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「――ま、ここで何を言ってもしょうがねーよ。アルベセウスがどんな報告を持って帰ってくるか。それからの話だ」
ガイナの言ったことに同感と、頷き返したナスターシャは「よし」との言葉で話を締めると隼人を見た。
「今日はもう遅い、休むとしようか」
その場でガイナと別れたナスターシャと隼人。ナスターシャに案内される形で、隼人は大きな部屋にやってきた。
隼人は部屋に入るなり思ったことが口を突いて出た。
「広っ!」
部屋は広いだけではなく、いかにも高級だと感じさせる家具でいっぱいだった。
「この部屋を好きに使ってくれたら良い。必要なら周りの世話をする者も用意するが?」
キングサイズという言葉が似合う大きなベッドに腰を下ろす。腰が沈む。隼人が使ってる一度もお日様に干したことのない、湿って薄く硬くなった布団とは大違いだった。
「いや、要らね。一人の方が気を遣わなくて良いし楽だわ。それに、おま……ナスターシャだっけ? ナスターシャに頼めば何でもやってくれるんだろ?」
隼人からしてみれば普通に笑って言ったつもりだったが、ナスターシャの目には、良からぬ事を企てようとする悪意のある笑顔に見えて仕方がなかった。ナスターシャは思わず舌打ちをしてしまった。
「ふん。で? お前は私に何を望むのだ?」
「そうだな……じゃあ、キスして良い?」
ナスターシャは驚き、明らかに動揺してみせる。
「き、キスだと? キスとは……お前が愛情表現とか言っていたやつのことか?」
「そうそう」と、嬉しそうな隼人。
「い、いや、た、確かに私はお前の言うことには従わなければならない立場になった。だ、だがしかし、キスは愛情表現だと言うではないか。で、私とお前はそう言う関係ではない。それなのに……するのか? お、おかしくないか?」
「おかしくないおかしくない。だってオレ、ナスターシャのこと好きなんだから。ぶっちゃけお前のこと最初に見たときから『良いな』って思ってたし。ホント、オレの好きなタイプよ、ナスターシャ」
「…………は?」
いきなり隼人に『好き』と告白されたナスターシャは目を何度も瞬かせると、その顔を真っ赤に色付かせた。




