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隼人の体がタックルのような形で、ダンダークのがら空きの腹部に頭からめり込む。
「?」
「ふぐぁっ!?」
ダンダークは呻き声を残して大きく吹っ飛ばされると、背中から二度三度と跳ねて最後は転がるようにして壁際でようやく止まった。ダンダークは目を白黒とさせ、陸に上がった魚のように口をパクパクとさせる。
観衆は一斉に声を上げて盛り上がる。
「な、なんだ今の?」
隼人も目をパチクリとさせ驚いた表情を見せる。
ダンダークの腹部に接触する瞬間、一瞬にだが隼人の前には円形の『何か』が現れると、接触と同時に弾けて消えたのが確認出来たのだが、そしてそれが原因なのか、まさかダンダークが吹っ飛んでいくとは隼人は思ってもいなかった。
「……すげっ」
隼人は身震いした。
現実に自分の三倍近くある巨体の人間を吹っ飛ばしたことに、隼人は興奮していた。
散々と自らを『最強』と口にしてきた隼人だったが、これは最早、人間が口にしていい『最強』どころの話では無いだろ、と隼人は感じていた。普通、こんな人間が現実に存在するとすれば、それは最早『化け物』と表現した方が良いだろ。
隼人はそれとなく、『意識』を持って強く拳を作ってみた。するとどうだろう、作った拳には漫画やゲームで見たことがあるような円形魔法陣が、皮膚に張り付く感じでハッキリと浮かび上がる。隼人は頷いた。先程一瞬だけ確認出来た『何か』の正体もこれで分かった。
拳を解くと張り付いていた魔法陣も消えた。
拳を作ってみた。また魔法陣が浮かび上がってきた。解いた、消えた。
「なるほど」隼人がまた頷いた。
「すげーな、あれ。詠唱無いみたいだけど、あれも魔法になるのか?」
腕を組んで観戦するガイナが横のナスターシャに言う。
「どうだろうな。私も初めて目にするタイプだ……しかし……」
その先の言葉をガイナが口にする。
「まあ、なんだ。お前、あいつがガチで来てたらマジで死んでたかもな」
ガイナにそう断言されたナスターシャは何も言葉を返さず、ただ唇を噛むだけだった。
膝に手を付き起き上がるダンダーク。口から垂れ落ちる涎を拭う。
「……な、なかなかやるようだな。今のはなかなか良い一撃であった」




