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「おほっ。こりゃ……ひでーな。皮膚固めておいてこれかよ」
ガイナは来るなり、壁にめり込むダンダークを見てそう言った。
「固める? 何のことだ?」
「ああ、さっきまでダンダークの肌の色が黒かっただろ? あれは皮膚を鋼のように硬化させる魔法の作用なんだよ。よっと」
ガイナは、壁に飲み込まれ殆ど同化状態のダンダークを、壁から引き抜くと地面に横たわらせた。
「ふーん。別に『硬い』って感触は無かったけどな」
隼人が改めてダンダークに目を向ける。意識無くなるまで為す術がなく受け耐えることしか出来なかったであろう……想像を絶する苦しみに、顔を歪ませ白目を剥くダンダークの姿があった。
しかし、それを見ても隼人自身には『やりすぎた』という意識は皆無だった。
隼人的には、パウンドを仕掛けたような感覚。もし、ダンダークが隼人の初撃で意識が飛ぶなりでもして戦意が消失していたら、隼人は追い打ちを掛けるようなことはなかっただろう。そう、マウロノの時みたいに。
ダンダークが耐えたことによって隼人にスイッチが入ったのだ。
耐えるなら戦意喪失するまで殴るだけ。隼人が『紋章憑き』で超人的な力を持っているとしても、相手も同じ『紋章憑き』で超人的な力をもっているのだ。もうここからは『紋章憑き』という言葉は取っ払って、人間対人間の、いつも通りの試合をやっている感覚だった。
ダンダークに治癒魔法を施してるガイナを横目に、ナスターシャに疑問を口にする。
「あのよ。これって、オレがやりすぎになるのか?」
ナスターシャが苦笑する。
「ここまでやる人間は初めて見たな。少し寒気がするほどだ」
「オレがこの世界に来たとき、真っ先に殺そうとしてきたお前がそれを言うか?」
「それと『試合』での出来ことは、全く違うベクトルの話だ」
釈然としない隼人。
「そういうものかね」
「あの時はお前が我が国に害を及ぼす人間と思っていたからな」
「それでサクッと殺そうとしてきたんだろ? それも問題有りすぎだと思うけど」
「隼人の元いた世界が、どのような世界かは私には分からぬ。しかしこの世界はたった一人の人間が、途轍もなく重大な局面を招く。それが、私達『紋章憑き』の存在する世界なのだ。それに……そう言えばお前にはまだ『喰人』のことを話していなかったな」
「『喰人』?なんだソレ?」




