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「どうするも何も、履くに決まってんだろ」
「は、履くってお前、何を言って……これ女性用だぞ」
「んなこと分かってんよ。いつオレが履くって言ったよ。お前が履くんだよ」
「な、なんで私が!?」
「なんでも何も、オレがニーソ好きだからに決まってんでしょーよ。ほらっ、早く!」
隼人がパンと手を叩く。
「……え? しかも今、履くのか?」
「あったり前だろよ。ほらほらほら早く早く早く!」
「は、早くって……」
ひ、必死だな。なぜ、『こんなもの』一つにここまで隼人が必死になるのか全く理解が出来なかった。『好き』って、何が?
ナスターシャは手に持ったニーソックスに視線を落とす。
黒色生地のシンプルなデザイン。どこからどう見てもただの長い『靴下』でしかなかった。
『靴下』だろ? これを履いたところで何がどうなると言うのだ? ブーツに隠れて見えないが、ナスターシャは今も普通に『靴下』を履いている。
そうだ。じゃあ、なにもこの手に持った『長尺靴下』を履くまでもなく、ブーツを脱いで、今履いてる靴下を見せればいいのではないのか? 『靴下』が好きなんだろ?
うぅむ……頭を痛めるナスターシャ。
もしかして、『長尺』靴下でないとダメなのか? 長いのと短いのとで違いがあるのか? そもそも……男性側からしてみれば……露出が多い方が嬉しいものではないのか? 長尺靴下を履いてしまえば太股の部分が少し見えるだけになってしまうぞ? ……違うのか? いや、私は断じてそのような不埒なことを考えて脚を晒しているわけではないぞ? ……むぅ……考えても仕方ない……か。どうせ拒否も出来ぬし。と、ナスターシャは事を進めることにした。
「……こ、これを履けばいいのか?」
「そうよ。早く」
「お前の考えがよく分からぬが……そんなに言うのであれば、良かろう」
ナスターシャが、無いイスの代わりにテーブルの上へ腰を下ろす。その重みで木製のテーブルは軋んだ音を立てた。
テーブルの上に片膝を立てたナスターシャはブーツのバンドを一つ一つ外していく。短いスカートで片膝を付こうものならば、どうなるかは容易に予想出来るものだが、ナスターシャは全く気にした素振りを見せない。
薄い青か、と隼人にあっさりとスカートの中を見られても――
「あ、あまりマジマジと見るな。恥ずかしい」と、言うだけで隠そうともしない。
恐らく、こんなにも短いスカートを履いている以上、下着が見えてしまうことについては割り切っているのだろう。戦場に立てば、もはや見えるってレベルじゃねーぞって状態だろうし……。もしかしたら、見せてもいい下着なのかもしれない。
第一章
42話のラスト、ほんの少しだけ加筆修正しております。




