力加減
自分が自分で無いような気がして、壊れていく……そんな感じだ。
グチャグチャしてモヤモヤして、泣きたくなって、こんなの自分じゃないと叫んでみたとしても、それもむなしく感じる。
誰かに、「大丈夫、全てが上手くいく」といってほしくて駄々をこねたかった。完全な子供だ。
どうしようもないイライラを我慢して不貞腐れていたら、隣に座った彼に、
「大丈夫?」
そういわれて頭を撫でられた。
駄々をこねることなどしなかったのに……。
「どうかしたか?」
「う、うん。別に」
「そっか」
彼が隣にいるだけで安心できた……けど、
「そっかじゃない!」
私の口から出るのはいらいらした気持ちを彼にぶつける言葉だった。
「……」
彼は黙って困った顔をする。そういう顔をさせたいわけじゃない……。
「何見てんのよ!」
彼の手が私の顔に伸びて目を覆われた。
「これで見えないだろ」
「……ち、ちがくない」
「見られるのが気に食わないなら目をつぶってろ!」
わけわからない。私は彼の手を払うと、彼に背を向けるように体の向きを変えた。
「何いらいらしてんだからわからないけど、全部それがお前だろ」
「うるさい。正論吐くな」
「うるさくて結構、嫌な部分があったっていいじゃねえの」
そう言うと彼が、後ろからぎゅーと抱きしめてきた。
暖かくて気持ちいい……ってだんだん腕の力が強くなってきたんですが、
「痛いっての!」
「そう?」
「そう?じゃないよ。力加減知らないのか!」
「じゃあお前も自分を縛るの加減したら?」
「……」
「なあ、今、俺結構うまいこと言ったでしょ?」
凄く得意そうな顔をしたのがムカついたから、ビシッとおでこにデコピンしてやった。
彼がおでこを撫でながらぶつぶつ言っているけど、私のことを離そうとはしない。
「なあ」
「なに?」
「おまえは自分の事嫌いみたいだけど、俺は好きだから」
「なにさらっといってんの」
呆れたように私が言う。
「今嬉しがるところだろ? ちがう?」
「ちがう!」
「うわ」
「うわ、かわいくない?」
彼の言葉を先回りするように言ってみる。
「さあな」
彼がそう言うと、私の頭を乱暴に撫でながら嬉しそうに笑った。
隠した気持ちは、彼に見透かされてそうだ。
ふぅ〜体の力を抜いて、彼に体を預け目を閉じる。
少しだけ自分の事を好きになれた気がした。