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スターシューティング部。  作者: 杏月 要
スターシューティング。
9/9

9

「準備が出来たら言ってね」

「俺はいつでも準備万端ですよー!」

入口の付近に付いているのであろうスピーカーから聞こえる柊先輩の声にゆづはぐっと最後に背伸びをして答えた。

準備運動を済ませ、ゆづの気合はきっと最高潮なのだろう。

「頑張ってね……!」

私と違いプレッシャーにも強いゆづなら今緊張はそれほど高くないとは思うが、少しでもゆづの緊張をほぐしたかった。

私は幼い頃から緊張が苦手で“頑張って”と言われると余計に緊張してしまうが、ゆづは確か前に“応援された方が俄然やる気になる”と言っていた気がするのでここでしっかり応援している。

私の応援に手を振って答えたゆづの顔はまだ笑顔が残っていた。

「じゃあ、始めるよ」

しかし、その声でゆづの顔はぐっと引き締まり、真剣な顔になった。

一気に場の空気が変わり、私がサポーターをやったときもこんな感じだったのかとやっと気付いた。

あのときは自分のことで手一杯だったのだ。



その時、スタート音と同じくブザーが鳴った。

静かな場所に大きく響いて、私はごくんと唾を飲み込んだ。

突如壁に何個かの的の光がパッと明るく点灯した。

それを確認してゆづは体の向きを滑らかに変えながら的を撃っていく。

「……1個じゃないんですね」

先程のように競技では的は1つずつしか出てこない。

だが今は的が360度自由にどこかしらが点灯している。

それに驚いたのは私だけではないようで、圭ちゃんも同じような顔で先輩達を見ていた。

「お、やっぱりそこに気付いたか」

それに反応したのは伊坂先輩で、人差し指を立てて博識風に話した。

「普通では1個しか的は出てこないけど、ここは射撃特訓場だし、とりあえず走ることは忘れて射撃だけに精を注ぎたいわけだ。だから的をいろんなところから次々と出して射撃力を高めたり、瞬発力をたかめたりするんだぜ」

そんな特訓法があるのは初耳だった。

兄も学校での練習の仕方はあまり話さなかったし、ほかの学校もこんな感じで練習しているのだろうか。

そうこうしている間にも、ゆづは的に向かってどんどん射撃をしていく。

しかし、よく見ると的にはあまり球が当たっていなかった。

「……そろそろ疲れが出てきたみたいだね」

モニターを眺めながらぼそりとつぶやいた声は皆に聞こえて、隣に立つ圭ちゃんもたぶんだけど心配な気持ちでいるに違いない。

「たしかに、ちょっと動きに無駄があるなぁ」

後ろからモニターを覗き込んで伊坂先輩も顎に手を当てた。

私なんかの素人から見たらただ疲れているだけにしか見えないけれど、二人からしたら動きのどこを削ぐことが出来るのかまで見えているのだろう。

二人共実力があるだけに、その力は指導力の方にもあるらしい。



そして、終わりを告げる2度鳴るブザー。

ゆづは肩を大きく上下させて行きよりもゆっくりした足取りでゆづは部屋に入ってきた。

「お疲れ様ー」

ひらひらと手を振って伊坂先輩はニカッと笑う。

苦しそうにしながらもゆづは笑顔を作っていた。

「お疲れ様っす……」

一つだけある椅子に座っていた柊先輩が席を立って、ゆづの方へ歩いた。

「お疲れ様。得点もなかなかだったし、良かったと思うよ」

「あ、あざっす……!」

嬉しそうな顔でゆづは照れくさそうに笑っていた。


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