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スターシューティング部。  作者: 杏月 要
スターシューティング。
6/9

6

手にタブレットを握り、頭にヘッドフォンをつけて硬直している。

その少し後ろではゆづと圭ちゃんが見守っていて、がんばって!とゆづの声が聞こえた。

競技場から少し離れたところにある台にのぼり、横には小日向先生が立っている。

「あまり緊張しなくていいのよ。最初なんだから完璧なんて求めてないもの」

その穏やかな笑顔には癒されるが、やっぱり緊張は解けなかった。

いきなり先輩達のサポーターを担当するなんて私は思ってもいなかったから、肩に力が入ってしまう。

『春日井さん、準備はいい?』

無線のところから柊先輩の声が聞こえる。

『あんま緊張するなよー?落ち着いていこうぜ』

伊坂先輩の声も聞こえる。

二人とも優しく声をかけてくれて、いつまでもうじうじしてられないと自分に活を入れた。

「が、頑張ります!」

声が裏返りそうなのを必死に抑えてタブレットを握る手に力を入れる。

「じゃあ準備はいい?始めるよ」

小日向先生は壁についている機械をいじり始めて、青いボタンを押した。


ーーーーーーーービーッ!


と、聞きなれたこの競技のスタート音。

これ聞くなり選手は一気に駆け出していくのだ。

ここからじゃ少し距離が遠くてあまり良く見えないけど、タブレットにはしっかりとスタート位置に“ISAKA”と書かれていて交代位置には“HIRAGI”となっている。

そして勢いよくスタートして伊坂先輩の位置がどんどん早く移動していく。

自分で誇っていただけあって、スピードはかなり速かった。

その動きに見とれている間に、画面には“!”の文字が表示されて的のマークと位置が表示された。

色は赤で止まっている。1番簡単な的だ。

「左足元、来ます!」

ちょうど今まで走っていた上の台から飛び降りる時、約3メートル離れたところに赤い的が出現した。

「よっ!と」

宙返りしながら的を定め、伊坂先輩は巧みに的に向かって球を発射した。

その球は的のほぼ中心部分にあたり、赤い的が音をたてて消えた。

「……っ!」

自分が指示したところに的が出てきて、それをここまで綺麗に打ってくれると、こちらまで嬉しくなってしまう。

震える手を必死に隠してまたタブレットをじっと見つめた。

その間にもひょいひょいと身軽に障害物を越えていく伊坂先輩は、空でも飛んでいるかのように見えた。

そしてまた画面に“!”の表示。

次は伊坂先輩の頭上5メートルほどに止まった青い的。

急いで声を張る。

「頭上、来ます!」

斜めの坂になっているちょうどそこに的があり、伊坂先輩は走るのではなくてその場に背をつけて滑りながらスタガンを上に向けて発射する。

「しゃっ!」

その的に球は中心からは半分くらいずれたような形で当たり、的が消える。

右上の累計ポイントのところには赤い的3点、青い的5点の合計8ポイントが表示されている。

滑ったままの態勢から上半身を滑りながら起こし、また足をつけて走り出した伊坂先輩の声が、ふいに無線から聞こえた。

「良いぞ春日井、このまま頼むぜ」

画面にだけ集中していた私は急に声が聞こえてかなり驚いてしまったが、嬉しさで胸がいっぱいになった。

「は、はい!」

ふぅ、とため息をついてまた画面とにらめっこ状態になる。

今度は止まった緑の的、位置は……背中。

まさか背中に来るとは思っておらず、私は咄嗟に言葉にすることが出来なかった。

「あっ、背中、来ますっ!」

少し出遅れてしまったためか、伊坂先輩の反応も遅れてしまって、慌てて後ろを向いた時には的は既に現れていて、走っていたせいで距離は予定ならば2メートルだったはずが5メートルまで開いてしまった。

「おっと!?」

くるっと後ろに回るジャンプをしながら前へ飛んだ伊坂先輩は少し体制を崩していた。

発射された球は微かに的をかすり、ぎりぎりのラインで射撃成功となった。

その態勢から再び加速姿勢に戻るのはなかなか難しく、少しタイムも落ちてしまった。

「ご、ごめんなさいっ……!」

おろおろとしていながらも、まだ終わってないからだめだと心にムチを打って必死に画面を見ていた。


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