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『キスをする』という行為。
そのようなこと、今までナスターシャは一度も考えたことがなかった。隼人に『キス』とは唇と唇を重ねる行為と聞かされ、全く信じられなかった。『不潔』との言葉しか思い浮かばなかった。
しかし、今はどうだろう。
隼人に『キス』とは愛情表現のひとつと聞かされたナスターシャは『キス』に抱く『不潔』との印象は薄れつつあった。あるにはあったが『唇を重ねる』という今までに聞いたことも見たこともない愛情表現の方法に、興味の方が大きく膨らんでいた。
「で、私はどうすれば良いのだ?」
「そうだな。じゃ、少し体をコッチに向けてくれる?」
「こ、こうか?」
ナスターシャは言うとおりに、体を少し捻るようにして体を隼人の方へ向ける。その時ナスターシャの膝が隼人の足に軽く当たった。「あ」と軽く動揺するナスターシャに追い打ちを掛けるようにして、隼人も足を動かし、わざとナスターシャの足と自分の足をピタリと密着させる。ナスターシャの動揺に拍車が掛かる。
「そうそう、んで、そのままジッとオレの顔を見る。ジッとな。目、逸らしたらダメよ」
「わ、分かった」
隼人の顔をジッと見るナスターシャ。言った隼人もナスターシャの顔をジッと見る。
自分でも体がぽわっと熱くなっているのが分かる。トクトクと胸を叩く音が早くなっているのも分かる。ナスターシャはコクリと喉を鳴らす。
ナスターシャは自然と隼人の唇にばかり目がいっていた。
またコクリと喉を鳴らしたナスターシャは無意識のうちに、下唇を軽く噛むように下唇を舐めて唇を潤わせた。これには隼人の心が掻き乱された。ヤバイ、ヤバイヤバイヤバイ! エロい! どエロい! むしゃぶりつきたい欲望に駆られるのを必死で抑える。
「ど、どう?」あまりの衝撃に隼人の声が上擦っていた。
不意に言葉を掛けられナスターシャが慌てる。目をパチンとさせる。
「え? ど、どうって?」
「今気持ち的にどんな感じ? ってこと」
「か、感じ、か……。そうだな……し、正直……恥ずかしい、な」
ナスターシャの返答に隼人はニコリと笑った。いよいよ最終ステージに突入だ。
「よし、それじゃ……目、瞑ろうか」




