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私とゆづの会話を聞いて柊先輩は「おっ」と声を上げた。
「春日井さんだよね?君はサポーターが好きなの?」
サポーターという単語が出てくるだけで気分が高揚するのだ。
好き、なんて言葉でおさまる程度ではない気もする。
「もちろんです!スターシューティングのサポーターになりたくて入部したんです」
目を輝かせて話すと、横で聞いていた副部長さんも驚いた顔をしていた。
「これマネージャーみたいなやつだろ?この部にもやっと男臭さが消えるぜ」
呆れたような顔をして横目で彼を見る柊先輩。
私も反応が困ったが、その流れをゆづが断ち切った。
「俺も、スタ部入るの夢でした!中学じゃ遠くまで行かないとスタ部無かったので、ここに入るの楽しみで仕方ないっす」
いつもの調子で話すゆづはどれだけスタ部に入るのを楽しみにしていたかがわかる。
圭ちゃんもわかったらしく、微笑ましそうに笑っていた。
「そりゃ頼もしい。んじゃあ、新入部員の橘悠月、住永圭一、春日井伊織。これからよろしくね」
点呼でもとるかのようにフルネームで呼び、この場の士気を高めた部長。
すっかり空気に乗っかったゆづは「おぉー!」と声を上げた。
大きい建物内にはやっぱり大きい部屋がある。
筋トレ部屋やランニング施設なんかは大きさと備わっている器具が素晴らしかった。
さすが私立と言うべきなのか……
サポーター専用の部屋もあって、シュミレーターもあるしサポーターについての本なども置いてあった。
しかし、1番皆が見たい部屋といえばそれはやはりスターシューティング専用の部屋だった。
中に入れば、ぐねぐねと複雑に入り交じった太い管のようなものもあり、台形のような坂もある。
いくら見ても飽きないものだった。
こんなところでスターシューティングをやることが出来るなんて夢が叶った気分だ。
外でランニングをして球の入っていないおもちゃの銃を使いながら練習をしていた前とは違う。
スターシューティング用の拳銃なら、専用施設のみで使用が許可される。
やっと本物が使えるのだ。
「はい、これがスターシューティング専用拳銃のーーーー」
「スタガンっすね!」
柊先輩の言葉を遮って手渡された拳銃を見て震えているゆづ。
見ている方が笑ってしまった。
「はは、正解」
にこにこ笑いながらスタガンをくるりと回した柊先輩の手つきは、かなりスタガンを使い慣れている手つきだった。
「これからはスタガンを使って練習できるけど……まずは、個人の能力を調べないと。春日井さんがどれだけサポーターの仕事出来るかも知りたいしね」
どきっ、と緊張して胸がバクバクした。
今まで兄に教わってサポーターについてはかなり慣れているつもりだったけど、本当の施設で同じことが出来るかはまだわからなかった。
「これによってはポジションとか変わってくるから、3人とも頑張ってね」
最後にスタガンをくるっと回して、柊先輩は腰に手を当てた。
「んまぁ、俺にスピードで勝てる奴はいないと思うけどなー!」
自信満々に伊坂隆晴先輩がにっと笑う。
「ハルはスピード重視しすぎて銃撃が適当なんだから。そこだけ誇っても仕方が無いでしょ」
図星だったのかそれを言われた伊坂先輩はうぐっ、と唸って冷や汗を垂らした。
「ハルみたいにむやみにスピードだけあげてもだめ。銃撃だけが出来てもリレーとして回らないといけないからだめ。スターシューティングって意外と難しくて奥が深いんだよね」
改めて確認するように言葉にした柊先輩は、よし!と声を上げて私達を見た。
「まずは春日井さんのサポーターチェックをするから。俺とハルが試しに走ってみるから、いつもやってるみたいにサポーターやってくれる?」
「……えっ!」