生まれたのよ。」

「思い出から生まれた?!」

「過去の思い出から、想像されたの。そして、重力子を使って具体化されたのよ。」

「また重力子か・・・。重力子は、未だ見つかっていないはずだ。何を言ってるんだ。」

「ふふ、同じ研究室にいたのに気づかなかったのね。お馬鹿さんっ。」

「あの研究室の?!」


携帯電話の音がする。


「・・・え?話しすぎ?そうかなあ。大丈夫、私が倒しちゃいますから。」


それにしても、変なネズミの形をした携帯電話・・・。

ん?

あの携帯電話・・・、まさか、生きている・・・?


「話しすぎだって、怒られちゃったじゃないっ!」

「だ、誰と話しているんだ!」

「ふふふっ、さあ、私は実験の思い出から生まれたイマージュのシャーレ。実験材料になりなさいっ!!」


彼女の瞳がガラスのように月明かりを跳ね返している。

よく見ると、×に重なった試験管だ・・・。


「くっ!」


<<マイクロピペットは1マイクロから!>>


「マイナーな実験器具だ・・・。」

「な~!こんな精密機器を馬鹿にして~っ!」

「いや、馬鹿にはしていないけど・・・。」

「いけ~っ!ピペットチップ~!」


マイクロピペットの無数のピペットチップが高速で飛んでくる


「あ、危ないって!」

「ちょっと!避けないでよっ!」

「さ、、刺さるでしょ・・・。」

「実験器具を遊び道具にしちゃ駄目だって。」

「ふふふっ、遊び道具じゃ無いわ。目的は・・・分かるでしょ?」

「・・・。」

「ふふふっ、これは避けられないわ。」


<<駒込ピペットッ!>>


駒込ピペットといっても、かなり大きな上に液体を取り込むところが異常に長い。

それを剣のように持っている。

ん?液体じゃなくて、何だそれは・・・。

剣の刃にあたる部分が青く光っている。


「え~~いっ!」


両手で持って突っ込んでくる。

当たると痛そうというより・・・。


「えっ?!」


避ける際に服が遅れて動いたのだが、真っ二つに切れている。


「な、何で切れるの・・・?」

「ふふふっ、びーむさーべるだからよっ!」


突っ込みどころが多くて答えてられない。

というか、答えている暇が無いほど、その剣を振り回しながら突っ込んでくる。


「危ない・・・。わっ!わっ!」


僕は石を動かして彼女に飛ばした。


<<シャーレッ!!>>


自分の名前を呼ぶと、いや、自分の名前じゃない。

実験道具のシャーレだ。

かなり大きめのシャーレが、盾になって腕に装着している。

剣と盾ですか・・・。


「どう?ナイトみたいでしょ?」

「僕を殺して証拠を隠滅するつもりか!」

「ふふっ、そうよ。そうじゃないと、先生が困るのよ。」

「また先生か・・・。一体誰のことなんだ。」

「あなたに恨みはないわ。そうね。また生まれたことへの感謝ってことね。そしたら、次は先生・・・。」


何を言っているのか分からないが、不気味に笑っていた・・・。


「池上君、まったく君には驚かされる。ヘッドギアなしで、重力子を使えるとは。」

「あら、先生。出てきちゃっていいの?」

「いいさ。大体君たちはしゃべりすぎなんだ・・・。」

「ごめんなさい。先生。」

「!」


紛れもない戸越先生だ。

研究室の准教授。

だが、なぜ?

研究室で死んだはず。


「と、戸越先生ですかっ?!」

「そうだよ。忘れてしまったのかい?」

「な、なぜ生きているのです?あの死体は?」

「シャーレに聞いただろう?創造だよ。イマージュだよ。」

「イマージュ、イマージュって・・・。イマージュって何なんですかっ!!」

「我々が作った創造物ってところかな。」

「作った??」

「うん、そうだ。説明が長くなるなぁ。まあ、あれは、ただの肉体ってことだよ。」

「に、肉体・・・?本人たちじゃ無かったと言うことですか・・・。そ、そうでしたか。よかったです。」

「よかった?変なことを言うね。驚かないのかい?」

「驚くというより・・・、生きていてくれてよかったです。」

「そうか、私が生きていたのを喜んでくれるとはね。君はよい生徒だな。」

「他の人も、みんなも、生きているんですよね?」

「いや、か、彼らか、彼らは、し、死んだよ。ブツブツ・・・。」


戸越先生は困ったことがあると独り言を始める。


「え?!死んだ・・・?」

「そ、そうだよ。秘密がばれてしまったから、き、消えてもらったんだ。」

「消えてもらったって・・・。殺したってことですか?!」

「そ、そういうことになるかな・・・。そ、そもそも彼らが悪いのだよ。ぼ、ぼく、僕の邪魔をするから・・・だ。ブツブツ・・・。」

「な、なんていうことを・・・。」


戸越先生が殺人を犯した本人だったとは・・・。

しかし、イマージュとは・・・?

創造した・・・?


「我々は重力子を発見することで創造主になったんだよ。我々の計画を邪魔するような小さな生命体のことなど知ったことではないのだ。」

「な、何を言ってるんです?!」

「だけど、このヘッドギアがないとイマージュは生まれない。まだ研究段階な創造主というところかな。ブツブツ・・・。」


頭にかぶっているヘッドバンド、いや、ヘッドギア?を指さしながらブツブツと独り言を話している。


「な、何を・・・創造主だから人を殺していいわけないだろっ!まだみんな未来があったのにっ!!」

「まったくそうだ。未来があったのにかわいそうに。我々の秘密を見つけなければよかったのに・・・。ブツブツ・・・。」

「みんなの未来を返せ!」

「か、過去は変えられないのだよ。人間は未来に進まなければいけない。」

「その未来ってのは何なんだ!何をしようとしているんだ!」

「未来、未来、そうだね。創造したいのだよ。世界をね。」

「世界を創造だって・・・?!それがどうして人殺しにつながるんだっ!」

「あ、あれは言ってみれば事故なんだよ。まったく、困った連中だった・・・。ブツブツ・・・。」

「ふ、ふざけ・・・。」

「それよりも、未来を作り上げるため君の能力がほしい。ヘッドギアがなくては何も出来ない弱点を克服したくてね。ど、どうだい?」

「勝手なことばかり言いやがってっ!誰が協力などするかっ!!!」

「そ、そうか、困ったな。このヘッドギアを使うとね。何でも思い通りだよ。お金でも、物でも、女でもね。ブツブツ・・・。」

「ふざけるなっ!!」

「う~ん。そうか。ま、まあ、いいだろう・・・。し、しかたがない・・・。今日はこれで帰ることにするよ。また会おう。ブツブツ・・・。」

「お、おい待てっ!」

「あ、後は、た、頼んだよ・・・。ブツブツ・・・。」

「ふふふっ、いいわ。先生。先生のおかげで生まれることが出来たんだもの。」


そう言うと、戸越は消えてしまった。


「おいっ!待てっ!!」

「ふふふっ、さあ、行くわよ~っ!」


<<リトマス試験紙は恋の色>>


「恋の色?!」

「ふふふっ、そうよ。ロマンチックでしょっ?」


このリトマス試験紙は、とても大きい。

顔ぐらいの大きさはある。

それを右手の親指と薬指で挟んで飛ばしてきた。

呪符を飛ばしているみたいだ。

実際には見たことないけど・・・。

右手は青色、左手は赤色。

リトマス試験紙は、僕に近づいて両ほほにぴったりとくっつく。


「吸収っ!」

「ぐわぁぁ~~っ!」


何かエネルギーが吸われていくみたいだ・・・。

力が抜けていく・・・。


「ハァ・・・。ハァ・・・。」

(・・・・・。)

「そ、そうだね。すまない。」


いつの間にか息が切れている・・・。

少し深呼吸をした。


「ふふふっ、落ち着いちゃったのね。先生みたいに冷静だこと。でも先生は怒ると見境がなくなっちゃうけどね。」

「お前たちの計画はよく分からないが、めちゃくちゃということはよく分かった。」


(・・・・・。)

「さあ、力を貸してくれっ!」


僕はさらに冷静になった。

暖かい光が入ってくる。

そうだ。

彼女の光で彼女たちを天に帰してきたのだ。

手のひらを前にして、彼女に照射する。


(・・・・・。)

「私は悪くないわ。ただ、また生きたいだけよ。大体誰よ、あなた。」

(・・・・・。)

「女神?ふふふっ、そんな人いるわけがない。あの時だって神様は助けてくれなかった。」

(・・・・・。)

「そ、そんな・・・。バカな・・・。そ、それに私の名前まで知って・・・。」

(・・・・・。)

「・・・そうよ。」

(・・・・・。)

「・・・。」

(・・・・・。)

「ふふふっ、私が実験材料にされちゃったみたいね・・・。」


シャーレは泣いていた。


「バカね、私は・・・。何百年も恨んでしまって・・・。良いわ。フローラ、許すわ・・・。とても弱い子・・・。」


彼女は消えてしまった。


「ありがとう。」

(・・・・・。)


それにしても、分からないことだらけだ。

イマージュ?

重力子?

ヘッドギア?


「だが、戸越は力の使い方を誤っている・・・。それだけは分かるっ!」


それを知らせないといけない。

それは僕しか出来ないっ!


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