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4月。
待ちに待った放課後。
今日は初めてちゃんと部活動ができる。
入部届けはもちろんスターシューティング部を選んだ。
先輩達はどんな人なのか、スターシューティング部はどんな練習をするのか。
自分の目で見たいものをやっと見ることが出来る。
それが楽しみで、嬉しくて。私は朝からそわそわしていた。
スターシューティング部の部室は校舎を出て少し歩いたところにある。
スターシューティング部専用の施設があって、中の設備は写真で見たことがあるがとんでもなく大きかった。
筋トレルームや、何種類かある陸上コース、ミーティング部屋もちゃんとある。
うきうきしながら階段を降りようとすると、ふと声をかけられた。
「いお!さっきぶりー」
ビクッと後ろを振り返ると、ニッと笑った笑顔がまず入ってくる。
彼は“橘悠月”私の幼馴染である。
兄と一緒にスターシューティングの練習をした仲間だ。
「ゆづ……!圭ちゃんもいたんだね」
傍らの静かであまり騒がない彼は“住永圭一”この3人が、幼い頃から一緒にスターシューティングで遊んできた仲間だ。
幼馴染であり、昔からこんな仲である。
「まあ。やっと部活できるから」
「こう見えて圭そわそわしてたんだよ?皆クラス別れちゃったけどさ、俺待ってる時とか何かしらいじってたもんねー」
からかうように笑って横目で圭ちゃんを見る。
ムッとした表情をより一層強めて圭ちゃんは頬を赤らめた。
「……いいから、初っ端から部活遅れてたら先輩に怒られるぞ」
片方ずつの手で2人を押して、圭ちゃんは階段を無理やり降ろさせた。
背中を押されておろおろしつつも、ゆづは笑っていた。
「いやー楽しみだな。なんてったって小学校からずっと部活でスターシューティングやるのが夢だったからなぁ」
たしかに、小学校の頃から一緒にスターシューティングをやろうと約束していた。
それをやっと実行できる日になったのだ。
喜ばない方がおかしい気もする。
そのまま校舎を出て、道に沿って歩きながら一際大きくて目立っている建物を見上げた。
入口のところには石に“スターシューティング部”と彫られていて、ゆづは目を爛々とさせていた。
中に入れば、もう1つの校舎に来たのかと錯覚させるほど広いホールが目に入る。
受付口みたいな所もあるし、奥には広い階段がある。
靴箱だって大きいし、違う学校に来たみたいだった。
「すっげー……」
これにはさすがのゆづも興奮するというより圧倒されたのだろう。
ぽかんと口を開けたまま突っ立っていた。
たぶん私も今顔をしていると思う。
「ほら、早く行くぞ」
一足先に上履きに履き替えた圭ちゃんが私達を催促した。
慌てて運動靴を脱いで上履きに履き替え、圭ちゃんの後について行く。