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妄想は光の速さで。  作者: 大嶋コウジ
第3重力子 モエサカル アナタヘノウラミハ ダレガケス?-実験材料シャーレ-
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絶望の地にて

ユウという女性が起こした地震。そこに立つ池上。

彼が見た光景と決意したこととは・・・。

ユウという女性が消える際に、起こした天変地異・・・地震・・・。

地上に降りてみて、周りを見渡すとひどい有様だった。


「何てことを・・・。」


道はゆがみ、家屋は倒壊、何もかもが倒れていた。

悲鳴も聞こえる・・・。

地獄のような世界に絶望した・・・。


だが、この大雨のおかげで火事は防がれたようだった。

彼女は大雨の予想もしていたが、それはこの大雨なのだろうか?


それにしてもこの状況・・・。

僕が関わってしまったから・・・。

もっとうまいやり方があったのだろうか・・・。

様々な思いがこみ上げてくる。


「な、何かしなかれば・・・。い、生きている人は・・・?」


倒壊した家屋の下で声が聞こえる。


「たす・・・、助けて・・・。誰か・・・。お母さん・・・。お母さん・・・。」


僕は必死になって瓦礫を取り除いていく。


ふと気がつくと、知らない人も駆けつけてくれていた。

とてもがっしりとした体型が服の上からも分かる。

この人からは、なぜかホッとさせるような優しさを感じるが出来た。


「君、そっちを持って。」

「は、はい。」


一緒に瓦礫を取り除いていく。

取り除いていくとだんだん、絶望感にうちひしがれてきた。

母親が盾になり小さな男の子を守っている。

母親は・・・息がない・・・。

男の子は少し傷があるぐらいだった


「お母さん・・・。お母さん・・・。うゎ~んっ!」


助かったのにその場を動かない男の子、涙を流す子に何も声をかけられなかった。


「ぼ、僕が悪いんだ・・・。」


小さくつぶやく・・・。


「君、何か言ったかい?」

「い、いえ・・・。」


そんな自分を責める気持ちが湧いてくる。

一緒に助けていた男性が男の子に声をかけた。


「お母さんは君を守ってくれたんだぞっ!しっかりと生きなければいけないっ!」

「うん・・・。ぐすっ・・・。」


何故かその言葉は僕の心にも刺さった・・・。


「君、この子を連れてこの先の小学校まで行ってくれるかい?」

「は、はい。」

「ん?・・・君はあの大学の・・・。」

「えっ?」


その男性は僕に気づいたようだった。

何で知っているんだろう。

ニュースや、新聞には僕の名前や顔は出ていない。


「あ、いや、何でもない。お願いするよ。」

「はい、行ってきます。」


僕は小学校の校庭に出来た避難所に男の子を連れて行く。


「ぐすっ、ぐすっ、お母さん、、お母さん、、」


泣かないで頑張ろうとしている男の子に声をかけてやれない自分。

自分にできることは何なのだろう。そんなことばかり考えていた。


「しっかりと生きなければいけないっ!」


あの男性の言葉・・・。

心の中でエコーしていた。


しばらく歩くと小学校があり、避難してきた人たちや、傷ついた人たちなどが集まっていた。


「たかとくん!」

「おばあちゃんっ!!わ~んっ!」


男の子は"たかと"という名前らしい。

僕は事情を説明した。


「ありがとう、ありがとう。本当にありがとう。たかとちゃん・・・。よかった・・・。うぅぅ・・・。」


お礼を言われることなんてしたのだろうか・・・。


「孫が助かっただけでも幸せです。本当にありがとう・・・。」


泣いているおばあさんにも声をかけられない・・・。


僕はこれから何をすれば良いのか。

まだ迷っていた。

ただ、目の前の人たちをなんとかしなければならない。

この時はそんなことだけを考えていた。


「しっかりと生きなければいけないっ!」


まただ・・・。

しっかりと・・・、そうか・・・僕は今を生きなければならない。

そして、今出来ることは・・・。


そうか、そうかだった!

困っている人達を助けることが出来るじゃないか。


僕は被災地に戻り救助活動をすることにした。

ただ救助活動といっても何をしていいのかよく分からない・・・。


「あっ・・・。」

「ん?君はさっきの・・・。」


さっきの男性がいた。

何というか、あの人を見ると安心する。


「さっきの子どもは小学校の避難所に連れて行きました。」

「うん、ありがとう!」

「僕も手伝わせてください。」

「ああ、ありがとう助かるよ。」


夕方になるとクタクタになっていた。

夜は街灯も無いため真っ暗になってしまっていた。


僕はあの男性と避難所に一緒に向かって歩いていた。

話をしていると、どうやら男性は警察官という事が分かった。


警察・・・。

あの事件について、警察の尋問を思い出す。

あの時は僕が犯人扱いにされて、ひどい尋問だった。


「あの時間、どこにいたんだ?」

「研究室に入った理由は?」

「トキコとは誰のことだ?」

「嘘をつくなっ!いい加減にしなさいっ!」

「おまえは薬剤を投与して研究室の生徒たちを殺したんじゃないのか?」

「おまえが犯人だろう?」

「他の生徒が憎かったのか?」

「おまえは親がいるのに施設で育てられたんだってな。」


何もしていないのに答えること何て出来るわけがない・・・。

望んでもいない答えを出す僕に、警察官たちはイライラしているのが分かった。


「君はもしかしてあの殺人事件の?」

「は、はい・・・。最初に発見した者です。」

「やはり、そうか。」


その人はそれを話すと話を変えた。

あれ?

それだけでいいのかな。


「今日は大変助かったよ。ありがとう。表彰もんだなっ!」


ポンッと肩を叩かれた。


「いや、それほどでも・・・。」

「君の家は大丈夫かね?」

「どうなっているか分からないです。」

「そうか、それなら今日はここで休むのがいいだろう。」

「はい、そうします。」

「それでは、私は署に戻るとするよ。お疲れ様!」

「お疲れ様です。」


警察官の後ろ姿を見送った。


「いい警察官もいるんだな・・・。あ、あれ・・・。名前を聞いていなかった・・・。」


明日は自分の家と大学を見に行こう。


災害当日の避難所なんて布団も枕もあるわけがない。

ろくな支給も無く、まともな食事も出来なかった。

僕は疲れていたのか、いつの間にか眠ってしまった。


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