結論ありきの茶番劇
シャーレが愛するシェルをお見舞いに行った翌日、彼女を襲った恐ろしい出来事とは・・・。
教会で知り合ったシェルは素敵な男性だった。
とても明るい人で、頼りないところもあったけど優しい人だった。
こんなこと変だと思うけど、とても可愛い人。
そばにいると安心できる人。
そのシェルが病気になったから、お見舞いに行った。
「汗がひどいけど大丈夫?」
「あぁ・・・。何とか・・・。あ・・・、ありがとう・・・。」
「ううん。大丈夫。とても心配よ・・・。」
彼は手を握ってきた。
私は抵抗しない。
こんなことで慰めることができるなら、とても幸せ・・・。
とても心配だったが、日が沈む寸前になっている。
「シェル・・・。そろそろ帰るね・・・。」
「ありがとう・・・。」
無理に笑顔になる彼に少しきゅんとしてしまう。
私のほうが癒されてしまった。
「またね。」
「あぁ・・・。また・・・。」
寝ている部屋を出る直前まで見つめあっていった。
私はシェルの両親にあいさつすると、自宅に戻った。
そして次の日だった。
恐ろしい声が聞こえて、朝の静かな時間は突然消え去ってしまった。
「パン!おまえは魔女裁判にかけるっ!こっちに来るんだっ!」
「えっ??な、何を・・・どういう意味ですか!?」
シェルの父親が私の家に突然入ってきて、私を魔女裁判にかけるという・・・。
「違います!私は何もしていません。魔女でもありません!!」
「先日、お前が一人で呪文を唱えているところを近所の人が見ているんだっ!」
「そ、そんな・・・。」
「最後の呪いをかけるためにうちの息子に近づいたということじゃないかっ!!!」
呪術をすれば、禁忌を犯すことになる。
そんなことは誰だって知っていること。
だけど、私は・・・。
「わ、私は、お祈りをしていただけですっ!それにお見舞いに行っただけ・・・。」
「何を祈っていたというのだっ!」
「私は神様にシェルの幸福を願っていました。早く病気が治るようにと。」
「そのシェルが病気で死んでしまったのだっ!お前の呪いが原因だろっ!!!」
えっ・・・。
「シェルが死んでしまった!?」
「ああ、今日の朝にな・・・。」
「そ、そんな・・・。」
私はショックで言葉に詰まってしまう。
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私は裸にされ広場に引きずり出せれた。
「おまえは魔女だな?」
裁判官が私に問いただす。
私は恐怖で震えていた。
つい一週間前も無実と思われる女性が魔女裁判にかけられ、拷問の末、火あぶりにされたからだ。
聴衆は、それを興奮したように見ていた。
私にはとてもじゃないが周りを見ることができなかった。
恐ろしい時代・・・。
周りからどんな告知をされるか分からない。
告知をされたら最後、死ぬまで拷問される・・・。
そして、ついに私の番になってしまった・・・。
「いえ、違います・・・。」
「魔女だと認めないのだな。だが、お前の背中にあるこの痣は何だっ!」
「こ、これは子供のころからある痣です・・・。」
「ふん、嘘をつけっ!それが魔女の印に違いないではないかっ!!!」
「違いますっ!違いますっ!あぁ・・・、神様・・・。」
「お前が神の名を語るなど・・・。汚らわしいっ!」
この絶望感・・・。
「裁判」なんて、ただの茶番劇・・・。
こちらの言い分なんて何も聞いてもらえない、一方的な裁判。
「火あぶりの準備をしろ。」
「あぁ・・・。助けて・・・。神様・・・。」
涙が止まらない・・・。
死を目の前にして、絶望の淵に立たされている・・・。
怖くて仕方がない。
「さあ、皆さん!この魔女は自らの呪いによって一人の女性を殺してしまいましたっ!なんて恐ろしいことでしょうかっ!!!」
「恐ろしい!」
「酷い女だ!死んでしまえ!!」
「魔女は死刑だ!!」
罵声が聞こえる・・・。
何も悪いことしていないのに・・・。
「あっ!フローラ・・・。」
あなたなのね、私を魔女だと告発したのは・・・。
あなたもシェルを愛していた・・・そうなのね?
何て悲しそうな目でこちらを見ているの?
自分を責めているのね・・・?
「火を放て!」
ああ、ああ、ああ、ああ、ああぁ。
熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い。
いやぁぁぁぁぁぁ。
自分が燃える・・・。
熱い熱い熱い・・・。
「助けてっ!!!」
「魔女は死ね!」
「死ね!」
「消えてしまえ!」
「神様・・・。神様・・・。」
「また何か唱えてるぞ!」
「ひぃいいいい!」
「に、逃げろ・・・!」
熱い熱い熱い熱い・・・。
「フローラ!許さないっ!絶対に許さないっ!ゆる・・・さ・・・。」