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「……朝、か………………はぁ……」
朝。あまり眠れなかった。昨日一日、色々と有りすぎた。眠りに落ちる直前まで、ずっと隼人とのキスシーンばかりを思い浮かべては体を火照らせていたのだが、目覚めて早々に隼人とのキスシーンをまた思い出したナスターシャは真っ白な枕を抱いて「ううぅぅ……」と唸り悶える。
キングサイズベッドの上をゴロンと転がってはブツブツブツ、ゴロンと転がってはブツブツブツ。そしてまた枕に顔を埋めては唸っては悶える。細く綺麗な髪の毛は乱れに乱れ、グレー色のアダルトチックベビードールは豪快に裾が捲れて下着が露わになるが、部屋にはナスターシャの他には誰も居ない。だから全く気にしていない。
俯せの格好で枕に顔を埋めたナスターシャが、半分ほど顔を起こす。
「キ、ス……か」
そうポツリ呟いたナスターシャはどこかポーッと惚け、またボフっと枕に顔を埋めた。
隼人に教えられた『キス』はナスターシャに強烈鮮烈すぎるインパクトを与えていたようだ。
ナスターシャはまた枕に埋める顔を半分ほど起こす。
「……クロサワ、ハヤト……私のことが……好き、か……」
また顔を枕に埋める。隼人に好きと言われた時を思い浮かべる。ナスターシャが、生まれて初めて異性からされた告白だった。足をパタパタとパタつかせる。
パタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタ――
――その足がピタッと止まる。
一秒、二秒、三秒とピクリともしなくなったナスターシャ。
顔を埋める枕を掴んだ両手にグッと力が入る。
ナスターシャは勢いよく顔を上げた。体も勢いよく起こす。その顔が赤い。ひとつ息を大きく吐くナスターシャ。
「しっかりしろ! ナスターシャ!」
ナスターシャは自分にそう言い聞かせると、気付けの一発にと自分の両頬を張った。赤かった頬が一層赤くなった。
「よし!」
ナスターシャはベッドから降りると着替えのため、ドレッシングルームへと向かった。




