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「話を聞いていたと思うが。ハヤト、ナスターシャと共に行ってやってくれないか? 相手は『喰人』だが、キミの持つ『神』の力なら互角以上に渡り合えるはずだ。本来なら、昨日来たばかりのキミに頼むべきものではないが……」
隼人はあっけらかんと言う。
「いや、それは構わないけど。どうせこの世界からオレが抜けるには『最強』ってのに成らないとダメなんだしよ。早い話、アイツが強いコイツが強いとかの面倒な考えは抜きにして強いヤツを片っ端から熨していけば良いってことだろ?」
「ま、まあ確かにそうだが」
「それと、『地食』の規模とか言ってるけど、規模の大きい小さいで変わりがあるのか?」
「ああ、それはだな――」アルベセウスが『地食』の規模について説明する。
『地食』の発生規模によって、地上に現れる『喰人』の強さが異なり、規模が小さい程に現れる『喰人』の戦闘能力は高いらしい。
ツェンダーテン東部に発生した『地食』は『小』。現れる『喰人』の戦闘能力は上位紋章憑きに匹敵するレベルとアルベセウスは言う。そして極稀に上位紋章憑きを遙かに凌ぐ『希少喰人』が現れることもあるようで、今回アルベセウスが『地食』の確認をし『小』と分かるや何もせずに戻ってきた理由が、それらしい。
そしてマコロ平原に出現した『地食』は規模の収束段階まで少し時間があるらしく、出現する『喰人』の確定まで至っていないという。
「そのよ? 『喰人)が現れる前に穴を塞ぐのは出来ないのか?」
「活動初期の段階では塞ぐことも可能だ。しかし、一度活動を始めてしまった『地食』を塞ぐのは不可能。精々出来るのは、活動の進行を遅らせるくらいだ」
「やっちまう意外には方法はないってことね」
「そうだ」
「了解。んじゃ、話はこれで終いってことで良いか? 部屋に戻って寝るわ」
「そうだな。我々も明日に備えなければならぬしな」
立ち上がった隼人にリリスが立ち上がり声を掛ける。
「あの、ありがとうございます」
「良いよ良いよ。元々暴れるのが好きな性分だしな。特に強いヤツなら尚更よ。燃えるぜー」
不安そうな顔のリリスを気にしてか、努めて明るく言う隼人。そのおかげか、周りに柔和な雰囲気が生まれた。
「明日、今日と同じ時間に部屋に迎えに行くが良いか?」
「あいよ」
ナスターシャの言葉に、言葉を返した隼人は手を振って部屋を出て行った。
こうして隼人のプリマヴェーラに来ての二日目が終わるのだが、やや時間を戻し、場所も変えさせてもらおうか――
時間は臨時に会議が開かれる二時間程前。
場所は西の地。
ずずぅん――という轟音が鳴り響き、尋常でない砂埃が吹き舞い上がる。
ケイヒルは手に持った剣を横に払うように振り、刀身に付着した血を払い飛ばした。
だが、その剣は血が取れたことによって、輝きを取り戻すことなく、逆に血特有のどす黒さが増していた。血錆だ。血錆の剣は、よく見ると刃はところどころ大小に欠け、到底剣の役割を果たしてくれそうになかった。
「……とりあえず――」
ケイヒルは肩に掛けた鞘を手に取り血錆の剣を収めると再び肩に掛け、小さな山とも言えるくらいの荒くささくれだった高い丘を、全くものともせず軽快に跳ねるように駆け上る。
丘の上に立ったケイヒル。僅かに目元に掛かる隼人と似たような黒髪を、ふもとから吹き上げる風が靡かせた。
「……――弱いなぁ。実に弱い。ヴェルゼモーゼス、キミもそう思うだろ?」
「不完全な喰人など、所詮この程度だ。時間の無駄にしかならぬわ」
激しく憤ったヴェルゼモーゼスと呼ばれる者の声がケイヒルの頭に響く。
ケイヒルは苦笑う。
「そう言うなよ、ヴェルゼモーゼス。僕はそれなりに楽しめたんだけどな。それに、あながち無駄だったとは言えないだろ?」
「ふん、確かにな」
「『ロゼ』……来るみたいだね」
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